シャープは6.1型有機ELディスプレイを搭載した「AQUOS sense8」を発表した。
撮影:小林優多郎
シャープは10月3日、新型スマートフォン「AQUOS sense8」(アクオス センス エイト)を発表した。
2023年秋以降にECサイトや通信キャリアなどから発売される予定。公開市場版の予想実売価格は5万円台後半(税込)になる見通しだ。
IDCが8月31日に発表した調査結果によると、2023年第2四半期の日本におけるスマートフォン市場シェア(出荷台数ベース)では、シャープはベスト5に食い込めていない。
1位のアップル(45.9%)、2位のグーグル(15.4%)、3位のサムスン電子(8.0%)に大きく水をあけられている形だが、価格とスペックのバランスの取れたいわゆるミドルレンジスマホで攻勢をかける。
安心して使えるカメラとバッテリー性能
AQUOS sense8のカラーバリエーションは、ペールグリーン、コバルトブラック、ライトカッパーの3色。
撮影:小林優多郎
AQUOS sense8の強みはカメラとバッテリー性能にある。
まずはカメラだが、背面はF値1.9・50.3MP(約5030万画素)のCMOSセンサーを搭載する標準レンズと、F値2.4・8MPの広角レンズの2眼構成。
標準レンズは前機種「AQUOS sense7」から大型化した1/1.55インチのセンサーを採用し、光学式手ブレ補正や全画素位相差AFに対応。動きの激しい被写体や片手持ちでの撮影がしやすくなった。
また、チップセットには最新のクアルコム製ミドルレンジ向け「Snapdragon 6 Gen 1」を採用。sense7比でCPU性能は約36%、GPU性能は約33%が向上している。
チップセット内部のISP(Image Signal Processor)の性能も向上しており、明暗差の激しい場所でも白つぶれがしにくくなるHDR撮影に対応している。
同じタイミングから同じ動画を再生している端末。左のsense7の方が右のsense8より電池の予想持ち時間が短いことがわかる。
撮影:小林優多郎
もう1つの特徴であるバッテリー性能は、5000mAhの大容量バッテリーを搭載。
連続動画再生時間は公称値で最大39時間。シャープによると「1日10時間(動画視聴4時間、音楽3時間、SNS2時間、ゲーム1時間)の利用で2日間使用できる」という長時間駆動が可能になっている。
左からAQUOS sense7、sense8の側面。sense8では指紋センサーが電源キー一体型になっている。
撮影:小林優多郎
シャープのハイエンドスマホである「AQUOS R8/R8 pro」はドイツの老舗カメラメーカー・ライカ監修の1インチセンサーのカメラ、という目立った特徴があるが、sense8にはそういった要素はあまりない。
Rシリーズが写真やスペックをこだわるユーザーにフォーカスしているのに対し、senseシリーズでは幅広い人の日常利用を想定した作りになっていると言える。
Pixel aシリーズを意識するシャープ
シャープで通信事業本部 本部長を務める小林繁氏。
撮影:小林優多郎
シャープで通信事業本部 本部長を務める小林繁氏はsenseシリーズの歴代機種の出荷台数について「1000万以上」「法人向けより個人向けの方が多く出ている」と述べており、同社の中でも個人への訴求力があるシリーズという位置付けだ。
ただ冒頭で述べた通り、四半期限定のデータであるとはいえ、単純なシェア率で言えば同じAndroid陣営の中では、Android開発元であるグーグルの「Pixel」シリーズが特に存在感を示している。
AQUOSはスタンダードスマホとしてバッテリーのもちと気軽に撮れるカメラ性能をアピールしている。
撮影:小林優多郎
小林氏も現状の市場について「Androidでもプラットフォーマーのスタンダードスマホも出ている。これは大きな地殻変動」と、ミドルレンジスマホの競争環境の厳しさを語っている。
特にPixelシリーズの中でも、5月に発売された「Pixel 7a」はハイエンド級のカメラ性能やチップセットの処理性能を持ちつつも直販価格6万2700円(税込)。シャープに限らずミドルレンジスマホを展開するメーカーにとって、手強い競争相手となっている。
そんな中、シャープの小林氏は自社の強みについて「日本で一番普通の使い方を知っているという自負がある」と語り、ニーズの強いカメラの機能をアップをしつつ、長時間駆動するバッテリー性能や15項目のMIL規格に準拠する高耐久性もあるとして、安心して使える点を訴求していくという。
AQUOS sense8は台湾、インドネシアの展開も予定されている。
撮影:小林優多郎
従来からシャープはスマートフォンの海外展開をしているが、AQUOS sense8ではさらに本格化させる。
AQUOS sense8は日本のほか、台湾とインドネシアに展開する。従来は各国の通信事情に合わせた端末を開発・展開していたが、sense8は通信バンドなどに多少の違いはあるものの、ほぼ同じ性能、基本構造のモデルを海外でも販売する。
小林氏は具体的な販売目標などは明らかにしなかったが、「(Pixelなど海外勢が増えた)日本のスタンダード市場できっちり戦っていける商品であれば、世界でも通用する可能性がある」と自信を見せる。
長らく日本ブランドのスマートフォンは海外での存在感が薄いままだが、シャープのAQUOSがその突破口を開くのか注目したい。