「iPhone 15 Pro Max」の5倍ズームの実力がわかった。高エネルギー加速器研究機構(KEK)で撮り歩き

iPhone 15 Pro Max

アップルが9月22日に発売した「iPhone 15 Pro Max」。

撮影:林佑樹

新型のiPhone 15/15 Proシリーズの販売が先週スタートして話題になっている。ハードウェアレベルで目立つ点といえば、USB-Cとカメラくらいだが、「充電端子が変わる」というのは思った以上にわかりやすい変化ということなのだろう。

今回はシリーズの中でも最上位モデルにあたり、カメラ性能の向上が注目される「iPhone 15 Pro Max」の実力を見ていきたい。試し撮りの被写体として選んだのは、つくばにある「高エネルギー加速器研究機構(KEK)」。インダストリアルな被写体をiPhone 15 Pro Maxのカメラはどう表現するだろうか。

3つのレンズで4つの画角の意味

ナチュラルチタニウム

筆者のiPhone 15 Pro Maxはいまだに到着していないのだが、ナチュラルチタニウムを選んでいる。側面の微細構造はその場でのレンズの性能チェックに都合がいいからだ。

撮影:林佑樹

おさらいしておくと、iPhone 15 Pro Maxには0.5倍超広角、メイン1倍、5倍望遠を担当するカメラモジュールがある。2倍望遠はメイン1倍のデジタルズームで、仕様としては「iPhone 14 Pro/14 Pro Max」から変わりがない。

iPhone 15 Proシリーズはメイン1倍の焦点距離を24mm、28mm、35mmから選べるようになっている。28mmと35mmはデジタルズームであり、「1x」をタップすると選べるためおまけに近い扱いだ。

また、iPhone 15シリーズのメイン1倍はすべて48MP(4800万画素)で、簡単に言えば48MPのセンサーから切り出すことで実現している2倍望遠が標準搭載になったが、Androidスマホも含めると珍しい機能でもないため、本稿では割愛する。ピクセルビニングについても同様だ。

超広角

0.5倍超広角(13mm)。

撮影:林佑樹

メイン

メイン1倍(24mm)。

撮影:林佑樹

2倍望遠

2倍望遠(48mm/デジタルズーム)。

撮影:林佑樹

5倍望遠

5倍望遠(120mm)。なお、写真は1995年まで運用されていたトリスタン加速器のビーナス測定器。

撮影:林佑樹

もうひとつ、スマホにおいて、撮影した写真をスマホ自身が考えて「描く」ように補正する「Computational photography(コンピューテショナルフォトグラフィー)」は標準的なものになった。

iPhoneがその筆頭的な存在だったが、いまではGoogleスマホの「Pixel」がその最たる機種といっても良い存在になっている。iPhoneとPixelは共通して撮影時点で十分な情報量を獲得するべく、光学性能を高める方向に進んでいるのが、近年の傾向だ。

iPhone 15 Pro Maxでは(iPhone 14でも確認できるが)、撮影したあとすぐに写真を確認するとデータの変化(補正処理の過程)が確認できる。

反対にカメラとして光学性能を重視するXperiaやAQUOS、光学性能とComputational photographyの間の絵作りを歩むGalaxyと、処理ひとつで見ても、なかなかおもしろい状況下にある。

もっとも、スマホの比較的小さな画面で見る世界の話になるため、良し悪しではなく好みの話だ。それぞれ良いところがある。

解像感をチェック、48MP撮影は明るさが必須

次からサンプルショットをチェックしていく。主な撮影は前述のKEKだ。

KEKは加速器実験施設で、素粒子物理学などの基礎研究を行っている。2008年にはノーベル物理学賞「CP対称性の破れ(小林・益川理論)」の実験的な証明をし、受賞に大きく寄与した。

また、放射光施設フォトンファクトリーなどは民間企業の利用もある。余談になるが、今回のロケ地としての選定理由は、筆者が12年ほど通っているため撮り慣れた場所であること、4年ぶりの一般公開が2023年9月23日だったことの2点だ。

0.5倍超広角

0.5倍超広角。メイン1倍に比べると色の飽和がやや目立つが、室内フォトとしては十分だろう。写真は教育加速器KATE。加速器が大型化したことで加速器全体の仕組みや役割を知る人が減ったため、ビームの入射から制御、ターゲットへのヒットなどをコンパクトにまとめたもの。なお、60~70年ほど前はこれくらいの大きさの加速器が当たり前だった。

