経済的な自立を果たしたトレーダー、エリック・スモリンスキ氏と妻のメル氏。
Courtesy of Erik Smolinski
エリック・スモリンスキ(Erik Smolinski)氏の初めてのアルバイトは薪割りだった。
当時はまだ12歳ごろ。母親はスモリンスキ氏と彼の兄弟を食べさせるために、2つの仕事を掛け持ちしていた。そんな姿を見ていたスモリンスキ氏は、「自分は将来お金に困らないようにする」ために働き始めたとInsiderの取材に語る。
スモリンスキ氏は中学校と高校でも、雑用のようなアルバイトを続けた。クリスマスツリーを売ったり、頁岩を運んだりといった雑多な仕事だ。そうして稼いだお金は余さず貯金した。そうすれば、自分の経済的な状況を十分変えられると考えていたのだ。
当時のスモリンスキ氏は、複利の仕組みも知らなかったし、貯金を投資に回してお金に仕事をしてもらうという概念も理解していなかった。
「私の家庭では、誰かが投資の話をしているのを聞いたことがありません。投資とは何なのか、まったく知りませんでした」
しかしある日、高校の先生に、投資について調べてみるよう言われた。
「先生は、私がアルバイトを頑張っている姿を見て、『稼いだお金は何に使っているの』と尋ねてきたのです」
彼を予備役将校訓練課程でも指導していたこの先生のアドバイスを受けて、彼は高校の図書室に行き、何冊かの本を手に取って、基本的な投資の概念について学び始めた。
そしてスモリンスキ氏は、株を買い始めた。具体的には、自分が知っていて好きな企業の株だ。例えば、アイポッド(iPod)を「とてもクール」だと思ったので、アップル(Apple)の株を買った。また、ネットフリックス(Netflix)とアマゾン(Amazon)の株を買った記憶もあるという。
それが徐々に、デリバティブ取引に発展していった。大学に入るとデリバティブ取引により力を入れるようになり、今ではもう10年以上行っている。
スモリンスキ氏は、大学卒業後に6年間海兵隊に所属していた。今では、住宅や商業施設の不動産も保有し、エンジェル投資にも手を出し始めている。スモリンスキ氏の純資産は数百万ドルに達しており、32歳にしてもうお金に困ることはないと考えている。Insiderはスモリンスキ氏の資産額を、取引口座の複数のスクリーンショットで確認した。
先生からのアドバイスがなければ、スモリンスキ氏がこれほど若くから投資を始めることはなかっただろうし、さらには投資をまったく行っていなかったかもしれない。
長期的な資産運用で富を築く
スモリンスキ氏が主に行っているのはデリバティブ投資だ。これは非常にリスクが高いため、万人向けではない。
彼の場合は、デリバティブ投資が功を奏している。初めてエクイティ取引を行った2007年以降、損失を出してしまったのは最初の2年のみだ。
「2007年は約1.1%の損失、2008年は4.2%の損失になってしまいました。しかしその後は、一番成績が振るわなかった2018年でも13.78%のリターンです」
2018年から2022年にかけては、平均で24.6%のリターンとなった。この数字はInsiderもスモリンスキ氏の取引報告の複数のスクリーンショットで確認している。この期間、S&P 500インデックスは平均で約12%の伸びにとどまっている。スモリンスキ氏のリターンが最大だったのは、52%という数字を叩き出した2013年だった。
スモリンスキ氏は2014年から2019年まで海兵隊に所属していた。
Courtesy of Erik Smolinski
スモリンスキは駆け出しの頃に、事前にかなりの時間をかけて、オプション戦略について調べたり、実験したりしており、その際に極めて詳細な取引計画と取引記録をまとめたという。取引計画と取引記録の作成は、アクティブ投資を行うなら「欠かせない」とスモリンスキ氏は考えている。
多くの専門家は、一般の人が投資する場合には、長期的な資産構築戦略としてパッシブ投資を行い、それ以外には手を出さないのがベストだとアドバイスしている。そして、スモリンスキ氏も同意見だ。
「正直なところ、大多数の人にとっては、パッシブ投資がおそらく正解だと思います。でも、アクティブ投資でどれほどのリターンが得られるかに気づいたので、私は迷わずアクティブ投資を始めました」
パッシブ投資とは、スモリンスキ氏が行っているアクティブ投資とは正反対で、多様な資産を取り混ぜて購入し、それを保有し続けるという長期的な戦略のことだ。その目標は市場の成長に合わせて資産を増やすことであり、市場の成長を超えて資産を増やすことではない。短期的に大儲けできる可能性は低いが、アクティブ投資よりリスクが低く、ボラティリティも低いのがメリットだ。
最も広く行われているパッシブ投資のアプローチの1つとして、インデックスファンドの購入が挙げられる。
インデックスファンドとは、簡単にいえば、市場全体からさまざまな企業の株を幅広く取り集めたものだ。例えば、S&P 500の場合には、業界を牽引する500社のアメリカ企業が取り集められている。
そのため、S&P 500に投資するということは、アップル、マイクロソフト(Microsoft)、およびアマゾンのような企業の株を少しずつ買うようなものだ。幅広く多様な企業の株が取り集められているため、単一の株の価格変動で大損するリスクが少ない。また、こうしたタイプのファンドは、管理費が安い傾向にある。なぜなら、管理もパッシブに、つまり人の手をあまりかけずに行われているからだ。
これまでInsiderは、インデックス投資で資産を構築してきた多くの投資家に取材を行っている。
例えば、ブレナンとエリンのシュラグバウム(Brennan and Erin Schlagbaum)夫妻は、かなりの借金を抱えている状況から、純資産を100万ドル(約1億5000円、1ドル=150円換算)超まで増やせた。株式市場に投入している資産のうち、95%超は、バンガード・トータル・ストック・マーケット・インデックス・ファンド(Vanguard Total Stock Market Index Fund:VTSAX)、バンガード・トータル・インターナショナル・ストック・インデックス・ファンド(Vanguard Total International Stock Index Fund:VTIAX)、そしてバンガード・エマージング・マーケッツ・ストック・インデックス・ファンド(Vanguard Emerging Markets Stock Index Fund:VEMAX)の3つのインデックスファンドに分散されている。
2年半で20万ドル(約3000万円)超も貯蓄を増やし、早期退職に向けて順調に資産を形成しているクロエ・ダニエルズ(Chloé Daniels)氏は、投資の入り口としてインデックスファンドを試してみた。
ダニエルズ氏は、キャリアの駆け出しの頃は「投資するという発想が怖かった」という。
「『投資は賢い人がするもの、やり方がわかっている人がするもので、私がするものではない』と、ずっと思っていました」
しかし試行錯誤を繰り返す中で、ダニエルズ氏は、インデックスファンドへの投資はシンプルかつ効果的であるということに気づいた。
結局のところ、「株式市場で儲ける方法はたくさんある」ため、どのように投資するかは個々の投資家が決めることだとスモリンスキ氏は指摘する。重要なのは、実際に投資を始めることなのだ。