長期金利が上がれば、連動して住宅ローン固定金利は上昇する。
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- 2023年10月時点では、メガバンク3行ならびに主要ネット銀行の住宅ローン「固定金利」が上昇傾向にある。
- 具体的にはこの3カ月間で、各行とも「固定10年」の店頭金利をおおむね0.3%程度上げてきた。
- その一方、短期金利と連動する「変動金利」には、現時点ではほぼ変化が見られない。
主要銀行の住宅ローン固定金利が上昇傾向にある。
ただでさえ、東京都内の新築マンション平均価格が1億円を超えるほど高騰している時代だ。そんななか、住宅ローン金利上昇というさらなる追い打ちに頭を抱えている住宅購入希望者も少なくないだろう。
こうした背景もあってか、住信SBIネット銀行が従来最長35年までとしてきた住宅ローンの借入期間を「最長50年」までに改定した。つまり、住宅ローン契約者獲得競争の「次の一手」が見え隠れし始めているのだ。
そんな変化の時代を見据えた2023年10月。現時点のメガバンク3行ならびに(住信SBIネット銀行を含む)主要ネット銀行、そしてフラット35の変動金利と固定金利を俯瞰し、現在の住宅ローン金利を取り巻く状況を整理していこう。
適用金利と店頭金利(基準金利)の違い
- 適用金利とは、店頭金利(基準金利)にさまざまな割引や優遇を加えたあとの、実際の提供金利のことを指す。つまりは「小売価格」と思ってもらっていい。
- それに対して、店頭金利(基準金利)とは、その金融機関がもともと定めている金利のこと。つまりは「定価」だ。
固定10年ではおよそ0.3%の金利上昇
まずは2023年10月現在の、10年固定での住宅ローン金利だ。
固定10年
長期金利と連動する固定金利では、前回記事である7月時点のまとめと10月現時点の数字を比較すると、はっきりとした上昇傾向が見て取れる。具体的にはこの3カ月間で、各行とも固定10年の店頭金利をおおむね0.3%程度上げてきた。
ちなみに住宅ローンの「固定金利」は長期金利と、「変動金利」は短期金利と、それぞれ連動する関係にある。つまり長期金利が上がれば、連動して住宅ローン固定金利は上昇するわけだ。
フラット35などでも固定金利は上昇傾向
続いてフラット35をはじめ、10年よりさらに長い借入期間で設定する固定金利を以下にまとめてみた。
フラット35
(全期間固定金利) | |
---|---|
融資率9割以下 | 金利の範囲=年1.880%~年3.270% 最も多い金利=1.880% |
融資率9割超 | 金利の範囲=年2.020%~年3.410% 最も多い金利=2.020% |
固定金利、かつ35年に最も近い期間
フラット35、ならびに各行で35年に最も近い期間で設定した固定金利住宅ローンを並べてみたところ、比較対象となる借入期間が一律でないこともあり、金利上昇率は金融機関や商品によってかなりバラつきが見られる結果となった。
また、フラット35の金利の範囲の上限値など、直線的な上昇傾向を示さない項目も見受けられた。だが、フラット35の「最も多い金利」が連続的に上昇基調であることなどから、基本線としてはすべての借入期間において固定金利が上昇傾向にあることがうかがえる。
なお、住信SBIネット銀行の50年固定ローンについては、現時点では参照できる金利データを見つけることができなかった。
変動金利には目立った動きはなし
固定金利が上昇する一方、短期金利と連動する変動金利には、現時点ではほぼ変化が見られない。
変動金利
特にメガバンク3行の店頭金利「年2.475%」は、日銀のYCC(長短金利操作:イールドカーブコントロール)見直しを耳にするようになる前より、見慣れた数字をキープしている。
日銀総裁「当然起こっている現象」
昨今の固定金利上昇は、日銀が7月に行った政策修正による。具体的には、YCCの一部修正で、0.5%に抑えられていた長期金利の上限が事実上1%に引き上げられたことに端を発したものだ。
こうした住宅ローン固定金利上昇傾向については、9月22日に行われた日銀総裁定例会見(PDF)においても、長期金利が上昇しているために「当然起こっている現象」と言及された。その一方で、今後の住宅ローン金利が上昇を続けていくのか、との問いには、「今後の金融・経済・物価情勢および日銀の政策に大きく左右される」としながら、今の時点では具体的なコメントを避けた格好だ。
しかしながら、住宅ローン金利が低水準で安定していた時代から変化の様相を見せ始めていることは、直近3カ月の動向を見れば自明のこと。今後も住宅ローンの状況は引き続き定点観測を継続していく。