George Robinson
23歳のジョージ・ロビンソン(George Robinson)氏が2020年に家業の菓子店「SoSweet」で働き始めたとき、彼はオンラインでこの店の存在感を高めようと考えた。当時、SoSweetはイギリスのデボンに実店舗を構えて商売を展開する人気のキャンディーショップだった。
ロビンソン氏は、Facebook(フェイスブック)やInstagram(インスタグラム)などのプラットフォームで店のEコマースサイトとソーシャルメディアアカウントを作成することから始めた。しかし、SoSweetをオンラインで有名にしたのはTikTok(ティックトック)だった。
その年のクリスマスシーズンに、イギリスのシチュエーションコメディ『ギャビンとステイシー(Gavin & Stacey)』のあるシーンを再現した1本の動画が急速に拡散し、アカウントは数日で2万人のフォロワーを獲得した。
ロビンソン氏はコンテンツ制作にさらに注力し、潜在顧客と交流する方法を発見した。できるだけ多くのコメントを返し、TikTokのフォロワーに割引を提供し、自分自身やチームのメンバーが、顧客が注文した商品を梱包している姿を映した動画を作成した。ロビンソン氏によると、彼のチームはほぼ2カ月の間、1日に30〜40本の動画を投稿したとのことだ。
「TikTokはエンタメ用のプラットフォームと捉え、エンタメとオンライン販売促進を連携させて人々を店舗に呼び込むことに注力しました」
翌年、彼はEコマースウェブサイトを成長させることに焦点を当て、注文処理とコンテンツ作成を支援するために人員を増やした。
「@sosweetshopuk」には2022年3月までに80万人のフォロワーがいたが、この時点でロビンソン氏は、アプリ内購入を可能にするTikTokのショッピング機能、「TikTokショップ」を使い始めていた。彼はすぐにTikTokショップチームと関係を築いた。このチームは同プラットフォームを利用して、売上を伸ばすサポートをしている。
TikTokショップは、ユーザー拡大の重要な要素としてEコマースを活用するTikTokの取り組みの一環として、2021年にイギリスで立ち上げられた。この機能は、ほぼ1年間のベータテストを経て、2023年9月にアメリカで正式にリリースされた。ブルームバーグ(Bloomberg)によると、TikTokは2023年末までにオンラインショッピング事業の規模を4倍に拡大し、売上を200億ドル台にする計画だ。
SoSweetは、このプラットフォームだけで(収益が)月に6桁(数十万ドル)をはるかに超えている。売上が比較的低迷した8月でも、約14万1000ポンド(約2540万円、1ポンド=180円換算)の収益を上げている。Insiderは、ロビンソン氏から提供された資料でこの数字を確認した。ロビンソン氏によると、TikTokショップでSoSweetがこれまでに売り上げた額は200万ポンド(約3億6000万円)を超えている。
この成功により、TikTokはSoSweetを各所で紹介するようになった。ここ数カ月、TikTokショップが中小企業の成長を後押しする手法の成功事例として、ロビンソン氏はイメージキャラクターのような役割を担っている。
ただ、TikTokはSoSweetを支持しながらも、自家製のキャンディーやデザートなど、認可を得ていないと思われる他のタイプの食品の取り締まりも開始している。
8月にコーンウォールのニューキーにオープンしたSoSweetの新店舗。
George Robinson
「バズり」はTikTokショップでの成否を左右する
TikTokショップで成功を収める前に、ロビンソン氏と彼のチームはすでにEコマースの経験があり、TikTokショップからオンラインで新規注文を受けても容易に対応することができた。
「信用枠もありましたし、サプライヤーとの関係も良好でした。(TikTok)ショップを始めたときに、他の事業をしていなかったら、おそらくついていけずに失敗していたでしょう」
注文処理に関するTikTokショップのルールは厳格だ。販売者は注文を発送するのに4営業日しか与えられない。もし守れなければ、アカウントに制限がかけられたり、警告が送られる。
そのため、商品がバイラルヒットした場合、販売者は時間制限を守って注文を処理することが困難になる。特に在庫をあまり持たない中小企業はそうだ。
ロビンソン氏によると、TikTokのサポートも決められた時間通りに配送を実行するのに役立っているという。ロビンソン氏を担当するアカウントマネージャーは、あらゆる種類の注文とその処理の問題でサポートを行い、またアマゾン(Amazon)の流通ソリューションと類似する「Fulfilled by TikTok」にSoSweetを招き入れた。
Fulfilled by TikTokを使用すると、販売者の在庫の一部が有料でTikTokが運営する倉庫に保管され、ある商品がプラットフォームで特に好調になってもTikTokが在庫管理・配送に対応してくれるのだ。ロビンソン氏は手数料の金額は明かさなかったが、彼が使用した他のEコマースプラットフォームよりも大幅に低という。
ロビンソン氏は同プラットフォームに登場する季節のキャンペーンやトレンドを内部から見て、それらを活用することもできる。TikTokは、SoSweetのコンテンツが狙うべきターゲットを提示し、動画投稿の数や各ライブストリーミングの時間といったことをアドバイスする。また、TikTokはサポートを継続し、将来的には拡充することを約束している。
SoSweetの成功を大きく後押ししたのが、売上高の一部を提供することで商品をマーケティングしてくれる、2万人以上のアフィリエイトクリエイターのネットワークだった。販売者は独自にアフィリエイトコミッションを設定することができるが、SoSweetはクリエイターに10%を提供している。これは、TikTokのイギリスEコマース責任者が以前Insiderに語った平均レベルと同水準だ。
(左画像)あるクリエイターのTikTokプロフィールで表示されている商品の例。(右画像)SoSweetのTikTokショップページのスクリーンショット。
Maryam Malik/SoSweet/TikTok
ロビンソン氏は最近、自分が直接得た知識を広めるために、独自にTikTokショップパートナー代理店を立ち上げ、TikTokショップの始め方と販売での利用方法について中小企業にコンサルティングを行っている。
同時に、彼は実店舗での商売を常に優先している。SoSweetは現在、イギリス全土に10店舗を展開し、計画では2025年までに20店舗をオープンする予定だ。
「今のところ、私たちのビジネスは非常にうまくいっています。もしTikTokがなくなったとしても、素晴らしいビジネスは残るでしょう。実際、TikTokは私たちの活動を補完しているだけなのです」