日本に不足しているのは「プロジェクトを引っ張れるエンジニア」。その課題解決を目指す次世代システムインテグレーターPRUMの挑戦

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ITを支えるデジタル技術は日本の国力の源泉。そうした中での課題は、デジタル技術を扱うデジタル人材不足だ。

多くの企業が人材獲得に苦戦する一方、優秀なエンジニアを多数抱えて急成長を遂げている企業がPRUM(プラム)だ。同社は「日本で一番エンジニアが成長できる会社を創る」をモットーに掲げており、独自カリキュラムによるエンジニア育成を実施している。

PRUMとは一体どんな組織なのか。CEOの岩本稜平氏とCTOの中村大雅氏へのインタビューを通して、PRUMの“強み”を探った。

日本に不足しているのは上流工程から関われるエンジニア

日本のIT領域は人材不足の状態が続いている。外部の開発会社に発注する手もあるが、そうであったとしても発注側にデジタル人材がいなければ失敗する確率は格段に上がってしまう。なぜならシステム開発とは基本的にオーダーメイドで作るものだからだ。

そうしたIT業界の課題を肌で感じてきたのがPRUMのCEOである岩本氏だ。岩本氏は大学卒業後、バックエンドエンジニアとして経験を積み、ヤフーに入社。ヤフオク決済システム開発などの実績を持つ。

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岩本稜平(いわもと・りょうへい)氏/PRUM CEO。千葉工業大学卒業後、SI企業へ入社し、バックエンドエンジニアとして大手企業の決済サービス開発に従事。ヤフー株式会社に転じ、ヤフオク決済システムの開発を担当。2016年に独立。様々なスタートアップ企業のプロジェクトマネージャーを務める。2019年株式会社PRUMを創業。代表取締役就任。創業4期目で60余人規模の組織を構築。

「ヤフーにいたときも、エンジニアがなかなか集まらなくてプロジェクトが進まないこともありました。ヤフーという大企業ですらそうなのですから、小規模なスタートアップはなおさらです。

ビジコン(ビジネスコンテスト)で優勝したのにエンジニアが集まらず、結局やりたいことを実現できないというケースをいくつも見てきました」(岩本氏)

日本のIT業界における技術者不足という課題を、まさに当事者として実感してきた岩本氏。そのときの経験がPRUMを創業する原動力になった。

ここで話題にしている「日本で不足しているデジタル人材」とは、要件や仕様が決まっていない上流工程から関わり、プロジェクトを引っ張っていける人材のことである。一例をあげるなら、プロジェクトマネージャーやプロダクトオーナー、スクラムマスターと呼ばれる人材がこれにあてはまる。

一方で、決められた仕様通りに手を動かすだけのエンジニアを増やしても、日本が抱える課題は解決しないと語るのは、PRUMでCTOを務める中村氏だ。

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中村大雅(なかむら・たいが)氏/PRUM CTO。モノづくりの仕事を志し、30歳でミュージシャンから一転しエンジニアの道へ。37歳の頃には、システム開発企業にてCTOに就任。その後起業し、知人の紹介で代表の岩本と出会い意気投合。「優秀なエンジニアを育てることに力を注いで未来に繋げたい」という思いから、2022年にCOO/CTOとして株式会社PRUMへ参画。

「プログラムをゴリゴリ書けるギークなエンジニアも開発を進めるためには必要です。ただ、日本がその領域を伸ばしてもグローバルで勝つ為の強みになるとは思わない。

それよりも、もっと日本人の繊細さ、美的センス、他人を思いやる心を活かすべきで、それができれば日本もグローバルで差別化を図ることができるだろうし、戦っていける可能性は十分にあると考えています。

その為にもサービス開発の入り口から携わり、サービスとは何たるかを考えて創れるエンジニアが必要になると思います」(中村氏)

優秀なエンジニアを育成し、「やりたいことがエンジニア不足でできない」という企業の課題を解決したい。そして、エンジニアの「成長」を社会の「成長」へとつなげていきたい。そんな想いから岩本氏は2019年、桜新町にあるアパートの一室でPRUMを創業した。

