グーグル(Google)共同創業者のセルゲイ・ブリン。上の画像は2015年、自動運転車の試作品公開に伴う記者会見時のもの。
Elijah Nouvelage/Reuters
グーグル(Google)共同創業者のセルゲイ・ブリンが古巣に帰ってきた。
9月26日に開催されたグーグルの全社ミーティングにブリンがサプライズ登場。Insider編集部が独自ルートで確認した録音では、参加した従業員たちから拍手喝采を浴びていた。
同ミーティングはグーグルが創業当初から毎週金曜日に実施してきたもの(数年前から月次に変更)。社内では「TGIF(Thank God It's Fridayの略)」と呼ばれ、ブリンが登場したこの回はミーティング開催25周年を記念した特別バージョンと銘打って開催された。
当日は、グーグルの幹部らが創業(1998年9月)以来25年に及ぶ歴史をそれぞれに振り返るスピーチを行った。
ブリンは自身が見つめてきた人工知能(AI)の著しい進化について、グーグル創業期のまだ海の物とも山の物ともつかない時代のエピソードを紹介しながら語った。
「ここにいる皆さんの多くが、私よりずっと深くAI関連の取り組みに関わっていることはもちろん承知しています。それでも言いたくなるのは、今私たちがその一部として生きるテクノロジー革命、これは極めて深遠なる時間だということです。
今日こうやって私たちが25周年を迎えられたことと同じくらい、この先の25年を迎えることに強い興奮を感じている自分がいます」
外部の人間にとってはもちろん、グーグル従業員の多くにとっても、ブリン本人を前に話を聞くのは稀(まれ)な機会だ。
共同創業者のセルゲイ・ブリンとラリー・ペイジは2019年に経営の最前線を離れ、グーグルおよび親会社アルファベット(Alphabet)の手綱をサンダー・ピチャイに託した。ピチャイは現在、両社の最高経営責任者(CEO)を兼務する。
複数の関係者からの情報によると、ブリンはここ数カ月、グーグルの次世代AIモデル「Gemini(ジェミナイ)」の開発に関与しており、米カリフォルニア州マウンテンビューの本社に頻繁に姿を見せているという。
米ウォール・ストリート・ジャーナルの報道(7月21日付)によれば、ブリンはテクニカルな議論に加わるだけでなく、研究者の採用などにも一枚噛んでいる模様だ。
冒頭の全社ミーティングについて、グーグルの広報担当にコメントを求めたが得られなかった。
人類の究極的な問いへの答えを求めて
ブリンは前節で紹介したスピーチで、研究者がコンピューティングパワー(演算処理能力)不足を懸念する必要のなかった1990年代、自ら一人のコンピューターサイエンティストとして研究したテーマに触れた。
SF作家ダグラス・アダムスの大ベストセラー小説『銀河ヒッチハイク・ガイド』の中で、スーパーコンピューターが生命と宇宙、万物に関する究極の問いに対し「42」という理解不能な回答を導き出したため、今度は究極の問いとは何なのかを解明しようと、より高性能なスパコンを作り出すくだりを紹介し、彼はこう語った。
「端的に言えば、私たちも今日似たようなことをやっているわけです。翻訳から画像処理、広告システム、検索まで、私たちが長年かけてトレーニングしてきた巨大な機械学習モデルの一部が、『知能の真の意味とは何か?』『より強力な演算処理能力を実現し、より素晴らしいアイデアをひねり出すことで、私たちは何を達成できるのか?』といった疑問に対する従来の回答の限界を押し広げようとしているのです」
「私は今こそ本当の革命の入り口に立っていると感じており、皆さんの多くも同じように感じているのではないでしょうか」
ブリン氏、黎明期を振り返る
ブリンはさらに、グーグルの創業直後から25年近くチーフサイエンティストを務めるジェフ・ディーンや、社内AI開発チーム「グーグル・ブレイン」(4月の組織再編で「グーグル・ディープマインド」に統合)を創設したアンドリュー・ンとともに、事前にネコが何であるかを教えなくてもネコ(の画像)を認識できる大規模多層ニューラルネットワークの開発に成功した時代の思い出を冗談交じりに語った。
彼らが研究開発の現場に顔を揃えていた2010年代初頭、グーグル社内にはこんな光景があったようだ。
「オフィスの片隅のパソコンの前にいるディーンが、画面にネコを映して見せて、『うわ、これはすごい』と言うんです。でも、当時の自分にはそれが印象的な何かだとは思えませんでした。
でも、私はジェフを信頼していましたから、何であれ口出しするつもりはありませんでした。彼はずば抜けて優秀なコンピューターサイエンティストなので、私はただ『すごいよ、ジェフ、これはクールだ』と応じるばかりでした。
実際、ジェフの説明通り、完全な『教師なし学習』によってAIはネコを認識できるようになり、ネコに強く反応するニューロンが誕生し、これは論文にして発表すべきだろうという話になったのです」
また、ブリンはTGIF全社ミーティングを茶化すコメントも残している。
「私たちが始めた頃は看板通り金曜日に開催していたんですが、そのうち火曜日に変更になってしまって。数年後にはまた金曜日に戻るんだと思いますが」
最後に読者の方々へ、もう一人の共同創業者、ラリー・ペイジを見かけたら、ぜひInsider編集部に一報ください。