ディファイニング・ウェルスのタイラー・ライト氏。
Courtesy of Tyler Wright
タイラー・ライト(Tyler Wright)氏は2015年にセントラル・フロリダ大学を卒業した後、営業職に就いた。
「会社員になってすぐに、典型的な9時から5時までの仕事を一生続けるのは無理だと気づいきました」と彼はInsiderに語った。
「朝6時に起きて、7時に家を出て、8時にオフィスに着く。それから午後6時半まで働いていました。午後7時半に帰宅して、たぶん何かのドラマのエピソードをひとつ見て、気がつけばもう寝る時間です」
日々の仕事の単調さは、彼にある考えを促した。収入を増やし、その大部分を貯蓄に充て、会社を辞めて独立するか、キャリアを変える自由を手に入れるための十分な資産を築くということだ。
2015年から2021年にかけて、彼は年収を3万ドル(約450万円、1ドル=150円換算)から25万ドル(約3750万円)に増やし、給料の最大80%を貯金して、ソーシャルメディアでこの経済的自由への旅を記録した。そして、2022年3月に会社を辞め、パーソナル・ファイナンス・ブランド「ディファイニング・ウェルス(Defining Wealth)」とコーチング・ビジネスをフルタイムで立ち上げた。
Insiderが確認した彼の口座のスクリーンショットによると、株式投資と不動産(2つの投資用不動産を所有している)の合計でライト氏の純資産は100万ドル(約1億5000万円)を超えていた。
30歳のライト氏が投資するファンドの種類や、不動産のバイ・アンド・ホールド(Buy and Hold)を好む理由など、自身の投資戦略を語ってもらった。
株式市場へ投じる資金の大半を2つのファンドへ
株式投資に関して言えば、ライト氏の戦略はシンプルだ。
「優良企業のグループ、つまり低コストのインデックス・ファンドやETFを見つけ、それらを長期的に保有します」
ライト氏は株式投資の資金の大半を2種類のファンドに投資しているという。幅広い米国株に投資するファンドと国際株のファンドだ。
「さまざまな証券会社によってさまざまなファンドが販売されていて、それぞれが独自の工夫をしている」とライト氏は言う。例えば、VTSAXはバンガード(Vanguard)、FSKAXはフィデリティ(Fidelity)、SWTSXはシュワブ(Schwab)のファンドで、投資家に米国株式市場全体へのエクスポージャーを提供するように設計されている。
同様に、大手証券会社はVTIAXやSWISXのように、先進国や新興国といった国際経済に投資するよう設計されたファンドも扱っている。
ライト氏は、バンガードS&P500ETF(VOO)とバンガード・トータル・インターナショナル・ストック・インデックス・ファンドETF(VXUS)に投資している。
彼は、自分のポートフォリオを構成する銘柄を何種類も持つよりも、2〜3のファンドを所有するというシンプルさを好んでいる。
「私は『3ファンド・ポートフォリオ』を信条にしています」
「3ファンド・ポートフォリオ」とは、国内株式インデックス・ファンド、国際株式インデックス・ファンド、債券インデックス・ファンドの3つのファンドで構成されているポートフォリオを指す。
ライト氏は最初の2つを所有しており、年を取ってもっと保守的なポートフォリオが欲しくなったら、いずれ債券にも投資するつもりだと説明する。
「今のところ、債券には投資していません。私はまだとても若いし、これからの投資期間が非常に長いからです」
リスクフリー・リターンとみなされる国債利回りは、特に多くの現金を持っている場合、今はかなり魅力的であることを忘れてはならない。例えば、3カ月物国債の利回りは、25日には約5.48%と、過去20年間で最高を記録した。
しかしライト氏はこう話している。
「現時点では、必ずしも債券に投資する必要はないと判断しています。今すぐお金が必要なわけではなく、長期的な成長に重点を置いているので。その場合、基本的に2つのファンドだけで済ませることができます」
個々の株式については、ライトは「ほんの数銘柄しか持っていない」という。
「ポートフォリオの大部分を、さまざまな企業や業界で構成されるファンドに投資しています。とはいえ、投資を始めて以来、アマゾン(Amazon)、フェイスブック(Facebook)、グーグル(Google)、アップル(Apple)といったいくつかの大手テック企業には投資してきましたが」
「そのお金すべてを失っても問題ないと思う金額だけ投資すべきだ」と彼は語る。ライト氏の暗号資産(仮想通貨)への投資は、彼のポートフォリオ全体の2%以下だ。
401(k)には戦略的に少額を拠出する