撮影:林佑樹

iPhone 15 Pro Maxについて総括すると、良い意味で変わっていない。

長らくiPhoneはなるべく「見たままの絵作り」を重視している。これはiPhone 15 Pro Maxでも変わりない。

そのため、iPhone 12世代付近から機種変更をしてみると、0.5倍超広角とメイン1倍は色合いに違いはないが解像感がよくなったと感じるだろう。

1倍 48MP

メイン1倍。48MPで撮影した。Belle II測定器の中心部を見るとソニー製イメージセンサーの機材でよく見る階調だ。ケーブル類も小型なレンズとしては十分に解像している。

撮影:林佑樹

1倍 24MP

24MPで撮影してみたもの。48MPとは気持ち差があるようにも感じるが好みの世界だ。

撮影:林佑樹

1倍

メイン1倍はポートレートモードを使用しなくても近寄ればそれなりにボケる。写真は線形加速器のチェンバーだ。

撮影:林佑樹

また、メイン1倍は48MPでの撮影もできるが、それなりに明るい環境である必要があり、高解像度で見る環境も限られているので、「最高解像度を試してみたい人のモード」のようなものだと考えている。

ともあれ、「使いこなす」「新しく慣れる」ことを目指すより、機種変更をしてもあまり違和感なく性能の向上を体感できた方が、幅広い既存ユーザーに訴求できる。そういった狙いが強いのかもしれない。

銅の色合い

銅の色合いはレンズ性能がわかりやすい部類に入るが、メイン1倍の場合はおおむね質感に問題はない。手巻きの銅コイルで軸上色収差の性能がそこそこだとわかる。気持ちのっぺりした感があり、記録されてない波長がある。射出成型レンズの性能によってイメージセンサーに届いてない波長があるといったほうがいいかもしれないが、ガラスモールドレンズの実装の難しさは「Xperia PRO-I」の例があるため、スマホとしては十分であると判断すべきだろう。

撮影:林佑樹

ポートレードモード

ポートレードモードはLiDAR(環境スキャナー)のレンジ内なら精度はよくなっている。前ボケの不自然さは変わらずなので、適宜運用がよい。また、深度情報を記録していると後からフォーカス位置や被写界深度の変更できるが、いつオンになっているのかイマイチわからない。

撮影:林佑樹

フレアやゴースト

以前の機種から変わらず、フレアやゴーストは光源に向けると頻繁に発生する。

撮影:林佑樹

iPhone 15 Pro Max限定の「5倍望遠」を試す

iPhone 15 Pro Maxだけの特徴となっている「5倍望遠」を見ていこう。

カメラ性能としては、日中(晴天・曇空)であれば申し分ない。逆に薄暗い部屋になるとのっぺりとした絵になりやすく、あえて5倍を積極的に使う理由はない。

望遠圧縮

光学で5倍なので、奥行き感が圧縮される「望遠圧縮」効果が効く。

撮影:林佑樹

また、2倍から5倍と一気に変わるためフットワーク(使い勝手)は良いとは言えず、メイン1倍か2倍望遠が中心で必要に応じて5倍望遠を選ぶ使い方になるだろう。

画角が48mmから急に120mmになるため、少し後ろに下がる回数が多かった。カメラの総合的な使いやすさにこだわりがある筆者としては、正直なところ、3倍望遠の「iPhone 15 Pro」を予約しておけばよかったかも……と思いはじめている。

線形加速器

線形加速器のような一直線なものを撮影する際に5倍望遠を使うと、ほどよい望遠圧縮で様になりやすい。

撮影:林佑樹

ビーナス測定器

ビーナス測定器を側面から。明るい場所であれば先に掲載した2枚に比べてノイズも少なくよい塩梅だとわかるはず。

撮影:林佑樹

光学で5倍

光学で5倍ともなるとレンズそのもののボケが生じがちだが、あまりきれいではないので素直にポートレードモードがいいだろう。LiDARのレンジ外と思われるが細かい部分のボケもしっかりしており、視差も併用している感がある。

撮影:林佑樹

頑張ってみた例

フォトグラフスタイルと露出補正を実施。長辺1920pxにリサイズしてスクリーン向けシャープニングであれば、スマホで見る分には十分になる。

撮影:林佑樹

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