日本でもついに民間主導でカーボンクレジットの取引ができる市場が本格的にスタートする。
証券大手のSBIホールディングスと、CO2排出量の見える化・削減ソフトウェアの提供で知られる気候テックベンチャー・アスエネがこの6月に設立した合弁会社Carbon EXが10月4日、カーボンクレジット・排出権取引所のサービス開始を発表した。
10月4日よりクレジットの販売者(セラー)の本登録。10 月下旬に購入者の本登録を開始し、売買を順次進めていくという。
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事前登録に300社以上、クレジット取引は活性化するか
マーケットプレイスのイメージ。
画像:アスエネ
カーボンクレジットとは、温室効果ガスの排出をオフセット(相殺)するための手法の一つ。企業などが削減した二酸化炭素の排出量を「クレジット」として販売。二酸化炭素の排出量を削減したい企業は、クレジットの購入分だけ自社の排出量を打ち消すことができる。
日本では国が認証したクレジットである「Jクレジット」がよく知られているが、種類が少ない上、相対取引も多く、そこまで活発な取引がなされていなかったのが現状だった。
CarbonEXでは、国内大手金融機関グループとして初めてJ-クレジットに加えて海外で取引量が急増している「ボランタリーカーボンクレジット※」を含めた国内外のカーボンクレジットの取引ができる。
※民間の認証機関が認定したカーボンクレジット
加えて、非化石証書なども幅広く取り扱うほか、将来的には二国間クレジット 制度(JCM)やESG商品などの取引も見据える。
SBIとアスエネは2023年6月に合弁会社Carbon EXの設立を発表した(写真右:アスエネ西和田代表)。
撮影:三ツ村崇志、Pavel Kapysh/Shutterstock.com
SBIとアスエネは、6月にCarbon EXを設立し、カーボンクレジット市場の設立に向け準備を進めてきた。10月4日現在、Carbon EXのプラットフォームの事前登録数は300社以上。
Business Insider Japanの取材に対してアスエネは、
「大手金融機関、大手電力・ガス会社、大手製造業などがバイヤー/セラーとして事前登録をしています。特に業界の偏りがあるわけではなく、幅広い業種・業界が登録をしている状態です」
と語った。
なお、東京証券取引所がこの10月の開設に向けて準備を進めているカーボンクレジット取引市場への登録企業は、9月19日の発表段階で188社だ。
Carbon EXでは、まずマーケットプレイスの形でプラットフォームを開設する。現在登録されているクレジットは合計で130 万トン以上。民間のカーボンクレジットで懸念される「クレジットの質」についても、イギリスのカーボンクレジット格付け機関であるBeZero Carbon社と契約を締結し、プラットフォーム上で各クレジットの格付け情報を見える化することで担保している。
世界では、欧米やシンガポールなどで取引所開設に向けた動きが本格化している。カーボンプライシングの議論なども世界的に進んでいる中で、市場取引の活性化は避けては通れない課題だ。
カーボンクレジット市場は、2030年に最大1800億ドル規模(約27兆円:1ドル=149円換算)になるとも予測されている。アスエネ代表で、Carbon EXの共同代表も務める西和田浩平氏はこの6月の取材時に、「5年後に年間取扱高で1000億円を目指す」と語っていた。この目標には変更はないという。