Jaap Arriens via Reuters Connect
アマゾン(Amazon)では、コードネーム「プロジェクト・ナイル(Project Nile)」という新たな取り組みが密かに進行中だ。AIチャットボット技術を搭載し、同社の検索エンジンを徹底的に見直すのが狙いだ。
検索体験をアップグレードすることで、アマゾンはモバイルユーザーからの売上増を見込んでいるようだ。このことは、アマゾン検索およびアレクサ(Alexa)ショッピングを担当するバイスプレジデント、ジョゼフ・シロッシュ(Joseph Sirosh)が2023年初めに行った社内プレゼンの書き起こしから明らかになった。
AIを導入した検索バーでは、より会話調で、詳細かつパーソナライズされたものになると予想される。この新機能が売上に最も大きく影響する可能性があるのはモバイル端末であるため、シロッシュは「モバイルファースト」になるだろうと述べている。
「興味深いことに、現在、検索の78〜80%はモバイル端末から行われているが、コンバージョンははるかに低い。ウェブサイトでのコンバージョンのほうが劇的に高い」
「もし素晴らしい体験と専門家の素晴らしい回答を用意することでモバイルでのコンバージョンを増やせれば、アマゾンが大きく発展できる可能性がある」(シロッシュのプレゼン書き起こしより)
ジョセフ・シロッシュ
Stephen Lam/Getty Images
成長が鈍化しているアマゾンにとって、このようなAIが牽引しての収益増は渡りに船といったところだ。直近四半期の売上高は11%増の1344億ドル(約20兆1600億円、1ドル=150円換算)で、パンデミック中に経験した30〜40%という成長率からはほど遠い。
シロッシュはプレゼンの中で、アシストレイヤーが表示されるGoogleマップにたとえ、既存のアマゾン検索バーに新しいAI会話レイヤーが追加されると述べている。また、このアップグレードにより、検索結果や専門家の回答、提案の性能が改善されるとシロッシュは付け加えている。
より広い視点で捉えると、新たなAI機能が、個々の買い物客の好みや嗜好を熟知する店頭販売員に似たものになるとシロッシュは期待している。
「Eコマースが登場する以前は、店頭販売員が検索エンジンだった。販売員は商品に関するあらゆることを知っていた……販売員は、あなたを見れば何を望んでいるのかが分かった。あなたのような顧客が以前にも来店したことがあるからだ。あなたを直接知っている場合もあるし、好みを知っている場合もある。だから、そのような情報すべてを統合してあなたと自然言語で会話し、あなたのショッピングの目的をサポートすることができるのだ」
「これをアマゾン上のあらゆる商品に拡張できたらどうだろうか。それが、アマゾンが目指す今後の使命となるだろう」(シロッシュのプレゼン書き起こしより)