新製品を発表するアマゾン デバイス&サービス担当 Dave Limp(デイブ・リンプ)上級副社長。
出典:アマゾン
アマゾンは9月20日(現地時間)、スマートアシスタント・Alexa(アレクサ)関連を含む複数のハードウェア製品の発表会を開催した。
その多くがアメリカで展開されるデバイスだが、以下の6製品に関しては日本での展開が発表された。価格はいずれも税込み価格。
- Echo Hub(スマートコントロールパネル)……2万5980円、販売時期未定
- Fire TV Stick 4K Max 第2世代(スマートTV HDMIドングル)……9980円、10月18日発売
- Fire TV Stick 4K 第2世代(スマートTV HDMIドングル)……7480円、10月18日発売
- Fire HD 10 第13世代(タブレット)……1万9980円(32GB)/2万3980円(64GB)、10月18日発売
- Fire HD 10 キッズプロ(タブレット)……2万3980円(32GB)、10月18日発売
- Fire HD 10 キッズモデル(タブレット)……2万3980円(32GB)、10月18日発売
また、Alexaに関しては生成AIの技術を用いたチャット機能などの提供も、アメリカ限定ながらも予告した。
日本での展開は現状未定だが、スマートホームやスマートアシスタントの分野ではグーグルやアップルに先駆けて生成AI技術を取り込んできた形になる。
新型タブレットとスマートホーム特化端末などが日本展開
Fire HD 10は1920×1200ドット液晶、最大13時間駆動可能なバッテリーを搭載する。
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日本で発売される製品のほとんどは、値段と性能のバランスが取れた人気のあるモデルの改良版だ。
例えば、第13世代のFire HD 10は、CPUの処理性能が向上。フロントカメラも2MPから5MPに高解像度化。USI 2.0規格のスタイラスペン(別売)に対応した。
テレビのHDMI端子に差し込むことでAmazonプライムビデオなどのコンテンツを楽しめるFire TV Stickでは4K対応モデルを一新。動作速度の向上のほか、Wi-Fi 6にも対応。
さらに、「アンビエントディスプレイ機能」とアマゾンが呼ぶ、映像などを表示していない時のいわゆる待機画像を表示するモードが加わった。アンビエントディスプレイではAlexaを通じて好みの世界の名画や写真を設定でき、さらに天気やToDoが表示できるAlexaウィジェットの設定も可能だ。
Echo Hubは8型タッチディスプレイを搭載したスマートホーム特化型端末だ。
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一方、新機軸と言えるデバイスが「Echo Hub」だ。
EchoはAlexaを搭載したスマートスピーカー(Echo)やディスプレイ(Echo Show)の製品シリーズの名称だが、Echo Hubはそのどちらにも属さない製品となる。
ハードウェア構成としてはEcho Showに近い。
ただ、Echo Showが音楽や映画を鑑賞するための比較的大きめのスピーカーを搭載している一方、Echo Hubは薄型で、電球やホームカメラ、ロボット掃除機などのスマートホーム機器を画面タッチや音声で操作することに特化している。
基本は壁掛けでの利用が想定されているようだが、別売(日本展開未定)のスタンドを使えば、Echo Showのように卓上デバイスとしても機能するようだ。
新型スマートディスプレイやメガネなど日本未発表端末も登場
カメラやスピーカーが一新された「Echo Show 8」。
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現在アナウンスはされていないが、これまでの経緯から日本展開が期待できそうな製品もアメリカ向けに発表されており、その中でも3つ紹介しよう。
1つ目は「Echo Show 8 第3世代」だ。
進化点は主にスピーカー部のデザインや構成を一新し、空間オーディオに対応した点。そして、13MPのフロントカメラを搭載した点だ。高画質なビデオ通話はもちろん、ユーザーとEcho Showの距離が類推できるようになっている。
ユーザーとの距離に応じて表示が変わる。
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ユーザーとの距離は、Echo Showに表示するコンテンツの情報量の調整に使用される。離れていれば情報量は減るがコンテンツが大きく表示され、近くに寄るとコンテンツは小さく情報量が増え、またタッチしやすい画面になる。
アメリカでは10月以降に出荷予定で、価格は149.99ドル(約2万2000円)。第2世代Echo Show 8は日本でも2022年に販売されており、期待度は高い。
「Fire TV Soundbar」はDTS Virtual:XやDolby Audioに対応する。
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2つ目は「Fire TV Soundbar」だ。名前の通り棒状のスピーカーで、すべてのFire TV StickやFire TV搭載スマートテレビと互換性がある。
幅は24インチ(約61cm)で、接続はeARC/ARCをサポート。さらに、Bluetooth接続にも対応し、スマートフォンやタブレットでの音楽も楽しめる。
