スノーフレークのCMO、デニース・パーション。
Snowflake
データクラウド企業、スノーフレーク(Snowflake)のCMO(最高マーケティング責任者)であるデニース・パーションは、同社を大きく成長させるという責任を任されている。
パーションが入社したのは2016年のことで、当時、同社はシリコンバレーの高速道路101号線沿いに看板を掲げてマーケティングを行っていた。また、スノーフレークのイベントには同社の技術で構築したAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)のロゴがびっしりと飾られていたため、イベント参加者はしばしばアマゾンのイベントに来ているのかと勘違いするほどだった。
「スタートアップ企業である以上、自分たちの力だけでやっていくことはできないんです。同じ業界には、必ずその軌跡をたどって利用できる企業があります。私たちにとっては、それがAWSでした」とパーションはInsiderに語る。
今日、スノーフレークは急成長を遂げ、巨大企業に成長し、さらに飛躍的な成長が見込まれている。証券取引委員会に提出された同社のS-1書類によると、2018年の売上高は9570万ドル(約142億円、1ドル=148円換算)。2023年末までには26億ドル(約3850億円)の売上高を見込んでおり、2029年までに売上高100億ドル(約1兆4800億円)を達成することを目指すと記されている。
スノーフレークがこの大きな野望を達成するために行っている重要な戦略のひとつは、メディアやエンターテインメント、金融サービス、電話会社など、さまざまな業界向けにカスタマイズした製品を販売することだ。
パーションの大きな課題は、同社のソフトウェア上にそれぞれの業界固有のアプリケーションを構築するよう、開発者のコミュニティのエンジニアたちに働きかけることだ。これは、セールスフォース(Salesforce)が巨大テック企業になるのを助けた戦略でもある。
その一環としてスノーフレークが続けているのは、業界の枠を越えて人々とメッセージをやりとりできるリンクトイン(LinkedIn)の活用だ。
「リンクトインは最も効果的な方法で、個人をターゲットにすることができます」(パーション)
大手データ企業であるスノーフレークは、業界を超えた開発者とのつながりを重視しているため、パーションは同社のネットワークを拡大するべく、さらに手を広げている。例えば、8カ月前に立ち上げた開発者向けのYouTubeチャンネルもその一つだ。
また、同社は多くのライブイベントを通じて、開発者コミュニティを取り込もうとしている。
「私はあらゆるデジタルを信じていますが、B2Bにおいては、やはり周囲の人々のエネルギーを感じ、顧客と話をすることが大切ですね」(パーション)
スノーフレークは6月に開発者向けのサミットを開催し、10月にはニューヨーク、ムンバイ、ストックホルムなどの都市で、アプリ開発に特化した一連のイベントを開催している。
みずほ証券のアナリスト、グレッグ・モスコウィッツは、業界に特化した製品を開発できる企業は、早期にディールを成立させることができるというメリットがあり、多くの場合、そのような取引は規模が大きなものだと語る。
スノーフレークが100億ドルという野心的な収益目標を達成するためには、より大きなディールをまとめることが大きな鍵となる。スノーフレークは、2029年までに売上100万ドル(約1億4800万円)以上の顧客を1400社獲得する計画だと、同社のマイケル・スカーペリCFO(最高財務責任者)は2022年の投資家向けイベントで語っている。
2021年の投資家向けプレゼンテーションによれば、同年のその規模の顧客数は104社で、2023年の投資家向けプレゼンテーションによれば、現在の顧客数は402社だ。
「これまでの経過からすると、2029年までに1400社に到達するのが妥当だろう。彼らは戦略を実行し続け、プラットフォームを拡大し、クライアントにより多くの使用例を提供しなければならない」(モスコウィッツ)
売上1億ドル止まりの轍を踏まないために
スノーフレークの売上高が100億ドルに達するのはまだ先のことだが、パーションはすでに数千万ドルから数十億ドルの売上へと同社を導いている。
「多くの企業は1億ドルで行き詰まってしまいます」とパーションは言う。企業の技術営業にとってクライアントからの推薦は非常に重要だが、企業の規模が大きくなるにつれ、それには多くの時間を要するとパーションは言う。彼女は、2018年にスノーフレークが1億ドルの轍を踏まないよう、化粧品会社のグロシエ(Glossier)やスポーツエンターテインメント企業のエンデバー(Endeavor)といったスノーフレークのクライアントと、購入を検討している企業が話すことができる定期的なウェブセミナーを開催した。
「今自分たちがやっていることすべてに目を向け、1年後、2年後にこの規模が拡大するだろうかと自問するべきです」(パーション)