ショーン・アレンは、フルタイムのエンジニアとして働きながら、副業でキャリアコンサルトを務め、不動産投資家としてノースカロライナ州とカリフォルニア州に6つの物件を所有している。
Courtesy of Sean Allen
大学卒業後、経営大学院も修了したショーン・アレン(Sean Allen)の学生ローンは4万8000ドル(624万円、1ドル=130円換算)まで積み上がっていた。
加えて、大手石油メジャーBPアメリカへの就職を機に南カリフォルニアに住み始めると、さらに3万3000ドル(429万円)のクレジットカードローンが上乗せされた。
「普通の20歳がするように、ラスベガスに遊びに行ったり、旅行を楽しんだりしていました」
大学院修了後2年が経った頃、同僚でもある友人と初めての投資用不動産を購入して以来、アレンは不動産投資をこれからも継続したいと思うようになった。
しかし、合計8万1000ドル(1053万円)もの借金がその妨げとなった。その後、所有する不動産を3軒に増やしても、高利のローン返済によって、アレンの預金残高はいっこうに増えなかったからだ。
「さらに不動産を購入していくなら、まず“悪い借金”をきっちり完済する必要があると気づきました。計画を練り始めたのはこの頃からです」
前編ではアレンが不動産投資家として踏み出し、3軒の物件を取得するまでの過程を紹介した。後編では、アレンが借金を完済しながらも、33歳で100万ドル(1億3000万円)の資産を築いた方法を明かす。
編集部注:純資産、不動産の所有、借金の完済に関するアレンの全ての主張が真実であることは確認済み。
支出を減らし、収入を増やす
アレンのファーストステップは、支出を管理することだった。
「2016年、月に2000〜3000ドル(約26万〜39万円)の出費があったのに、支出や請求書が多すぎて残高が変わらないことが転機となりました」
まず支出を抑えるために、収支状況を追跡することから始めた。
「収入と支出を確認できるスプレッドシートを作ったんです。これにより、自分のお金の流れが見え、より良い計画を立てられるようになりました」
支出を記録することで、どこを削ればいいのかも見えてきた。例えば、クレジットカードの明細を調べたところ、28件の定期的な支払いがあることが分かった。
「そのうち必要なのは18件程度だったので、残りの10件を削りました。
さらに、ラスベガスに行く場合は飛行機代を節約するために長距離バスを使うようにし、車のローンを払わなくて済むように車検証もついてこないようなボロボロの車に乗り換えました。あの車には走行距離が34万マイル(約54万km)になるまで乗りましたよ。誰も同乗したがりませんでしたが、かなりの節約になりました」
アレンはまた、毎月の住居費をなくすための「ハウスハック」も始めた。彼はそれまで2軒目に購入した3ベッドルームの物件の1部屋に住んでいたが、2016年3月にその部屋を貸し出し、全ての部屋から家賃収入が入ってくるようにした。
アレンはどうしたのかと言えば、代わりにその物件のガレージに引っ越した。塗装は施されていたとはいえ、狭いスペースで快適さには欠けたが、毎月600ドル(約7万8000円)の追加収入を得られた。アレンは2年間、このガレージに住んだ。
支出を管理できるようになったら、ネクストステップは収入を増やす方法を考えることだ。それこそが借金完済を急速に進められる方法だとアレンは言う。
アレンはフルタイムの仕事で給料を得るかたわら、2013年から副業として履歴書の作成を支援する「ショーンズ・レジメ・ショップ」を始めていた。キャリアコーチの資格を取得したアレンは2016年にサービスを刷新し、キャリアコーチングと履歴書の書き方指導をセットにすることで、月に最大2200ドル(28万6000円)の副収入を得られるようになった。
ビジョンは数字に落とし込む
ビジョンとそれを実現するための計画を持つことも、支出を減らし、収入を増やすことと同じくらい重要だ、とアレンは強調する。
「30歳、40歳、50歳になって、自分が何をしているか、想像できますか? そのビジョンを持ち続け、今やっていることがそのビジョンに合っているのか、自問自答してください。なぜなら、あなたが下す全ての決断は、そのビジョンに近づくか、遠ざかるかのどちらかだからです」
未来像を現実へと変えるためには具体的な目標を書き出すといいとアレンは言う。例えば、借金のない生活を送りたいと望むのなら、具体的な数値目標を設定する。毎月借金返済に充てる金額や、最後の支払いをする正確な日付などを書き記すのだ。
「私は以前から常にビジョンステートメントと一緒に書き出した目標プランを持っています。今では6ページ分にもなりますよ。そこには不動産の目標、キャリアの目標、家族の目標が書かれています。こうした目標が、あなたを未来像へと向かわせてくれるんです」