コロナ禍の家中需要も経てサウンドバー製品の種類は増えており、Fire TVとの親和性を考えると日本展開も難しくなさそうな製品ではある。価格は119.99ドル(約1万8000円)で、すでに発売中だ。
第2世代となるEcho Frames。
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最後はやや日本での展開は厳しそうな製品ではあるが、「Echo Frames 第2世代」にも触れておきたい。
Echo Framesは初代が2019年9月に発表された製品で、今回の第2世代は約4年ぶりの新製品となる。
スマートグラスと紹介されることもあるが、Google Glassなどとは違い、実態はメガネ型のオーディオ機器で、カメラや目へ映像を投射するモジュールなどは搭載しない。
基本はスマートフォンに接続し、アレクサに話しかけて操作をするといった具合の製品だが、本体のボタンを押すことでユーザーの音楽プレイリストを再生したり、マイクをミュートすることが可能。
初代からの機能的な進化点としては、最大2台までのオーディオソース(デバイス)に接続できるマルチペアリングに対応。さらに、専用の充電台を使うことでワイヤレス充電が可能になっている。
シリーズ初のワイヤレス充電にも対応する。
出典:アマゾン
価格は269.99ドル(約4万円)からとなっており、標準モデルの他に、CARRERA(カレラ)とのコラボエディションも用意する。
日本でメガネ型オーディオデバイスはまだ普及していると言い難いが、ファーウェイの「Eyewear」シリーズや、ボーズの「Frames Tempo」などが存在する。
アマゾンがEchoやAlexaの普及を狙って、アイウェア製品を日本で展開する可能性もゼロではないかもしれない。
生成AIがアレクサにもたらす「激変」
最後に製品ではないが、アレクサにおける生成AIを活用した機能について触れておきたい。
今回のイベントでアマゾンは将来アレクサに搭載される(アメリカでは近日中に無料のプレビュー版が公開予定)新機能が紹介された。
Echo ShowでのChatの待機画面。
出典:アマゾン
最もわかりやすいのが「Chat」機能だ。
発表会のデモでは「Alexa, Let's chat.(アレクサ、おしゃべりしましょう)」というフレーズでChatモードを起動し、アレクサに対して、気分やお気に入りのフットボールチームの試合結果、日曜日の天気、料理のレシピを聞く様子がデモされた。
ポイントとなるのは、Alexaがユーザーのことを認識して、好きなフットボールチームや好みのレシピを理解していること、またEcho Showなどのディスプレイ付きデバイスでは画像と共にアレクサが返事をするということだ。
発表会でのChatのデモの様子。アレクサの返答結果に簡単な評価もできるようだ。
出典:アマゾン
もう1つ便利そうなのがスマートホームに関する機能だ。
例えば現在は、部屋の照明が明るすぎると感じた際は「暗くして」「50%の明るさにして」など、Alexaに対して明確な指示が必要だ。
また複数のデバイスを動かす際も、現在は「定型アクション」機能で、ユーザーからの指示や時間、センサーの反応などをきっかけに複数の機器を自動で動かすことができるが、このきっかけとなるトリガーと何をどう動かすか、というアクションを設定するのは骨が折れる作業だ。
複数のデバイス操作や、口語表現のようなコマンドでもAlexaが認識できるようになる。
出典:アマゾン
ここに生成AI技術(つまり、大規模言語モデル)を活用すれば、照明が明るすぎると感じた際は「Alexa, it’s too bright in here(ここが明るすぎる)」と言えばアレクサが理解してユーザーのいる部屋の照明を暗くする。
また、「Alexa, close all the blinds, and turn off all the lights, except for the ones in the living room(すべてのブラインドを閉めて、リビング以外のすべてのライトを消して)」のような複数の機器および例外指定といった命令も可能。
定型アクションも現在はスマホアプリでのみ設定できるが、「Alexa, every weeknight at 9 p.m., make an announcement for the kids to start getting ready for bed, and make sure to lower the blinds and turn on the outdoor lights.(毎週夜9時に、子どもたちにベッドに入るようアナウンスを流して、必ずブラインドを下げて、外灯をつけて)」のように話すだけで作成できるようになるという。
アクセシビリティ向上の一環として「Eye Gaze on Alexa」も発表。日本でも展開する。
出典:アマゾン
気になるのは、いつ英語以外、アメリカ以外の国で展開するかということだが、ここはまだ明らかになっていない。
唯一日本でも展開されることが決まっているAI機能は「Eye Gaze on Alexa」というもので、視線でタブレットの一定の操作ができるようになるというもの。
アメリカ以外では、イギリス、ドイツ、日本で展開され、対応機種は6月に日本でも発売された「Fire Max 11」のみとなる。
アレクサは生成AI関連機能以外にも日本未上陸の機能が複数存在しているため、今回発表された新機能もすぐに日本語対応するという可能性は低そうではある。
ただ、グーグルが日本でもBardや検索での生成AI機能の実装を急ぐなど、競争は加速しており、アマゾンのローカライズのスピードにも期待したいところだ。