受託開発事業におけるクライアントからの高い評価

PRUMはシステム開発を主事業とする開発会社だ。特に、クライアントの課題を開発するための「受託開発」を得意としている。

同じような事業を展開する企業は他にも数多く存在するが、PRUMには他社にはない特長がある。それは、在籍するエンジニア陣の層の厚さと、それ故のプロジェクト進行スキルだ。

岩本氏が日本企業の課題として語ったように、クライアントの多くは「やりたいこと」があっても、どうすれば実現できるのかについては具体的な解を持っていないことが多い。つまり、開発会社に本来求められるのは、決まった仕様をプログラミングできるだけでなく、「やりたいこと」をクライアントにヒアリングし、どうすれば実現できるのかを考えられる人材なのだ。

ITのことは何もわからないけど、あの人に相談すれば何とかしてくれるーーそう思ってもらえるエンジニアが最強なんです」(岩本氏)

それは簡単なことではない。プログラミングのスキルはもちろんのこと、高いコミュニケーション能力や共感力、協調性といった人間的能力も必要だ。

PRUMにはそうした能力を備えた人材が豊富にそろっており、受託開発においてもクライアントからも非常に高い評価を得ている。

このデジタル人材不足の時代に、なぜPRUMにはそうした人材が集まるのか。その秘密が、同社の人材育成システムにある。

エンジニアを挫折させないためのスクールを社内に設立

どうすればエンジニアが挫折せず、自信を持って仕事に臨めるまでに成長できるのか。自分自身の経験も踏まえて岩本氏の出した答えは、「正しいロードマップをつくる」ことだった。

「エンジニアとしてデビューして、そこから成長したいと思っても、何をすればいいかわからないということが多いんです。僕も新人の頃は先輩にいろいろと聞いてみたのですが、皆それぞれ言うことが違っていて(岩本氏)

そこで岩本氏は、プログラム未経験からでもエンジニアとして独り立ちできるまでに成長することを目的とした社内向けプログラミングスクール「PRUMアカデミー」を設立した。

「他の人からのアドバイスに振り回されてしまうと、自分にはエンジニアは向いていないんだなと思ってしまいます。そんな若手エンジニアに対して、これをやればいいんだよという本当に正しい道筋を示すことで、安心感を持ってほしいと思ったのです」(岩本氏)

PRUMアカデミーでは約1年をかけて、普段はエンジニアとしての本業に携わりながら、空き時間でPRUMアカデミーのカリキュラムをこなしていく。まずは「手を動かすエンジニア」へと成長し、さらにその先の目標として「プロジェクトを引っ張っていけるエンジニア」を目指すのである。

実際にPRUMに入社してから技術力を磨き、現在ではエンジニアとして最前線で活躍するのが數藤由香里氏だ。

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數藤氏はコロナ禍をきっかけに未経験からエンジニアを志した。プログラミングスクールに通って技術を学んだものの、それだけでは就職が難しかった。少しでも自分自身をアピールしなければと思った數藤氏は技術ブログを立ち上げ、毎日記事を投稿した。しかし、ほとんどの企業はその点を評価してくれなかった。

そんな數藤氏を高く評価したのが岩本氏だった。岩本氏は數藤氏の継続力と将来性に注目し、數藤氏もまた「過程を見てくれたことが嬉しかったし、この会社で働きたいと思った」という。

まだPRUMアカデミーが生まれる前からPRUMでの成長を経験した數藤氏は、同社の育成カリキュラムについてこう語る。

「PRUMの育成カリキュラムの良さは2つあります。まず、常にカリキュラムが改善され続けているところ。それから、個人の学習で終わるのではなく、アウトプットの場としてチーム開発がカリキュラムに盛り込まれていることです。他社はもちろん、一般的なプログラミングスクールでもなかなかない特徴だと思います」(數藤氏)

數藤氏のようにPRUMで実力を磨いたエンジニアは相当数に上る。彼、彼女らはまさに冒頭であげた「プロジェクトを引っ張っていけるエンジニア」として、PRUMの主事業である受託開発で活躍している。

仮に未経験であってもエンジニアとしての基礎力を身につけることができ、さらに上流工程まで携われるエンジニアに成長できるーーそれこそがエンジニア不足が叫ばれる中でもPRUMが急成長している理由なのだ。

