日本でもソニーの「Xperia 5 V」が10月以降順次発売される。
撮影:小林優多郎
ソニーは9月20日、新型スマートフォン「Xperia 5 V」(エクスペリア ファイブ マークファイブ)の国内展開について発表した。
Xperia 5 Vは9月1日にグローバル向けに発表されていたが、今回国内通信事業者向けおよび直販モデルの展開が正式に発表された。
販路と型番、ストレージ容量、一括購入価格(税込)と発売時期については以下の通り。
- ソニー直販(XQ-DE44、256GB)……13万9700円、10月27日予定
- NTTドコモ(SO-53D、128GB)……15万1690円、10月以降
- KDDI(SOG12、128GB)……14万3000円、10月中旬以降(オンライン限定)
- 楽天モバイル(128GB)……15万2400円、10月中旬以降
IDCの調査結果によると、日本の2023年第2四半期のスマートフォン市場のシェア(出荷台数ベース)は、1位がアップル(45.9%)、2位がグーグル(15.4%)、そしてソニーはグーグルと2分の1以下の規模となる5位(6.7%)になっている。
そんな中、Xperia 5 Vは従来のターゲットに加え、「若者向け」を意識した製品特徴と販売戦略が組まれている。なぜ、ソニーが若者を意識し始めたのか。同社が20日に開催した記者向け説明会の内容と業界状況を解説しよう。
「素のままでも使える」若者層向けを意識
Xperia 5 Vの「5シリーズ」の5世代目にあたるスマートフォン。
撮影:小林優多郎
ソニーのXperiaシリーズは大きく分けてフラグシップの「1」、ハイエンドの「5」、ミドルレンジの「10」、そしてセミプロ〜プロ向けモデルの「Pro」シリーズ存在する。
今回の「Xperia 5 V」はその名の通り、5シリーズの5世代目に当たるが、従来に比べてターゲット層を大きく変えたモデルになっている。
今までの5シリーズは、春に発表するフラグシップの「1」の要素を持ちやすいサイズ感の筐体で実現する、いわゆる「プレミアムコンパクト」などとも言われる機種。1シリーズ同様に「こだわり派」向けの機種と言えた。
Xperiaの各シリーズで狙う既存と新規のターゲット層。
撮影:小林優多郎
20日の説明会に登壇した、ソニーマーケティングでモバイルビジネス部 統括部長を務める久下智氏は「既存のユーザーに加えて、若者層にアプローチできるか」と新しい狙いを語る。
確かにXperia 5 Vの本体性能としては、従来モデルと変わらず「プレミアムコンパクト」を維持している。
Xperia 5 Vの背面カメラは広角と超広角の2眼構成。
撮影:小林優多郎
代表的な部分として、背面カメラが3レンズ構成から2レンズ構成に変わっているが、メインカメラに「Xperia 1 V」で搭載した新型センサーを採用している。
この新センサーにより全体的な画質向上に加え、夜景や屋内など暗所での撮影体験が向上。ソニーのモバイルコミュニケーションズ商品企画部 統括部長を務める越智龍氏は「行動範囲が最も広い若者層」に刺さる撮影体験を提供できるとしている。
説明会に登壇したソニー モバイルコミュニケーションズ商品企画部 統括部長の越智龍氏(左)とソニーマーケティング モバイルビジネス部 統括部長の久下智氏(右)。
撮影:小林優多郎
越智氏は「(5シリーズには)既存の顧客も多くいる」としつつも、「若者も(既存客の中には)いたが、全体としては薄まっていたのでより濃度を濃くする」ことが狙いと説明。
さらに、越智氏はハードウェア面として前述のカメラの撮影体験やオーディオ、ゲーム機能などをフォーカスしつつ、「(従来機は若者向けと考えたときに)ソフトがともなっていなかった」と改善点を挙げた。
現時点では「Xperia 5 V」のみに搭載されている新しいアプリ「ビデオクリエイター」。動画や画像、音楽を選ぶだけど短尺動画が制作できる。
撮影:小林優多郎
その代表例として挙げられていたのは「ビデオクリエイター」や「リアルタイムフィルター撮影機能(Creative Look)」「一眼カメラのようなボケ機能」だ。
Creative Look以外は、いずれも現時点では「自分で編集や(外部の)ソフトが使える」(越智氏)ユーザーが想定されている1 Vには搭載されておらず、より手間なく直感的に体験をシェアしたい若者層にフォーカスしたものになっている。
完全ワイヤレスイヤホンの「LinkBuds S」と共に、NiziUを起用して若者層向けの認知を拡大する。
撮影:小林優多郎
ソニーは、こうしたハードやソフトを工夫しつつ、プロモーションにガールズグループ・NiziU(ニジュー)を採用して、Xperiaの認知を広げていく考えだ。
キャリア販路は縮小、iPhone 15と価格は横並び
Xperiaは歴代、キャリアモデルを幅広く展開している(写真はイメージ)。
撮影:小林優多郎
気になるのは販路と価格、競合についてだ。
2022年発表の前機種「Xperia 5 IV」は、ソニー直販の他、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天の4社が取り扱っていた。
一方、Xperia 5 Vは現時点でソフトバンクでは取り扱わず、KDDIはオンライン限定での販売。販路が狭まっているという見方もできる。
なお、オンライン限定販売に決定したKDDIはその背景を「端末ごとにユーザーニーズや製品特徴を踏まえて総合的に判断した結果」としつつ、「Xperiaが人気の製品であることは変わらない」(いずれもKDDI広報部担当者)としている。
9月22日には、競合機種である「iPhone 15」シリーズが発売となる。同機種は高画質センサーから切り抜き処理で画質劣化の少ない2倍ズーム写真を出す点などは、Xperia 5 Vと製品特徴が似通っている。
Xperia 5 Vではどのような機能が、若者が重視する体験の機能向上に寄与できるか分析されている。
撮影:小林優多郎
価格も直販サイトでiPhone 15の128GBストレージ版が12万4800円、256GB版が13万9800円。Xperia 5 Vも直販かつ同容量(256GB)で比べると13万9700円と、ほぼ同じ金額になっている。
ソニーとしては「今回を皮切りに、若者の方々と対話をしながら足りない部分をどんどん改善していきたい」(越智氏)と長い期間で「若者層の開拓」を続けていく方針のようだ。
「周りの人が多く使っている」という安心感のあるiPhoneに対して、Xperiaの「好きにハマる」アプローチがどう刺さっていくか注目だ。