ライト氏が営業職に就いていた頃、彼の会社には401(k)(確定拠出年金)プランがあった。彼はそれに拠出する余裕があり、最大まで拠出することもできたが、この退職貯蓄制度はほとんど利用しなかった。
「最初の頃は5000〜1万ドル(約75万〜150万円)くらいの少額投資をしました」と彼は語る。「それからは、株式投資はほぼすべて証券口座に集中させました」
ライト氏夫妻は2022年にナッシュビルに引っ越した。
Courtesy of Tyler Wright
ライト氏は、いつでも資金を使える柔軟性を求めていた(退職金専用口座の場合、通常、59歳半より前には手数料なしで資金を引き出すことができない)。彼の会社は「マッチング拠出(企業型確定拠出年金において事業主が拠出する掛け金に対して、加入者が一定の範囲内で掛け金の上乗せ拠出をできる制度)」プランを提供していなかったので、いわゆる「タダでもらえるお金」を逃しているわけではなかったと彼は指摘した。
もし会社が退職プランを提供しているなら、その制度に加入するメリットは大きい。拠出金は給与から自動的に差し引かれ、複利効果を享受し、長期にわたってリターンを得ることができる。「マッチング拠出」プランを提供している会社もある。また、401(k)は税制優遇のある投資手段でもある。401(k)に拠出すれば、税引前の資金で運用されるため、課税所得が減り、資金は非課税で運用される。
しかしライト氏は、「35歳までにリタイアするのが理想なのに、59歳を過ぎるまでそこに資金を置き続けるという考えは、私には意味がありませんでした」と話す。
「これは個人的な問題です。401(k)を使うのが間違っていると言っているわけではありません。ただ、自分自身の状況や目標と一致していないと感じただけです」
不動産でポートフォリオを分散させる
ライト氏が貯蓄をより自由に使えるものにしたいと考えた理由のひとつは、不動産を購入できるようにするためだった。不動産の購入時には、頭金と売買手数料のために現金を用意する必要がある。
彼は2018年、当時住んでいたフロリダ州オーランドで不動産投資を始めた。最初に購入した物件は、妻と一緒に住むための一戸建てだった。それは40万ドル(約6000万円)の住宅で、コンベンショナル・ローンで融資を受けた。彼は株式市場に投資していた資金の一部を現金化し、10%の頭金(約4万ドル〔約600万円〕)を支払った。
それから半年も経たない2019年6月、ライトは最初の投資物件である14万5000ドル(約2175万円)の3階建てアパートを現金で購入した。ここでも、それまでの4年間で積み立てた株式を現金化して購入資金に充てた。
現在、彼はオーランドに2つの投資物件、合計7戸の賃貸ユニットを所有している。2022年に夫婦でテネシー州ナッシュビルに引っ越した際、彼はオーランドの自宅を売却した。いつまでテネシー州にいるかわからないため、現在は賃貸住宅に住んでいる。
さらに、今、家を購入し所有するにはお金がかかる時期だと彼は言う。
「物価は上がり、金利も上がっています。私たちが家を所有していたとき、月に2000ドル(約30万円)ほど支払っていました。私の家を購入した人は、価格が上がり、金利が倍になったので、おそらく4000ドル(約60万円)かそれ以上を支払っているでしょう。住宅を購入するには厳しい時期なのです」
今は自身の事業を成長させることに集中しているライト氏だが、いずれは長期的な投資先として優れていると彼が信じている不動産に再び取り組む予定だ。
ライトが不動産投資で気に入っているのは「収益を生む資産を買っている」という点だ。
「株の場合は、購入して価値が上がることを期待し、その後に売却することを考えます。もちろん、家を購入する場合も、価値が上がることを期待しますが、しかし賃貸物件の場合は、適切な物件を購入できれば、物件の価値が上がる中で毎月のキャッシュフローも得られ、それで生計を立てることができます」
さらに、「住宅ローンは家賃収入から返済できます。税制上のメリットもたくさんあります」と彼は続ける。具体的には、不動産の「バイ・アンド・ホールド」が彼のお気に入りだ。
「その逆の戦略は、家を買って、修理して、利益を得るために売却しようとする『フリッピング』です」と彼は語る。
「その戦略の良い点は、早くお金を稼げる可能性があることです。しかし、売却に成功しても、また次の家を見つけて修復するという、骨の折れる作業に戻ることになります」
バイ・アンド・ホールドの場合、家賃収入、値上がり益、税制優遇など、「5つ、6つ、または7つの異なる方法で収入を得ることができます」。だからこそ、彼はすぐに賃貸物件を売却するつもりはない。
「私はこれらの物件を、おそらく一生持ち続けるでしょう」