また、「PRUMアカデミー」に続くカリキュラムとして、中村氏が現在精力的に取り組んでいるのが「Geek Lab.(ギークラボ)」プロジェクト。これは、エンジニア経験者を対象とした社内育成制度で、「PRUMアカデミー」で基礎力を身につけたエンジニアが、さらにその先の「プロジェクトを引っ張っていけるエンジニア」を目指すために用意されたものである。エンジニアが最も成長できるのは実践である、という信念のもと、業務時間外に自分たち自身でサービスをつくる部活動のようなものだ。

業務以外でも独学で学べる事はいくらでもあるし成長する事も可能だが、実戦の場はやはり個人で用意するには限界がある。また、実務であればアプトプットを求められるので、経験のない領域に挑戦できる環境が簡単に用意してもらえるとは限らない。そこで実務や独学では経験できないような成長環境を用意したのだ。

中村氏がこうしたやり方を選択した理由には、「プロジェクトを引っ張っていける優秀なエンジニアは、効率化だけでは育たない」ことがある。

「エンジニアとしての技術は、カリキュラムを用いて効率的に育成することもある程度は可能だと思います。ですが、僕たちが考える“良いエンジニア”を育てる為には、効率だけで最適解を出せるとは思えない。結局アナログで泥臭い非効率な育成も必要だと感じることが多いですし、そういった形でエンジニアと向き合うことも大切にしたいなと思うんです」(中村氏)


「自分たちの強みは、先輩が後輩を育成する、というところを人間の言葉で伝えていく、これを地道にやり続けているということに尽きると思っています」(岩本氏)

人間的な部分を大切にしながら、さらなる事業拡大を目指す

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PRUMは他にもユニークな試みを多数行っている。たとえば、社員がランチとして手料理を振る舞う「200円ランチ」だ。作っているのが元料理人の社員ということもあり味はお墨付き。

金銭面でも健康面だけでなく、チームビルディングや心理的安全性への貢献においてもメリットが大きいということで大好評なのだという。

また、岩本氏は地方創生にも力をいれており佐渡島にオフィスを設立している。佐渡島は有人国境離島と呼ばれ、日本の国境を守る意味でも重要な存在だ。だが、同島はここ20年で人口が3割減少するなど課題を抱えていた。

そこで岩本氏は佐渡市と連携し、佐渡島にオフィスを設立することで雇用機会の創出を促進。東京に偏っているIT格差の是正にも貢献しているという。

「佐渡オフィスのミッションは、“PRUMが佐渡にあることで佐渡島が良くなったことを1つでも多く創る”こと。今後は現地の高校生向けに無料のプログラミングスクールを開講することも検討しています」(岩本氏)

創業から3年半で社員は60名超、特にここ1年で社員が倍になるなど急成長を遂げているPRUMだが、岩本氏も中村氏もまだまだ現状に満足していない。

「僕はエンジニアってすごく楽しい仕事だと思っているし、その楽しさを共有できる環境を作っていきたいと思っています。もっと組織を大きくすることを目指してはいるけれど、大企業になったからといってドライになるんじゃなく、人間的な部分を大事にするウェットさを持ち合わせた組織でありたいと思っています」(中村氏)


「サイバーエージェントの藤田さんがおっしゃっていた言葉に、一緒に働きたいのは“素直でいいやつ”というものがあって、僕もその通りだと思うんです。エンジニアスキルはPRUMに入社してから学べます。

ただ、しっかりとスキルを吸収するためには素直さが必要だし、その後お客様と一緒に長くプロジェクトに携わる上で信頼されるためには“いいやつ”でないといけません。共感力や人間力が高い人が最終的に優秀なエンジニアになれるんです」(岩本氏)

今後さらに事業規模を拡大し、成長速度を上げていくというPRUM。スタートアップであるがゆえに、岩本氏の言葉を借りれば「いい意味で制度などができ上がりきっていない」という同社では、一緒に組織やビジネスを作っていける人材を募集しているとのことだ。

日本が抱える課題に本気で向き合い、挑戦を続けるPRUM。同社の取り組みが、今後の日本のデジタル業界を変える台風の目となりそうだ。


PRUMの詳細についてはこちら

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