氷づけにされても着信するタフネス携帯「TORQUE」の新モデルが登場する。
撮影:小林優多郎
KDDIは9月28日、京セラ製新型スマートフォン「TORQUE G06」を発表した。価格は9万8000円(税込)で、10月19日に発売予定。
TORQUEは防水・防じんはもちろん高い対衝撃性能などを兼ね備えた京セラのタフネスモデル。2013年にアメリカで登場し、2014年以降は日本でもKDDIから発売されており、アウトドアを楽しむ個人、物流、建築、農業などの法人需要も高い製品だ。
京セラは5月に開催した決算会見で、個人向け携帯電話端末事業から撤退すると表明しており、同社端末の中でも国内に代替機種がほとんどないTORQUEの行く末に注目が集まっていた。
耐久性やバッテリーを強化しつつ、小型&軽量化
TORQUE G06は耐久性を強化しつつ、小型・軽量化されている。
撮影:小林優多郎
TORQUE G06はその名の通り、KDDIが取り扱うストレート型のスマートフォンとしては6代目にあたる。
水深2メートルの海水に耐える耐海水や対氷結、ハンドソープで洗える耐薬品性能など、TORQUEの顔である耐久性についてはそのまま。2メートルの高さからアスファルトへ落下させても壊れにくい対衝撃、尖ったものを画面に落としても割れにくい対打撃性が強化されている。
TORQUE G06は同シリーズ史上最多となる29項目の耐久試験にクリアーしている。
撮影:小林優多郎
耐久性を強化した上で、本体の軽量・小型化とカメラ機能の強化を図ったのがG06の進化点だ。
サイズは、端末の縦方向が前機種の「TORQUE 5G」より13mm短い約154mm、重量は14g軽い約234g。実際に持ってみると、重さの変化はわずかだが、縦方向に短くなったことで片手でも比較的操作しやすくなっていた。
現代のスマートフォンには珍しい「バッテリーの取り外し」が可能。
撮影:小林優多郎
小型化・軽量化の一方でバッテリー容量は4000mAhから4270mAhに増加。さらに、従来機同様、バッテリーの取り外しおよびバッテリー単体での充電にも対応している。
一方で、前機種では交換が可能だった正面カバーの取り外しができなくなっている。
写真左がTORQUE 5G、右がTORQUE G06。5Gにはあるネジ穴がG06にはないことがわかる。
撮影:小林優多郎
カメラは超広角1600万画素、広角6400万画素、マクロ200万画素と、TORQUEシリーズ初となる3眼構成に。マクロと広角レンズを同時に使って撮影する新機能「虫眼鏡フォト」などもある。
マルチホルダーで自転車に取り付けているところ。画面は以前から搭載している「Action Overlay」と呼ばれる動画に走行スピードや天気、時間などの情報を重ねて記録できるモードのイメージ。
撮影:小林優多郎
アウトドアを意識した別売のアクセサリーも用意。スマホ用の浮き具(水中に落ちた場合に浮き上がってくるのをサポートする浮き)のような役割を持つ「フローティングストラップ」はTORQUE 5Gのものと同じだが、自転車やバイクなどに搭載するための「マルチホルダー」とカバン等にぶら下げられる「ハードホルダー」はG06専用のものになる。
前述の通り、国内で現在流通しているスマホでTORQUEと同じ耐久性やアウトドアやアクティビティに特化した特徴をもつ端末はほぼない。愛用しているユーザーはもちろん、これからスマホを過酷な現場で使いたい個人ユーザーにとっては、本機種一択という状況になっている。
KDDIが個人向けにTORQUEを販売継続した背景
TORQUE G06は代表色であるレッドと、法人ニーズの強いブラックの2色展開。
撮影:小林優多郎
気になるのは個人向けスマホ事業から撤退した京セラのサポート体制と今後のTORQUEシリーズの行く末だ。
KDDIでTORQUEシリーズを担当する近藤隆行氏は、事前に実施された記者説明会の中で「(撤退発表の)前から(G06の開発に)着手していたが、継続性についても議論した」と明かし、「サポート面はクリアーしている」と語っている。
写真左からTORQUE G06の箱、TORQUE 5Gの箱。TORQUE G06ではプラスチック素材の梱包を全廃している。
撮影:小林優多郎
KDDIはフィーチャーフォン時代からカシオ計算機(のちのNECカシオ)の「G'z One」シリーズでタフネスモデルを展開していたが、メーカーであるNECカシオが2013年にスマホの開発を終了。NECカシオは以降NECの完全子会社のNECモバイルコミュニケーションズとしてフィーチャーフォンの開発をし、2016年に解散した。
その後、G'z Oneは2021年にAndroid搭載フィーチャーフォン(いわゆる「ガラホ」)として京セラが製造することで再登場。スマホに関しては、2014年以降京セラ自身のブランドである「TORQUE」シリーズがKDDIのタフネスモデルのポジションを担ってきた。
奇しくも、「G'z One」も「TORQUE」もメーカーそのものの事業継続の判断で存在が危ぶまれたわけだ。KDDIは「基本的にはお客様のニーズに応えるのが使命」とし、「要望がある限り、なんらかの形で継続していきたい」(いずれも近藤氏)と考えを示した。
TORQUE G04の「ヤマト運輸向けモデル」。
撮影:小林優多郎
その背景にはタフネスモデルの根強いファンがいることも確かだが、ビジネス的には法人需要もある。
例えば、2019年に登場した「TORQUE G04」はヤマト運輸にも納品されており、高耐久性を求める現場のニーズは一定数存在する。
近藤氏は具体的な数値は示さなかったが、個人と法人の需要は「ほぼ半々」とし、京セラの個人向け携帯電話端末事業撤退のニュースの後には「法人からも今後の商品やサポート面が問い合わせがあった」としている。
G06の特徴のカメラや新機能の部分はコンシューマー寄りの特徴だが、今後は京セラとも協力し、「個別のアプリやソリューションを提供」して業界や個社によって事情が変わる法人ニーズに応えていく方針だ。