エネチェンジ創業者の城口洋平代表。東京大学法学部卒、英ケンブリッジ大学工学部博士課程卒。ケンブリッジ大での研究をもとに2015年にエネチェンジを創業した。
撮影:Business Insider Japan
電気・ガス比較サービスを展開するエネチェンジが、10月から一般開放がはじまったスマートメーターの電力データを活用する電力使用量ダッシュボードと電力プラン提案の新サービス「エネチェンジ・マイエネルギー」を開始した。
既に本番環境で稼働が開始しており、一般利用の受付も開始している。ユーザーの利用は無料。
スマートメーターのデータを第三者企業が活用することは、エネルギー業界特有の産業構造にメスを入れ、脱炭素にもつながる「省エネの本丸」だとエネチェンジは言う。
スマートメーターのデータ活用市場は「日本が最先端」の1つ
新サービス「エネチェンジ・マイエネルギー」。既に一般ユーザー登録を開始している。
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エネチェンジ創業者の城口洋平代表によると、日本には既に電力使用量をデータで受け取れるスマートメーターが国内8000万戸に設置されており「電力自由化と、スマートメーターの利活用(の両方)が8000万台規模ある市場というのは、世界でおそらく日本しかない」と言う。
エネチェンジの関係者は、ユーザー獲得の目標として、従来から提供してきた電気・ガス比較サイト「エネチェンジ」で個人向けに数十万件の電力事業者の切り替え実績や登録会員がいるとして、まずはこの件数と同等の利用登録を目指す。
法人向けについても、同様に従来サービスで数万件の見積もり発行をしており、この数量を基準に登録を目指す。
あまり意識することはないが、実は国内のスマートメーター普及率は極めて高い。東電エリアではすでに100%設置が完了している。
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現時点では日次データだが、2024年〜2025年になるとほぼリアルタイムのデータが取得できるようになる。電力削減提案の点では現時点でも十分だが、見守りサービスなど周辺領域のビジネス拡大に「リアルタイムデータ」は効いてくる。
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新サービスのビジネスモデルとしては、ユーザーの電力使用量データをもとに、より電力コストが下がるプランを提案し、電力会社の「切り替え」や切り替えたユーザーの「継続使用」などから手数料を得ることで収益化する仕組みをとっている。
その意味では、基本的なビジネスモデルは従来のエネチェンジと近い。
ただ、エネチェンジとしては、継続的にユーザーの電力データを取得し続けられることによって「適切なタイミングで切り替えをうながせる」「引っ越しなど(ライフスタイルが変わる)タイミングでも提案できる」(エネチェンジ関係者)とし、長期的なタッチポイントを持ち続けられることをビジネス機会と捉えている。
電力会社だけでは日本の省エネは進まない
スマートメーターを使った電力自由化市場の最先端を走ることになる日本。この市場は今後どのくらいの規模になるのか。
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サービス開始時点で、いつまでさかのぼった電力データが取得できるのかについては、スマートメーターの一般開放が始まった2022年4月が最も古いデータとなる。データ取得期間のルールとしては、過去最大3年間までのデータが取得できるという。
城口氏は質疑のなかで、電力会社ではない第三者の事業者がエネルギー業界にかかわっていくことの意義について、「電力会社は基本的に省エネはやりたくない。売り上げ・利益が減ってしまうから、電力会社主導の省エネというのはなかなか進まない」とし、社会が求める「電力削減・省エネ」と、事業者が追求する「ビジネスの拡大」が二律背反の関係にあるというエネルギー業界の産業構造を指摘した。
10月の電力データの一般解放は、データ自体の「自由化」の側面を持っている。
自社のような第三者の事業者が関わっていくことで、
「省エネをすると実は自分たちが損をするというような構造ではなく、構造的に省エネが進んでいくというのが、スマートメーターの第三者解放の『本丸』だと思う」
と話した。