日本でも10月10日に発売する「Meta Quest 3」。
撮影:小林優多郎
メタ(旧フェイスブック)は9月27日(現地時間)、同社のVR関連発表会「Meta Connect」を開催した。
発表されたものの中でも、注目は6月からMetaが告知していた一体型VRヘッドマウントディスプレイ「Meta Quest 3」の正式発表だろう。
日本を含む世界23カ国で発売がアナウンスされ、日本では10月10日に発売予定。直販価格は128GBストレージ版が7万4800円、512GB版が9万6800円(いずれも税込)。
2020年10月発売の「Meta Quest 2」および2022年10月発売の「Meta Quest Pro」は併売する。発表前に実機を試す機会を得たため、そのファーストインプレッションをレポートする。
Quest 3はProを越えるMixed Reality性能
Quest 3は6つのカメラセンサーを搭載。そのうち2つはRGBカメラになっている。
撮影:小林優多郎
Quest 3は前述の通り、Quest 2の後継機にあたる製品だが、その立ち位置は少々異なる。
どちらもVRゲームやコンテンツが、PCやスマホなどを接続しなくても楽しめるという点では同じだが、Quest 3はMR(Mixed Reality:複合現実)機能に対応している。
Quest 2も正面カメラを搭載していたが、モノクロ表示で部屋のガーディアン(障害物にぶつからないための仮想的な境界線)設定時に使うようなサブ的な印象だった。
MRの利用イメージ。少し誇張したイメージではあるが、片目2064×2208ドットの2つの解像度のディスプレイとパンケーキレンズの組み合わせで、かなり精細に見えた。
出典:Meta
一方で、Quest 3はMRの特徴が全面に押し出されている。特にそれを意識するのが初めて被った時だ。
なんのアプリも起動していない、いわゆる「ホーム」で「パススルー」をオンにすると、かなりクリアーに周りを見渡せる。もちろんフルカラーだ。
Quest 3を持ってみると、かなり軽く感じる。
撮影:小林優多郎
パススルーのオンオフは、本体の左右の側面どちらかを2回コツコツと叩くことで切り替えられるので、例えば家の自室ではオンでMR、移動中の飛行機の中などではオフでVR、といった楽しみ方ができる。
初期設定などは済ませてあった試用機だったが、Metaの担当者によると前述の「ガーディアン」の設定も基本的には自動で実行されるという。
Meta Quest 3はクアルコム製「Snapdragon XR2 Gen 2」を搭載した初めての商用デバイスだ。
撮影:小林優多郎
こうした機能はすでに上位モデルのQuest Proで既に実装されていたが、MetaによるとQuest 3はQuest 2に比べて10倍、Quest Proの3倍のパススルー解像度を持っており、搭載するパンケーキレンズはProと同等なものだという。
まさにPro顔負けの性能と言えるが、一方でQuest 3は「フェイストラッキング」「アイトラッキング」には対応していない。
Quest 3に付属する「Meta Quest Touch Plusコントローラー」。Quest 2のものに比べて、大きなリングがなくなったデザインだ。
撮影:小林優多郎
また、Quest 2付属の「Meta Quest Touch Plusコントローラー」には、Quest Pro付属の「Meta Quest Touch Proコントローラー」のようなコントローラーごとにクアルコム製CPUを搭載し、スタイラスペンにもなる仕様などはない。
VRゲームだけをとりあえず遊んでみたい人はQuest 2、VRもMRも体験してみたい人はQuest 3、そしてビジネスやクリエイティブ用途に使いたい人はQuest Proという位置付けのようだ。
Quest 2利用者も買い替えは検討すべき
筆者はQuest 2を所持しており、VRゲームも度々遊んでいるが、「MRを試したい」という気持ちを抜きにしても、今回のQuest 3は「買い」だと思っている。
強くそう感じた理由は、装着感の差だ。
Quest 2を使っていると最初のうちは問題ないのだが、蒸れてレンズが曇ってくる。また、重さも相まって、電池が減るより、(特に夏場は)不快指数が上がる速度の方が速い印象だった。
試用した環境の影響もあるだろうが、Quest 3はかなり快適な体験ができた。蒸れることもなく、何より本体がかなり軽くなった気がした。
Quest 2では真っ直ぐだったストラップがY字になっている。
撮影:小林優多郎
実際の数値を見ると、Quest 2の重量は503gで、Quest 3は515g(いずれも公称値)とむしろ僅かに重くなっているのだが、Quest 2にあったような本体側に重りがぶら下がっているような感覚がQuest 3では薄い。
これは本体部分の重心の位置などが再設計されたことと、頭頂部のつくストラップがY字に変更されたことが影響しており、うまく重さが分散されているようだ。
Quest 2ではゲーム以外にフィットネスに特化したアプリも増えており、筆者は前述の「蒸れ」が原因で敬遠していたが、Quest 3購入後は試してみようと思っている。
MR対応のキラータイトル&機能は登場するか
Quest 3の強みはMRだが、MR対応ゲームや機能はどのぐらい増えるのか。
出典:Meta
とはいえ、多くの人はゲームをライトに遊ぶのであれば、Quest 2で十分というところもある。
Quest 3発表に合わせて従来モデルが値下げされたこともあり、Quest 2は128GBモデルが直販価格4万7300円、256GBモデルが5万3900円(いずれも税込)。
最低価格の128GBモデルで比べると2万7500円もの差が出る。
この差を埋める最も気になる要素は「どれぐらいMRが楽しめるか」にかかっている。
Metaはストア上で、これから2023年末にかけて100以上の新規タイトルや既存タイトルのアップグレードを予定しているとし、その半数でMR機能が利用できるとしている(VR機能に関しては、これまでリリースされている500以上のタイトルが利用できる。)。
Quest 3を体験する筆者。
出典:Meta
また、Quest 3のホームでは今後、天気などの情報を表示できる仮想的なオブジェクト「オーグメント」を部屋に配置できるようになる。
これはいわゆるスマートフォンでいう「ウィジェット」のようなミニアプリだが、この機能が充実すれば「もう1つの仕事場」のような環境が構築できるかもしれない。
Meta以外の開発者が提供するオーグメントも予定されており、第1弾は音声プラットフォームの「I Heart Radio」が提供する見込みだ。
Metaはオーグメントについて他のアプリやゲームと同様にストア承認制にするか、I Heart Radioのような特定のパートナーにのみ解放して行くのか、方針を定めていないようだが、ゲームでもフィットネスでもないVR/MRの使い方の広がりに期待したい。