「このミーティングが一番楽しみ」と言わせた会議改革。職場を活性化する1時間の使い方

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RunPhoto/Getty Images

職場におけるメンタルヘルスの問題に注目が集まるなか、近年認知が広がりつつあるのが「アブセンティーズム(absenteeism)」と「プレゼンティーズム(presenteeism)」という言葉です。

皆さんの職場でも、心身の不調により遅刻や早退、あるいは欠勤や休職など、業務自体が行えないメンバーがいるのではないでしょうか。このような状態を「アブセンティーズム」と言います。

また、勤怠上は問題なく見えるものの、心身の不調を抱えていながら業務を行っている状態を「プレゼンティーズム」と言います。

プレゼンティーズムを放置すると生産性の低下を招く

私の古巣でもあるリクルートワークス研究所が実施した「全国就業実態パネル調査2023年」によると、何らかのストレスを感じている人は、該当する人が多い順に下図のような結果になっています。

全国就業実態パネル調査2023年

(出所)リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査2023年」をもとに筆者・編集部作成。

過半数以上の人が「背中・腰・肩が痛む」「ひどく疲れている」「気がはりつめている」「ゆううつだ」「頭痛やめまいがする」といったストレスを感じているのが分かります。こんなに多くの方々がプレゼンティーズムに陥っているか、その予備軍になっているということです。

プレゼンティーズムのメンバーは、自身の労働時間の増加により疲労が蓄積し、周囲のメンバーに負担をかけていることに気を病み、放置するとアブセンティーズムになってしまいます。

同じリクルートワークス研究所の調査で、「ストレスによって精神的に病んでしまう人が発生した」という設問に「当てはまる」と回答した割合は、21.4%にのぼります。つまり、職場のおよそ5人に1人の職場に、ストレスで病んでいる人がいるということです。

これほどの割合ということは、プレゼンティーズムもアブセンティーズムも、決して人ごとではありません。集中力や仕事の質が下がると、それを補うために残業をしたり、周囲のメンバーにフォローしてもらったりする必要が生じます。結果、労働時間が増加し、生産性の低下を招いてしまいます。

この状態を防ぐ方法として、例えば経済産業省の「健康経営オフィスレポート(平成27年度)」では7つの行動が紹介されています(図を参照)。

健康経営オフィスレポート(平成27年度)

(出所)経済産業省「健康経営オフィスレポート(平成27年度)」より。

これらの事柄を心がけることでメンタルヘルス不調や生活習慣病の予防・改善が見込めることはその通りですが、これらはいずれも“必要条件”。「マイナス状態にならない」あるいは「マイナス状態を0に近づける」ための施策です。

では、どうすればプラスに持っていけるのでしょうか? いわば“十分条件”を考える必要があると思うのです。

そこで今回は、0からプラスに持っていくための「会議改革」についてご紹介したいと思います。

「この会議が一番楽しみで待ち遠しい」と言わせた会議改革

会議にかける時間は業種や職種、階層や規模によって大きく異なりますが、いくつかの参考情報をもとに推定すると、一般従業員ではざっくり労働時間の1~2割、中間管理職で3割強、上級管理職は5割程度を会議に費やしていると言えそうです。

これほどの時間を会議に割いているのですから、会議時間のクオリティはビジネスパーソンの心身のウェルビーイングに大きく影響を及ぼしているはずです。

ところが「会議」と聞くと、多くの人が「無駄だ」「長い」など、ネガティブな言葉を連想することが少なくありません。みなさんもおそらく、「会議が楽しみだ」なんていう話はあまり聞いたことがないのではないでしょうか。

実は私は、29年間在籍したリクルート時代に会議改革を担当したことがあります。そのため、会議についてアドバイスを求められることがあるのです。

先日、ある組織で開かれた1時間の会議のビデオを見る機会がありました。これは、とある営業チームが毎週1回行っている進捗会議のやり方を私のアドバイスに沿って変えてもらい、2カ月が経過したところで開かれた会議のビデオでした。この営業チームの上司が「会議の雰囲気が変わって業績が大きく伸びました。ぜひ見てください」とビデオを送ってくれたのです。

会議には営業職の男性(おそらく40~50代)の4人が参加していました。私はそれまで、この4人の会議を直接見たことはありません。上司いわく、従来はベテラン4人が淡々と業務報告をしてお開きになる、そんな会議だったそうです。

ところがビデオを見てみると、そんな4人が会議の1時間中、何度も声を出して笑い、終始楽しそうにしているのです。そして会議の終わりには、「1週間で、この会議が一番楽しみで待ち遠しい」という言葉まで飛び出しました。

会議の中身は業務報告です。ところが笑顔が一杯で、しかもこの会議が待ち遠しいというのです。ほかにも、

「この会議があるから、1週間、きちんと成果を出したいと思える」

「この会議では、参加者が私のことを承認してくれるので、元気が出てくる」

こんな発言も聞かれました。そうなのです。この会議は、参加者を元気にするのです。

同様の会議を実施している別の会社では、いわゆる士業と呼ばれる専門職の方々が同じような感想を語っていました。

「辞めようとしていたけれど、会社がこのような場を提供してくれるのであれば、頑張ろうと思っている」

「仕事と生活を両立できないと考えていたが、次回の昇進テストを受けようと考えている」

このような会議であればストレスも感じず、プレゼンティーズムとは無縁の状態で仕事に取り組むことができそうです。

この2つの会議に共通しているのは、「メンバーの相互理解の促進」です。より詳しく言い換えると、「メンバーの相互理解が促され、心理的安全性が高い時間(会議)作られている」と言えます。

「心理的安全性」の重要性については以前この連載でも取り上げたとおり最高の人材を集めれば最高のチームができるわけではなく、心理的安全性が高いチームほど生産性が高くなることが、研究結果(グーグル社が実施した「プロジェクト・アリストテレス」)から示されています。

では、どうすればこの心理的安全性が高く、生産性が高い組織を作れるのでしょうか? 心理的安全性が高く、生産性の高いチームには共通点が2つあります。

  1. チームメンバーがだいたい同じ分量の発言をすること
  2. メンバー同士の共感力が高いこと

つまり、上記で紹介した会議では、この2点を実現する設計になっているのです。

これが1時間のミーティングアジェンダだ

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