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検索機能をめぐり、TikTok(ティックトック)がGoogle(グーグル)とのパートナーシップを模索している。これは、オンライン上での人々の検索手段が急速に進化していることを端的に表す動きだ。
アプリ研究者のラドゥ・オンセスク氏は、TikTokアプリに検索条件を入力すると、Google.comで同じ内容の検索をリクエストするオプションが表示される場合があることを発見した。そのリンクをクリックすると、クエリに対するGoogleの検索結果を表示するアプリ内ブラウザを利用することができる。
また、オンセスク氏が投稿したスクリーンショットによると、TikTokは「Googleによる検索結果に対するいかなる責任も持たない」という免責事項も表示している。
TikTokの広報担当者によると、現在TikTokはアプリ内におけるサードパーティーの統合を実験的に行っており、Googleとの試験的パートナーシップもその一環だという。この機能は何カ国かの市場で試験的に導入される予定だが、広告ユニットではないとも話す。
米司法省がGoogleを提訴
一方、Googleの広報担当者は本件に関してコメントすべき点はなく、本パートナーシップに伴う両社間での経済的な合意はあるのかとの質問にも回答はなかった。
オンセスク氏は、GoogleとTikTokが長期的なパートナーシップを結べば、両社にとってトラフィック量の面でも広告収入の面でも相当な押し上げ効果が期待できると見ている。
「ブランド企業としては若年層に素早くリーチしたい。もし両社が協業できれば、双方のプラットフォームにはそれを実現するだけの力がある」(オンセスク氏)
このTikTokのタイアップに関するニュースが伝えられる一方で、Googleは米司法省に提訴され審理の最中だ。司法省は、「Googleはアップル(Apple)やサムスン(Samsung)といった大手企業とのディストリビューション取引を通じ、大半のモバイルデバイスのデフォルト検索エンジンとしてGoogleを採用させることで検索分野における独占を維持している」と主張している。Googleはこうした取引に年間100億ドル(約1兆450億円、1ドル=145円換算)を費やしているというのが司法省の主張だ。
これに対しGoogleは、デフォルトの検索エンジンはユーザーが望めば設定で変更できると主張している。先日証言台に立ったGoogle広告の幹部は、同社はTikTokやアマゾンといった競合を前に検索広告市場のシェアを奪われつつあると話している。また、あるGoogle幹部は2022年、約40%の若者がGoogle検索やGoogleマップよりもまずTikTokやInstagramでランチスポットを検索していることがGoogleの調べで分かったと述べている。
TikTokとGoogleが組めばWin-Winに?
今回のGoogleオプションの追加は、検索機能の強化を図るTikTokの最新の取り組みだ。また最近では、WikipediaやIMDbからの情報の抜粋が含まれるサービスも始まったほか、8月にはすべての広告主が検索広告を利用できるようになった。
TikTokは同社のブラウザを使わせることでユーザーのアプリ滞在時間を最大化することができ、ことによるとユーザーの検索結果やウェブ閲覧傾向に関する大量のデータを利用することができると、ソーシャルメディアコンサルタントのマット・ナバラ氏は見ている。
その点、両社にとっては大きな利益になり、特にEコマースに対する野心を募らせているTikTokにとってはなおさらだとナバラ氏は付け加える。
デジタル、ソーシャルメディア・マーケティング・コンサルタントであるニック・シエロ氏は、Googleは検索結果をより視覚的に表示させる取り組みも試験的に行っており、TikTok動画が検索結果に優先的に表示されるようにしていると指摘する。
「この提携は両社にとって、従来のGoogle検索とは違う新しい検索の仕方を学ぶ、またとない方法となるでしょう」(シエロ氏)