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- 2023年はバーンアウト(燃え尽き症候群)に陥る中間管理職が多い。
- レイオフ、仕事量の増加、リモートワークをめぐる対立が多くの管理職にとってストレスになっている。
- ギャラップ(Gallup)の最新調査では、転職を考えているのは非管理職よりも管理職だと分かった。
人材会社で中間管理職として働くカイルさんは、レイオフ、リモートワークをめぐる対立、仕事量の増加、バーンアウトの影響で、2023年はチームを率いるのがこれまでで一番大変な1年だったと話している。これはカイルさんだけではない。
アメリカではカイルさんのような管理職がバーンアウトに陥っていて、積極的に転職先を探していることがギャラップの調査で分かっている。管理職の55%が新しい仕事を検討したり、積極的に探したりしているのに対し、一般社員(非管理職)ではその割合は49%だ。
Insiderの取材に応じたカイルさんは、人材業界では2022年からレイオフが増えていて、カイルさんの勤め先ではリモートワークを減らしたと話している。新規採用も凍結され、チームも縮小されたという。
「経験豊富な人たちがいなくなって、経験の少ない人たちに頼らざるを得なくなりました。加えて、管理職であるわたし自身も介入しなければならなくなったんです」とカイルさんは語った。
「従業員を第一に、従業員の維持を第一にというマネジメントスタイルを維持しながら、なんとか全てをまとめようと努力していますが、ますます難しくなっています」
取り消さなければならなくなった採用内定を含め、こうした"損失"がカイルさんの仕事の流れをめちゃくちゃにしたという。部下に任せようと思っていた仕事を自分でやらなければならなくなったため、チームを指導したり、育てたりする時間が大幅に減った。カイルさんはこれを「人員削減の悪循環」と呼んでいる。
「自分が作り上げたチームが2017年、2018年から一緒にやってきた仲間を失っていくのを見るのは辛いです」とカイルさんは語った。
「チームをまとめようと、一生懸命取り組んできたのでなおさらです」
重度のバーンアウトに陥る管理職
ギャラップの調査によると、人員削減を行っている企業で2023年に解雇される危険性が最も高いのは中間管理職だ。これが管理職にとって、自分の仕事をしつつ、コロナ禍で出てきた新たな課題にも取り組まなければならないとさらなるプレッシャーになっている。
「管理職はハイブリッドな環境で、これまでとは異なるリーダーシップを発揮するために新たな筋肉を鍛える必要がありますし、オフィス回帰をめぐっては幹部と従業員の板挟みという精神的負担が大きく疲弊する立場に置かれています」とギャラップのディレクターで、報告書の共同執筆者でもあるヘザー・バレット(Heather Barrett)氏は以前、Insiderに語っていた。
「多くの管理職が自分個人としては好まないようなことを部下に指示したり、義務付けたりするよう求められているのです」
リモートワークをめぐる対立や、チームに求められる新たな基準がカイルさんを消耗させているという。
その上、経験豊富な部下が解雇されたり辞めたりして、カイルさん自身の仕事量も増えている。仕事を終わらせるために、カイルさんは1on1のミーティングの合間に電話をかけたり、毎日1~2時間働く時間を増やしているという。
「家には小さな子どもが2人いますが、自分のワーク・ライフ・バランスが崩れていくのを目の当たりにしています」
ギャラップの調査では、管理職の約半数が2023年にリストラを経験したと答えていて、42%は予算が削減されたと回答している —— おかげで仕事の流れやチームの構造を変えなければならなかったという。
ただ、こうした新たな負担を反映した昇給は、解決策にならないかもしれない。昇進した後ですら転職先を探す管理職は、一般社員よりも多いとADP Research Instituteは報告している。
管理職のバーンアウトの一因は、労働者の希望に沿ったハイブリッドオフィスやオフィス回帰のルールを作らなければならないことだと、バレット氏はInsiderに語った。管理職は大きく異なる希望を持つ労働者を管理する困難に直面するかもしれないが、より厳格なオフィス回帰のルールを定めることで、チームの士気を下げるリスクもある。
管理職を辞めることも選択肢に
カイルさんは、ここ数年は自身の柔軟なマネジメントスタイルが功を奏し、チームの定着率と収益性は高かったと語った。「大退職(Great Resignation)」の頃ですら、失ったのは業績の芳しくないメンバー1人か2人だった。
ところが、今はオフィス回帰といった会社の方針を部下に強く求めなければならず、カイルさんは会社を辞める人間が増えるのではないかと恐れている。しかも会社側は今後さらに週4~5日の出勤を義務付ける可能性もあるという。
「(従業員は)まず喜ばないでしょう」とカイルさんは語った。
「透明性のある管理職であろうとする自分が、自分でも分かっているのにこれを進めなければならないというのは本当にきついです。出世のためにこれ以上、仲間を失いたくないんです」
カイルさんは自分がチームのリソースとして、今後もチームを成功に導くことができると心の中で分かってはいるものの、管理職を辞めて、レベルの高い一般社員に"降格"することを考えているという。上司はカイルさんの負担を多少なりとも軽減しようと取り組んでいるが、カイルさんは自分がいつまで耐えられるか分からないと話している。
「従業員全員に週5日の出勤を義務付けることになれば、わたしは何も聞かずに降格届を出すつもりです」とカイルさんは語った。