フランスベッドの新商品「エココンフォート電動ベッド」。
撮影:土屋咲花
「アレクサ、おはよう」
スマートスピーカーに呼びかけると、ベッドフレームからゆっくりとマットレスが起き上がった──。
電動ベッドと言えば、介護や医療の現場や、高齢者が使うもの……という認識が強いだろう。
しかし、ベッドやマットレス製造の老舗で1949年創業の「フランスベッド」は今、こうしたイメージを変えようとしている。
2023年9月27日、ビジネスマンや若年層などをターゲットにしたIoT対応の「スマート電動ベッド」をお披露目した。若い世代に電動ベッドを広める戦略を打ち出している。
電動ベッドなのに、高齢者には「難しい」
見た目は普通のベッド。言われないと電動ベッドとは分からないかもしれない。
撮影:土屋咲花
「『おはよう』という言葉で枕元のライトをつける設定と、背をあげる設定をしています。
今はカーテンを開けたり、コーヒーメーカーが自動で稼働したりなど色々なIoT対応機器があるので、新しいライスタイルの一つとして電動ベッドを組み込んでいただける」
フランスベットの上山直樹上席執行役員は、9月27日に開いた発表会でそう話した。
この日、同社が新商品としてお披露目した電動ベッドは、一見すると普通のベッド。しかし、専用マットレスの下にIoT対応の新商品「薄型電動リクライニングユニット」が敷かれている。
専用アプリと連携することでスマートフォンから背上げ・脚上げの操作ができるほか、アレクサなどのスマートスピーカーとの接続によって、冒頭のような音声対応も可能だ。
スマート電球などのように、起床時間に合わせて自動で背を起こすといった設定もできる。
電動ベッドというと、スタイリッシュとは言い難い専用のベッドフレームが必要なことが多い。一方、この製品は従来のベッドフレームの上に載せるだけで良く、部屋のインテリアにも馴染む点が特徴だ。
上山上席執行役員が「この商品は高齢の方には操作や設定が難しい」と言うように、ターゲットは現在の主な購入者層である高齢者ではなく、ファミリーや若年層だ。
「電動ベッド、イコール、介護ベッドという従来のイメージがまだまだ強い。買い求められるのは高齢者の方がやはり中心です。
ただ、電動ベッドの快適性は高齢者だけではなく幅広い人たちにフィットするものと考えています」
売り上げは5年で2倍に
IoT対応の「薄型電動リクライニングユニット」。フランスベッドの通常のベッドフレームに載せることで、電動ベッドに早変わりする。
出典:フランスベッドホールディングス
電動ベッドの売り上げは伸びている。フランスベッドでは、2022年の売り上げが5年前の2017年比で2.2倍に増えた。高齢化が進む中で介護や医療の需要が伸びていることなどが背景にあり、同社に限らず「業界全体が好調」という。
こうした中、IoT対応の新商品「エココンフォート電動ベッド」は、家族や若年層をターゲットに定め初年度の売り上げ1億円を目指す。価格はセット一式で税込み52万8000円だ。
高齢者向けの電動ベッドは今後も伸びが予想される。あえて電動ベッドに馴染みのなさそうな顧客層へアプローチする勝算について、上山上席執行役員はライフスタイルの変化を挙げる。
「生活者の昨今のライフスタイルから、動画の視聴やスマートフォンの操作など、ベッドの上で過ごされる時間というのが増えてきていると考えています。
高齢者の方に限らず、(電動ベッドを)お使いいただける機会が増えるんじゃないかと思い、力を入れています」