アマゾンのアンディ・ジャシーCEO。
Mike Blake/Reuters
連邦取引委員会(FTC)と17州の司法長官らは、アマゾン(Amazon)が独占的な商慣行を行っているとして同社を提訴した。
訴状では、アマゾンが販売手数料を引き上げ、販売業者が他の販売経路で安売りをすることを妨げる決定をすることで、商品全般の価格を高くしていると主張している。
アマゾンは一般的に、自社のマーケットプレイスで、販売手数料(月ごと、もしくは商品ごとに請求される)、販売した商品の価格に基づく「紹介料」、注文処理・配送料、広告料の4つの手数料を販売業者に課している。
訴状では、FTCの主張の裏付けとなるデータの大部分と事例の多くは削除されているものの、アマゾンが自社のマーケットプレイス上で販売コストを引き上げるために用いてきた手法をいくつか概説している。
また、アマゾンの注文処理サービス(FBA)の使用料は2020年から2022年の間に平均30%上昇したと述べている。商品をアマゾンの有料サービス「プライム」の対象にするためには、FBAの利用は必須条件となる。このことから、FTCは、アマゾンが販売業者を囲い込んで高額な手数料を支払わせ、しばしば商品の値上げを余儀なくさせ、競合する注文処理事業者の利用を妨げていたと主張する。
マーケットプレイス・パルス(Marketplace Pulse)が2月に発表した報告書によると、アマゾン上の販売業者は売上の50%を手数料としてアマゾンに支払っているとされ、FTCの訴状でも同一の主張がなされている。
「販売業者は『アマゾンで利益を得ることが時間の経過とともに難しくなってきている』と考えており、アマゾンはこのことを認識している。
どうにか利益を上げるために販売業者に残された数少ない手段の一つは、買い物客が支払う価格を引き上げることだ」(FTCの訴状より)
アマゾンの広告は米国人25〜54歳の96%にリーチ
訴訟の中では広告料も重要な論点となっている。訴状によると、アマゾンの広告は毎月25歳から54歳のアメリカ人の96%にリーチしている。だがアマゾンは近年、自社ECサイトの検索結果に表示するスポンサー広告を増やしており、オーガニックな検索結果の上位に商品を表示させることは難しくなっている。アマゾンでスポンサー広告が掲載された商品は、そうでない商品と比べて46倍クリックされやすいと訴状には書かれている。
「アマゾン内部の調査によると、アマゾン上の販売業者は、自身らがアマゾンで販売を行う能力に対してアマゾンから恣意的な干渉を受けないか『常に恐れて』生活しているという。これによって販売業者の事業と生活がリスクにさらされている。
アマゾンは販売業者を強固に支配しつつ自社の利益になるよう手数料を引き上げることができ、このことは同社の独占力のさらなる証拠である」(FTCの訴状より)
アマゾンのグローバルパブリックポリシー本部長であり最高顧問弁護士のデビッド・ザポルスキーは、FTCの提訴は「事実と法律のいずれにも則していない」とInsiderに送付した文書の中で述べている。
「FTCが疑問視している慣行は、小売業界全体における競争の活発化とイノベーション促進に貢献しており、アマゾンの顧客により豊富な品揃え、より低い価格、より迅速な配送をもたらし、そしてアマゾンのストアで販売する数多くの業者により多くの機会を生んでいる。
FTCの主張が通るのなら、結果として顧客が選べる商品は減り、価格は高くなり、配送は遅くなり、小規模な業者にとっては選択肢が減少するだろう。独占禁止法の意図とは正反対の事態だ」(ザポルスキーの文書より)
アマゾンのブログにはこれより長い文書が投稿されており、その中でザポルスキーは、FBA、アマゾンプライム、そしてアマゾンの価格慣行が競争を阻害しているとのFTCの主張は「小売業への根本的な誤解」から生まれたものだとしている。
「高度な監視ネットワーク」による価格モニタリング
FTCの訴状では他にも、アマゾンが自社の販売価格をオンライン最安値に抑えるために実践している、いくつかの商慣行を明らかにしている。
FTCは、アマゾンが「アマゾン帝国の脅威になりうる安売りを発見すべく、インターネットを常時監視するウェブクローラーからなる高度な監視ネットワーク」を利用していると述べている。
「アマゾンは、アマゾンで販売されている商品がオンラインの他の場所でより安価に提供されていることを発見すると、その商品をアマゾンで販売する業者に制裁を科す」(FTCの訴状より)
訴状によると、アマゾンの制裁は数通りある。そのうちの一つは、販売者の商品を「カートボックス」から削除するというものだ。カートボックスとは商品一覧に表示されるボタンで、これによって買い物客が商品をカートに追加しやすくなる。このほかの制裁としては、「安売りをしている販売者をアマゾンの検索結果の下位に追いやり、事実上見えなくしてしまう」という方法もある。
FTCの訴状が主張するところでは、こうした慣行によってアマゾンの競合他社の競争能力が制限され、最終的には消費者の購入価格を引き上げているという。
「結果的に競合他社の成長が妨げられ、買い物客の購入価格は、アマゾンの反安売り戦略がなかった場合の世界と比べて押し上げられている」と訴状は指摘する。
FTCはまた、アマゾンが「プロジェクト・ネッシー」という秘密の計算ツールを使用していたと主張する。プロジェクト・ネッシーに関する論説はFTCの172ページの訴状のうち約4ページを占めており、その中で16回言及されているが、詳細はすべて削除されている。
2018年のアマゾンのブログ投稿では、「ネッシー」について「Amazon.comでの価格の急騰やトレンドを監視するために使用されるシステム」と説明している。
FTCのスポークスパーソンであるダグラス・ファーラーはInsiderに対し、「われわれが独占的かつ違法とみなす行為について述べた訴状から、関連データやアマゾン役員の発言の大部分が削除されたことを、われわれ一同は不満に思っている」と述べた。ファーラーは、削除についてアマゾンは14日以内に「正当な根拠」を説明しなければならないと付け加えた。
「この情報の大部分を一般社会から隠したままにする、やむを得ない理由があるとはわれれわれは考えていない」(ファーラー)