マーク・ザッカーバーグCEO
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メタの出社義務化(RTO:Return To Office)は現状、メタバースの状況と同じようなものだ。
9月5日現在、同社の約6万5000人の従業員は事実上、最低週3日のオフィス出社が義務付けられている。出社状況は毎日チェックされ、従わなければ解雇される可能性がある。
そのため、数千人の従業員がオフィスに戻った。リモートワークを積極的に推奨していた方針が突然変わったことで、従業員たちはスペース不足やプライバシーの欠如、生産性の問題に直面している。
「混乱状態」とある従業員は、これまでの同社の出社義務化について語った。
「すべては新しい社員のリモートでのオンボーディングが難しいことが理由だった。その問題を解決するのではなく、以前の状態に戻そうと経営陣が決めただけだ」
会議室の床に座ってミーティング
一貫して問題になっていることは会議室不足、と匿名を希望した3人の従業員は語った。
3人は、この問題はメタでは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で在宅勤務が急速に広がる以前の2019年にも起きていたと述べた。だが当時は従業員数はまだ少なかった。
今、会議室を確保することは至難の業だと3人は述べた。チーム全員で1〜2時間ミーティングを行うために十分な広さの会議室を確保することはさらに難しい。
ある人は、メンローパークにあるオフィスで会議室を確保しようと数日格闘した結果、小さな部屋が予約可能になったので、急いで予約したが、椅子とテーブルを置くスペースがなかったため、チームのほとんどは会議中、床に座わることになったと述べた。
同社広報担当者は次のように述べている。
「私たちは、ビデオ会議や集中作業が可能な、数多くのコラボレーションスペースやワークスペースでこの問題に取り組んでいます。当社は世界中に約80のオフィスを構えており、オフィスへの出社を推進するにあたり、チームが可能な限りベストな体験ができるように取り組んでいることは指摘しておきます」
ホットデスク
Instagramの責任者、アダム・モッセーリ氏。
Matt Winkelmeyer/Getty Images for WIRED
Instagram(インスタグラム)の責任者、アダム・モセーリ(Adam Mosseri)氏は、Threads(スレッズ)に以下のように書いている。
「割り当てられたデスクは、空席がたくさんあることを示している。カウンター形式のデスクは、知らない人ばかり。1人用スペースはプライバシーを確保できるが、設置には広いスペースが必要になる。解決すべきことは多い」
「ホットデスク」という事前に予約が必要な共有デスクもある。メタは2022年、在宅勤務をメインで続ける社員のために、オフィス内のデスクの一部を共有する仕組みに移行すると発表している。
出社義務化によって、事実上フルタイムで在宅勤務をしていて、オフィスのデスクがなくなった従業員や、正式にリモートワーカーとなり、デスクを手放した従業員の中には、オフィスに出社する必要があるときにデスク確保に苦戦している人もいる。
「ひとつのデスクを十分な期間、長く確保することは不可能なようだ」
こう語ったある従業員は、会議のために出社する必要があった日、違うフロアにあるホットデスクを行き来して、なんとか1日を乗り切ったと述べた。
メタの広報担当者は、ホットデスクについての問題は、同社のオンライン・デスク予約システムで適切に予約すれば解決できるはずだと述べた。このシステムを使えば、1週間先までデスクを3日連続で予約できるという。
「誰も辞めていない」
だが、こうした不満が退職につながっているわけではない。
「誰も辞めていない」とある従業員は述べた。多くの人は、雇用が維持されるためにできることをやろうとしていると彼は指摘。特に、半期の業績評価がかなり厳しいものだったこと、またチームリーダーは14.5〜16.5%の従業員を、期待に「概ね応えている(meets most)」および「サポートが必要(needs support)」という低い業績カテゴリーに分類することを義務づけられているなかではなおさらだという。ちなみにメタの他の業績カテゴリーには、「再定義が必要(redefines)」「大きく上回る(greatly exceeds)」「上回る(exceeds)」「期待通り(meets all)」がある。
初夏に終了した半期レビューについて、ある従業員は「『上回る』を獲得することはほぼ不可能な状況だった」と述べた。
「次の評価は面白くなりそうだ」
永続的なリモートワークの申請
メタでは新しいRTOポリシーのもと、18カ月以上勤務している従業員なら誰でも永続的なリモートワーカーになることを申請できる。多くの従業員が申請しているが、承認には時間がかかるようだ。
「数百人の人が申請しているが、まだ回答はない」とある社員は述べた。従業員たちは、リモートワーク申請は「数千人分」が滞っていると考えている。
メタの人事責任者ロリ・ゴラー(Lori Goler)氏のRTOについてのメモによると、8月下旬に出社義務化が発表された後に受理されたリモートワーク申請は、10月末まで審査されないという。その後、申請は毎月審査される。
申請が承認されるまでは、チームのメンバーがどこにいるかにかかわらず、オフィスが割り当てられている従業員は週3日、出社しなければならない。
Zoomのために出社
ある社員は、チームのほとんどは他のオフィスにいると指摘。つまり、通勤することを除けば、オフィス出社の義務付けは事実上、在宅勤務と変わらない。
他の従業員も、少なくともあと数週間は同じ状況だ。皆、リモートワーク申請が承認されることを待っている。彼はこう続けた。
「多くの従業員がZoomに参加するためにオフィスに出社している。そんな必要はどこにある?」