小惑星のサンプルを採取する探査機「オサイリス・レックス」のイメージ図。
Lockheed Martin
- アメリカ航空宇宙局(NASA)の惑星探査機「オサイリス・レックス(OSIRIS-REx)」は、小惑星ベンヌのサンプルを地球に届けるために7年間旅を続けてきた。
- 2020年にベンヌに着地してサンプルを採取したが、地球に戻るまでには再び長い時間がかかった。
- オサイリス・レックスの38億6000万マイル(約62億1200万キロメートル)の旅を写真とともに振り返る。
NASAの惑星探査機「オサイリス・レックス」は9月24日、これまでで最大量となる小惑星のサンプルを地球に届けた。
ミッション達成のために、オサイリス・レックスは約62億1200万キロメートルを旅してきた。
その歴史的な足跡をたどってみよう。
打ち上げ
7年前に打ち上げられたオサイリス・レックス。
United Launch Alliance via NASA
オサイリス・レックスは2016年9月8日、フロリダ州ケープ・カナベラルからアトラスV411ロケットで打ち上げられた。
重力アシスト
オサイリス・レックスが最初に捉えた地球の姿。
NASA/Goddard/University of Arizona
オサイリス・レックスはまず、地球の重力を利用してその方向を変えた。地球の重力がパチンコのような働きをして、探査機を目標の小惑星ベンヌへと前進させた。
ベンヌの軌道へ
小惑星ベンヌの南極の下を飛行した際、オサイリス・レックスがMapCamで捉えたベンヌの姿。
NASA/Goddard/University of Arizona
2018年、オサイリス・レックスはベンヌに到達し、その軌道を周り始めた。
サンプル採取
小惑星ベンヌの岩だらけの地表からサンプルを採取。
NASA/Goddard/University of Arizona
2020年、オサイリス・レックスはベンヌに接近し、その岩だらけの地表から大量のレゴリス(ごみやチリ)を採取した。
岩だらけの地表
オサイリス・レックスが「TAGSAM」と呼ばれる装置を使ってベンヌに接触するイメージ図。
NASA's Goddard Space Flight Center
ベンヌとの接触は、オサイリス・レックスにとって最も危険な瞬間の1つだった。ベンヌの地表は研究者たちが考えていたよりもデコボコしていて、失敗する可能性もあったからだ。
ベンヌに接触
このミッションの主任研究員ダンテ・ローレッタ(Dante Lauretta)氏は、オサイリス・レックスがベンヌに接触したこの瞬間は「あらゆることを超越したよう」だった話している。ミッションは成功し、オサイリス・レックスは手に入れたサンプルとともに無事、ベンヌから離れた。
粒子流出
オサイリス・レックスのサンプル採取装置から粒子が漏れている様子。
NASA
サンプル採取容器がしっかりと閉まらず粒子が漏れ出した時は、危うく失敗かと思われた。幸い探査機の管制官の素早い対応により、容器は安全に密封された。NASAはオサイリス・レックスが最終的に約8.8オンス(約250グラム)のサンプルを持ち帰ったと推定している。
地球へ
サンプル回収の訓練もNASAは行っていた。
NASA/Keegan Barber
これまでで最大量となる小惑星サンプルを採取したオサイリス・レックスは、地球に戻るための長い旅を始めた。
2023年9月24日、オサイリス・レックスは地球に接近し、サンプルの入ったカプセルをソルトレイクシティ近郊にある国防総省のユタ試験訓練場に届けた。
サンプル回収
小惑星ベンヌのサンプルが入ったカプセルの周りに集まる回収チームのメンバー。
AP Photo/Rick Bowmer, Pool
回収チームは砂漠からサンプルの入ったカプセルを回収した。サンプルの一部はすぐに研究に利用されるが、一部は後世の科学者たちが今後、何世紀にもわたって分析できるよう保存される。
ヒューストンへ
小惑星ベンヌのサンプルが入ったカプセルを積んだ輸送用コンテナ。アメリカ空軍のC-17輸送機で、テキサス州ヒューストンにあるNASAのジョンソン宇宙センターへ運ばれた。
NASA/ Molly Wasser
サンプルは現在、テキサス州ヒューストンにあるNASAのジョンソン宇宙センターにある。
NASAによると「小惑星のサンプルは地球に何の危険ももたらさない」という。
「ベンヌは放射線を浴びた岩石で、サンプルに生命体が含まれている可能性はない」
サンプルの分析
サンプルが入った容器を開けるロッキード・マーチンのリカバリー・スペシャリストたち。
NASA/Robert Markowiz
サンプルは世界各地の科学者たちに送られる前に、クリーンルームで数週間を過ごす。
「これらのサンプルは数週間、数カ月、数年、数十年、あるいは数世紀にわたって分析されるだろう」とNASAの科学者ノア・ペトロ(Noah Petro)氏はInsiderに語っている。
なぜベンヌを研究するのか
小惑星ベンヌの南半球の様子を捉えた画像。表面が多くの岩塊で埋め尽くされていることが分かる。
NASA/Goddard/University of Arizona
ベンヌは非常に古いため、科学者たちはそのサンプルを研究することで太陽系がどのように形成されたのか手がかりを得たり、地球の生命誕生につながった重要な化学物質を小惑星が運んだのかどうかを調べたりするのに役立つだろうと期待している。
オサイリス・レックスの次の挑戦
オサイリス・レックスは、太陽系近傍の探査を始めたばかりだ。
NASA/JPL-Caltech
オサイリス・レックスのミッションはまだ終わっていない。現在、小惑星アポフィスの軌道に向かっていて、2029年に到達する見込みだ。