バリュー投資では、市場や他の投資家が見落としている可能性のある銘柄や企業を調査する必要がある。
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- バリュー投資という戦略を1920年代に生み出したのは、当時コロンビア大学で教えていた、ベンジャミン・グラハム氏とデヴィッド・ドッド氏だ。
- グラハム氏の最も有名な弟子はといえば、バリュー投資を実直に遂行し、莫大な富を築いたウォーレン・バフェット氏である。
- バリュー投資の根幹は、安く買って高く売ることにほかならない。何年もバリュー株を持ち続けることで利益を上げることができる。
「安く買って高く売る」は、株式投資における最も古い格言の1つである。そのコンセプトはシンプルで、割安に見える株式を買い、他の投資家がその企業に内在する価値に気が付いて株価が上昇したら売るというものだ。安く買って高く売るというアイデアは、バリュー投資として知られる戦略にまとめられている。
バリュー投資とは何か?
- バリュー投資は割安銘柄を見つけて、最終的に大きなリターンを目指す投資家が長年利用してきた手法だ。その名が示す通り、この戦略では本源的価値を下回る価格の株式を発掘し、調査し、購入する。
- 「バリュー投資は不人気に見える企業を探す投資スタイル」と、英国の金融会社ハーグリーブス・ランズタウン(Hargreaves Lansdown)のシニア投資・市場アナリストのスザンナ・ストリーター氏は言う。「こうした企業は魅力のない低成長市場に属していることが多く、直近の企業利益と比較して株価が低く、アナリストのレーティングも市場平均を下回るようだ」
- バリュー投資は1920年代に、コロンビア大学ビジネススクールで教えていたベンジャミン・グラハム氏とデヴィッド・ドッド氏が編み出した戦略だ。 グラハム氏とドッド氏は、株式の本源的価値はその企業のファンダメンタルズ(基礎的条件)調査で決定されるべきであり、予想される市場の反応によってではないと確信していた。
- グラハム氏の最も有名な弟子はといえば、バリュー投資を実直に遂行し、莫大な富を築いたウォーレン・バフェット氏だ。バリュー投資の根幹は、安く買って高く売ることにほかならない。実際この戦略は、十分な忍耐強さがあれば企業の本源的価値は市場価額と一致し、結果として将来大きな利益が得られるとの前提で効果を発揮する。
バリュー投資 vs. グロース投資
バリュー投資は、多かれ少なかれグロース投資の裏返しだ。バリュー投資家は、株価がすでに急騰している会社を買うのではなく、ほかの投資家がさほど価値を見い出しておらず割安な株式を買う。
グロース投資家には、リスク許容度の高い若年層が多い一方、バリュー投資家は相対的に年配者が多い傾向にある。バリュー投資家は金融資産や不動産を保有しがちであり、グロース株でリスクを多くとる必要がない。
さらに、バリュー投資家は退職を直前に控えているか、すでに退職していることが多い。そのため、通常はすばやく利益を手にするよりも着実な収益を好み、割安なだけでなく配当株を重視する。
企業の内在的価値を評価する
投資家が株式の内在的価値を判断するために使う指標は数多くある。いずれも、株価が企業全体の価値を正確に捉えていないことを示唆する財務情報を明るみにするために、会計帳簿を精査して算出する。
出発点として、バリュー株を見つけたい投資初心者は次の指標を見ると良いだろう。
- 株価収益率(PER): 株価が1株当たり利益の何倍かを表す
- 株価純資産倍率(PBR):株価が純資産(資産から負債を引いたもの)の何倍かを表す
「バリュー投資では企業の財務情報を非常に重視し、現在の株価と比較した企業価値を立証しようとする」と、ストリーター氏は言う。「PERはPBR同じく重要な指標だ」。
「デジタル情報社会の中で企業の無形資産が増えており、バリュー株を見い出すのにさらに高度な巧みの技が必要になってきた」
「今日価値のある資産といえば工場や機械といった有形資産ではなく、データやソフトウェア、ブランド、アイデアといった無形資産で構成される傾向にある」と、彼女は続ける。「こうした無形資産を考慮しないと、投資家は事業の拡大見込みが大きい株式の手がかりをつかみ損ねたり、ほとんど株価が回復見込みのない銘柄を割安なバリュー株と捉えて取得したりする可能性がある」
バリュー投資をするときには、市場が企業価値を見誤っているから放置されている企業と、深刻な問題を抱えているから市場に顧みられない企業の見極め方を学ぶことも重要だ。
「バリュー株を選ぶ際には、その企業が倒産しそうだから安いわけではないことを確認することが大事だ」と、投資専門家でテレビのビジネス番組の元担当者グレン・グッドマン氏は指摘する。「その企業の負債水準やフリー・キャッシュ・フローがいくらかを確認しよう。また、株価と資産価値の比率を示すPBRにも目を向けてみるべきだ」
バリュー株の見つけ方
株式投資全般と同様に、バリュー株投資には主に2つの方法がある。
1つ目は、自分でバリュー株を見つけて、個別株に投資する方法だ。さまざまな投資プラットフォームやアプリを利用して投資できる。また、フィデリティ・インベストメンツ、TDアメリトレード、チャールズ・シュワブといった投資ブローカーを利用するのも手だろう。
2つ目は、バリュー株を組み入れた投資信託や上場投資信託(ETF)に投資する方法だ。純資産価額(AUM)が多い投資信託やETFには以下のようなものがある。