30歳を前に借金完済
アレンは副業と質素な生活を1年半続けた結果、30歳の誕生日を目前に控えた2018年9月に8万1000ドル(1053万円)の借金を完済することができた。
「自由だと感じました。これからは投資にもっとお金を割いてもいいし、もう少し自分のことを大切にできるような気がしたんです」
現在、アレンと友人のデイビッド・シーは4つの物件を所有し、年間約6万8000ドル(約884万円)の家賃収入を得ている。住宅ローン返済などの経費を差し引いても、利益が2万400ドル(約265万円)ほどある。
さらにアレンは、自分でも2つの不動産を所有しており、毎年約7万1000ドル(約923万円)の売り上げ、約1万9000ドル(約247万円)の利益を上げているという。
不動産投資家になるきっかけは、2012年のシーとの会話から始まった。自分が興味を持っていることについては、できるだけ多くの人と会話をすることが非常に大切、というのがアレンの持論だ。
「もし不動産に興味があるなら、ビジネスパートナーや融資担当者、他の投資家仲間、指導者、借主、同居人などと話すのがいいでしょう。お金や借金、投資の話は個人的なことなので、敬遠されがちです。
しかし、私が学んだことの一つは、自分が同じ失敗をする前に、他の人の教訓や失敗から学ぶことができるということです。そうすることで、お金も時間もストレスも節約できますから」
33歳で億万長者に
アレンと婚約者。いずれは家庭を持つことを計画している。
Sean Allen
2021年12月19日、アレンは帳簿上、億万長者になった。資産から負債を引いた額が100万ドル(約1億3000万円)を超えたのだ。
「キャッシュはあまり持っていません」とアレンは言う。純資産の多く(約60万ドル:約7800万円)は不動産で、残りの40万ドル(約5200万円)はIRA(アメリカの個人年金積立制度)や401(k)などの退職金口座にあるからだ。
「でも全ての不動産を売却すれば、銀行口座の残高は100万ドルになる計算です」
アレンは現在、ほとんどの資金を不動産に投資しているが、株式投資もしている。しかしそちらはファイナンシャル・アドバイザーに任せているという。
「自分の強みと弱みを理解することが大切です。私の場合、株式投資や銘柄選びは得意ではありませんが、不動産探しとその管理は得意です。自分の時間、エネルギー、お金を得意なことにもっと注ぎ、不得意なことは誰かにやってもらおうと思っています」
純資産100万ドルを達成しても、アレンのライフスタイルは何も変わらなかった。支出も増やさず、お祝いすらしなかった。
「でもあの日は、これまでの出来事全てに意味があったと思えました。給湯器を修理するために行けなくなった旅行も、何年ものガレージ暮らしも、エアコンもないおんぼろ車に乗っていたことも、全てに意味があったと思えたのです」
アレンは、今もフルタイムでエンジニアとして働きながら、副業でキャリアコーチングをしている。アレンにとって、人のために働くことは、自分の意思で行っていることだ。
「私にとって経済的自由の定義とは、全ての請求書と支出が受動的収入でカバーされている状態です。私も今はその条件を満たせるようになりました。住宅ローンも光熱費も他人のお金で払えていて、車のローンも、学生ローンも、カードローンもありません。今ある利益で全ての支払いをまかない、生活水準を維持できています」
とはいえ、彼はいつか婚約者と一緒に家庭を持つことを計画しており、支出が増える可能性があることは認識している。
「受動的収入だけで生活し、家族を養えるようになるには、あと10〜12年はかかるでしょう」
それでも、不動産事業で収入を増やし続ければ、40代で早期にリタイアできると見込んでいる。
※この記事は2022年6月10日初出です。
[原文:A 33-year-old who paid off $81,000 in debt used real estate investing to build a $1 million net worth and achieve financial independence. He explains how he built his portfolio with $8,000 upfront および、A 33-year-old who paid off $81,000 in debt and is now financially independent shares the 3-step process he used to become debt-free]