Apaydin Alain/ABACA via Reuters Connect
アマゾン(Amazon)のクラウド部門の幹部は、同社の出社義務化のプロセスがさほどスムーズに進んでいないことを認めた。Insiderが入手したアマゾンの社員集会の議事録から明らかになった。今後は、出社指示に関するメッセージの意図を明確にしたうえで、社員があまりにも早急にオフィスに復帰するようプレッシャーをかけられている状況を調査すると約束した。
ユーティリティ・コンピューティング部門のトップ、ピーター・デサンティス。
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アマゾンのユーティリティ・コンピューティング部門のシニアバイスプレジデントであるピーター・デサンティスは社員集会で、自身のチームメンバーが「ハブ」と呼ばれる中核的オフィスの近隣に完全に転居を完了するには最大3年かかると予想している、と述べた。
またデサンティスは社員に対し、急な配置転換などの圧力をかけられた事実があれば人事部に連絡するよう伝え、そのような状況を「詳しく調査する」と話した。
アマゾンの社員の一部は8月、会社から出社に関する警告のメールを受け取った。デサンティスはこれを、社員をオフィスに復帰させるための「軽い促し」のつもりだったと語ったが、「微妙なニュアンスの」方針を全社に伝えるうえでコミュニケーション上の問題があったことを認めた。
社員集会の議事録によると、デサンティスは次のように話している。
「多少の誤解を生んでしまったという認識はあります。ただ、われわれは社員の皆さんにオフィスに戻ってほしいと心から思っているので、このメッセージは重要だと思っています。言葉足らずではありましたが」
デサンティスのこの発言が示唆するのは、アマゾンが週3回の出社義務化を発表してから6カ月以上が経過した現在においても、この方針に対する社員の反発に会社側がいまだに対応しているということだ。
デサンティスのチームにおける数年がかりのオフィス回帰計画は、7月に他のチームの社員に通知された急な配置転換(リモートで働く社員に対し、ハブオフィスの近隣に引っ越すか、もしくは「自主退職」という形で事実上解雇されるかを迫る内容)とは別のものだ。
アマゾン広報担当のロブ・ムニョスはInsiderの取材にメールで回答し、転居の影響が及ぶのは「比較的少ない割合の社員」であり、「画一的なアプローチ」ではないと説明する。また、ハブの所在地は「チームによって異なり、一元的に決まるわけではない」ため、管理職はチームや各社員と直接コミュニケーションをとると言い、「ケースバイケースで」例外措置もとられるとしている。
「この数カ月でオフィスに人が集まる頻度が増え、活気、つながり、コラボレーションが増しています。社員や近隣の企業からもそのような声を聞いています」(ムニョス)
「オフィスに来ることがもっと価値を持つように」
デサンティスは社員集会で、転居を求められた社員は「純粋にバーチャルな場所にいる」社員だと発言している。その目的は、社員を会社の所在地の近隣に転居させ、現地のチームと対面で仕事ができるようにするためだ。
「時間をかけて組織の一部を再編し、物理的にチームの結束力を高める方法を見つけたいと思っています。
これだけの人員を一斉に転居させることはできませんが、ゆっくり2~3年かけて、オフィスに来ることが今よりももっと価値を持つように、チームをより合理的な状態に戻すことはできると考えています」(デサンティス)
デサンティスに対し一部の管理職からは、多くの社員が、仮にアマゾンの別のオフィス近くに住んでいたとしても、短期間のうちにハブオフィス近くに引っ越さなければならないという印象を抱いているとの指摘が上がった。
また議事録によれば、管理職は、アマゾンのアンディ・ジャシーCEOが、同社の出社義務に従う時期は「過ぎた」とコメントしたことから、こうした懸念が深刻化したと話している。
Insiderが入手した8月付けのアマゾン社内ガイドラインによると、リモートで働く社員はハブオフィスの近隣に転居するか、60日以内に自分の希望にかなう新しいチームを見つける必要があると記されている。そうでなければ、いわゆる「自主退職」という形で、退職金を支払われることなく会社を辞めなければならない。
社員集会では、デサンティスはチームに対し「社員全員を転居させることはしたくない」ため、チーム方針の文言を改めると語った。
「このメッセージを今一度明確に伝えるためなら、別の方法をとってももちろんかまいません」(デサンティス)
目的は「軽い促し」
8月、多くのアマゾン社員の元に、出社義務化のポリシーを順守していないという警告メールが届いた。一部からは、このメールは誤って送信されたものだという意見もあった。
デサンティスは、警告メールが誤って届いたため「多くの社員から不満の声が上がった」と述べている。また、オフィスのバッジデータは「情報」を含むものであるため、「非常に集約された方法」でのみ共有されるとも話す。このメールはあくまで「善意」であり、方針に従わない社員への「軽い促し」が目的だったという。
デサンティスはこうも話す。アマゾンがオフィス勤務を3日としたのは「それが妥当な平均日数であるため」であり、確たることは言えないものの、将来的に週4日勤務に移行するという話は出ていない。いずれにせよ、社員が同じオフィス空間で働くことには多くの利点があるため重要だ、とのことだ。
「私たちが出社を是としているのは、それが迅速な意思決定や人材育成に役立ち、将来のリーダーを見極めるのに役立つからです」(デサンティス)