バリュー株ETF:
- iシェアーズ好配当株ETF(iShares Select Dividend ETF)
- iシェアーズMSCI EAFEバリューETF(iShares MSCI EAFE Value ETF)
- 公益事業セレクト・セクターSPDRファンド(Utilities Select Sector SPDR Fund)
- バンガード公益事業セクターETF(Vanguard Utilities ETF)
- バンガード・エネルギー・セクターETF(Vanguard Energy ETF)
- インベスコKBW銀行ETF (Invesco KBW Bank ETF)
- フィデリティMSCI公益企業株指数ETF (Fidelity MSCI Utilities Index ETF)
バリュー投信:
- ブリッジビルダー大型株バリュー(Bridge Builder Large Cap Value)
- Tロウ・プライス小型株バリュー(T. Rowe Price Small-Cap Value)
- バンガード株式インカムファンド(Vanguard Equity Income Fund)
- ドッジ・アンド・コックス株式ファンド(Dodge & Cox Stock)
- イートンバンス・フォーカスド・バリュー・オポチュニティーズ・ファンド(Eaton Vance Focused Value Opportunities Fund)
- バンガード・ウィンザーIIファンド(Vanguard Windsor II Fund)
真のバリュー株を見つけたとしよう。それに投資すれば、ある段階で最終的に利益が上がるだろう。今の株価は20ドルだが本源的価値が80ドルならば、市場価額がその企業の真の価値に追いつくまで保有するだけで60ドル儲かる。
もちろんその実現までに何年もかかることがある。だが、これこそウォーレン・バフェット氏、チャーリー・マンガー氏、セス・クラークマン氏、ジョエル・グリーンブラット氏といった著名投資家の名を長年にわたって知らしめてきた投資手法にほかならない。
バリュー投資には忍耐と根気が必要だ。だが、企業のファンダメンタルズを慎重に評価すれば、市場が遅かれ早かれその公正価値に気づくとの確信をしっかりと持ち続けることができるだろう。
バリュー投資のヒント
かつてバリュー投資は、長い間安定的に資産を増やす確実で安全な投資戦略とされてきた。だが、市場や経済の目がグロース株やその発行体に注がれるようになり、近年こうした見方が変わってきている。
「バリュー株のパフォーマンスが最近低迷している主な理由は、2008年の世界金融危機以降、多くの金融株が停滞する一方で、巨大ハイテク株が世界を席巻しているからだ」とグレン・グッドマン氏は言う。
とはいえ、バリュー投資で儲ける確率を上げたいならば、投資家が採用すべき原則は数多くある。
バランスを取る:どんな投資でも、恐らく分散はどの投資家も取ることができる最も重要な戦略だ。同じことがバリュー投資にも言える。バリュー投資を独立した単独の戦略ではなく、分散手法の1つとして見なすべきだ。
グッドマン氏は言う。「ポートフォリオにバリュー投資を追加しても必ずしも収益は上がらないかもしれないが、投資リターンをなだらかにするのに役立つだろう。例えば、半分をグロース株に、半分をバリュー株に投資していれば、巨大ハイテク株が急落した時にグロース株ポートフォリオは大きな痛手を受けるかもしれない。だが、バリュー株のパフォーマンスがグロース株を上回り、ポートフォリオ全体への打撃を和らげてくれるだろう」
リサーチに注力する:バリュー投資は企業のファンダメンタルズ分析が絶対に必要な分野だ。グロース投資の場合は集団についていけば良いが、バリュー投資の本来の趣旨は、他人が見逃しているものに目をつけることなので、必然的にリサーチや準備に膨大な時間が必要になる。
つまり、企業の損益計算書や貸借対照表などを熟読することを意味する。
忍耐強さを持つ:上述のように、ウォーレン・バフェット氏やチャーリー・マンガー氏のような人は、何年もバリュー株を持ち続けることで利益を上げており、バフェット氏はコカ・コーラ株を30年以上保有している。バリュー投資はまさしく長期戦略であり、腰を据えて待つ準備が整うまでバリュー株投資を始めない方が良い。
これは、投資先企業の成長性が低いことに耳を貸さず、その株を売ってもっと魅力的に見えるグロース株に投資したい衝動に抗うことを暗に意味する。
押し目買いの準備をしておく:バフェットの話に戻ろう。覚えておいて欲しいのは、彼がコカ・コーラ株を購入したのは1987年の株式市場の暴落後だったことだ。これは、相場下落時に安くなった優良株に飛びつくバリュー投資家が広く活用する戦略だ。したがって、こういうチャンスに備えて手元現金を保有しておくことが重要だろう。
まとめ
投資家の目が急成長のグロース株に向いているため、バリュー投資の人気はやや衰えつつある。
だが、自分でリサーチをする必要があるとはいえ、市場のほかの銘柄に比べて紛れもなく割安な株式に投資する価値はいまなおあるだろう。またポートフォリオの優れた分散方法でもある。それと同時に、ハイテク株やほかのグロース株の優位性が一巡する可能性もあるため、戦略の中にバリュー投資という選択肢を残すのは賢明だ。
グッドマン氏は言う。「どのセクターや戦略も、永遠にほかを上回る運用成績を上げることはできない。だから、いずれかのタイミングで、必ずバリュー株が再び日の目を見る」