食べチョク、ふるさと納税に新参入。「改悪」は勝機、競争激化に「本来の目的からズレている」と指摘

食べチョクサイト

「食べチョク」のECサイト。

撮影:土屋咲花

10月1日から、ふるさと納税のルールが変更される。

返礼品と認められる加工品に制限が増えるなどの厳格化を背景に「改悪」という指摘もあるなかで、野菜や果物の産地直送通販「食べチョク」を運営するビビッドガーデンは新たにふるさと納税事業に参入する。

ふるさと納税を仲介するプラットフォームは既に乱立している中、なぜこのタイミングなのか。

ふるさと納税「本来の意味」に立ち返る

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食べチョクが展開するふるさと納税の仕組み。

ビビッドガーデン提供

「元々、ふるさと納税がどういう目的で始められたのかを考えると、自分は住んでいないけれど応援したい地域に納税をするということや、それによって各地域に関心を持ってもらうというのが本来だったと思います。

今はポイント還元率や、返礼品自体の競争がかなり過激になってきており、本来の目的からずれてきてしまっているんじゃないかという思いがあります」

ビビッドガーデンの広報は、Business Insider Japanの取材に対して、新規参入する狙いをこう説明する。

ふるさと納税は返礼品の還元率の過激化や、「楽天ふるさと納税」「ふるなび」などのふるさと納税サイトにおけるポイント還元率の競争など、さまざまな競争を生んできた。

こうした中、同制度は「本来の趣旨に沿った運用がより適正に行われるよう」(総務省)という理由で10月1日からルールが変更される。

「改悪」とも言われている主な変更点は2点。総務省によると、「費用について、(これまで経費に含まれていなかった)ワンストップ特例事務や寄附金受領証の発行などの付随費用も含めて寄附金額の5割以下にすること」、「加工品のうち熟成肉と精米について、原材料が当該地方団体と同一の都道府県内産であるものに限り、返礼品として認める」というものだ。この結果、10月から値上げとなる返礼品や、返礼品と認められなくなり、姿を消す返礼品も出てくる

食べチョクでは「現在の業界課題となっているポイント還元や返礼品競争からの脱却に寄与」する意味でふるさと納税事業を展開するという。

産直通販サイトの「食べチョク」には、全国約9000軒の農家が6万点を超える商品を出品している。ユーザー数は2023年9月時点で90万人いる。自治体と連携した販路拡大にも取り組んでいる。

「これまで食べチョク事業に注力していく中で順調に生産者数やユーザー数が伸び、自治体との連携数も約90件と増えてきてました。このアセット(資産)を活かすことで、価値のあるふるさと納税サイトを提供することができると判断し、このタイミングで事業を開始することとなりました」(ビビッドガーデン)

50市町からスタート

寄付画面

寄付画面。通常購入かふるさと納税かを選ぶことができる。

ビビッドガーデン提供

使うのは現在の「食べチョク」サイトと同じプラットフォームだ。購入画面に進むと、返礼品に指定されている商品については通常の産直通販で購入するか、ふるさと納税で購入するかが選べるようになる。

食べチョクによると、これまでふるさと納税における生鮮食品の返礼品は、品質担保のほか、在庫数が少ない商品は自治体の品質管理工数などとの兼ね合いで取り扱いが難しかった。同社のプラットフォームを活用することで、この課題を解決する。

出品生産者の開拓や生産者への支払いは食べチョクが担う。発送は生産者自身が行うため、自治体にとっては手間が省ける仕組みだ。生産者は従来の産直通販と手間はほぼ変わらず、ふるさと納税に参加することができる。

自治体が食べチョクに支払う手数料は寄付額の1割程度という。食べチョクのふるさと納税事業は50市町からスタートし、2024年には200市区町村まで拡大を目指す。

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