縮小のビール市場、どう広げるか。サントリーが缶ビールを「生ビール」にする新サーバーで需要掘り起こしへ

新ビールサーバー「nommigo」

サントリーが業務用の新ビールサーバー「nommigo」を発表した。

撮影:三ツ村崇志

飲料大手のサントリーが、10月5日、業務用に「缶ビール」から“生ビール”のようなビールを注げる新しいビールサーバーをテスト提供すると発表した。

サントリーでは、2021年4月にイノベーション部を立ち上げ、ビールの「新しい価値」を模索している。第一弾として、2022年6月に炭酸水で割るビールの『ビアボール』を発売。この4月には第二弾として3カ月で200万ケースを突破するヒットとなっている『サントリー生ビール』を発売していた。

今回テスト提供を開始する新しいビアサーバー「nomiigo(ノミーゴ)」は、イノベーション部の第三弾商品。初の「業務用」の機材だという。

コロナ前より「外食増」で、場所も多様化

サントリーの多田寅氏(右)とイノベーション部の伊藤優樹氏(左)。

サントリービールカンパニーマーケティング本部長の多田寅氏(右)と同イノベーション部の伊藤優樹氏(左)。

撮影:三ツ村崇志

サントリービールカンパニーマーケティング本部長の多田寅氏は、

「お客様の多様なニーズの変化に順応性が求められています」

と昨今のアルコール飲料市場の環境変化の激しさを語る。

2020年以降のコロナ禍において、飲食店での酒需要は激減。ここ最近はかなり復調してきたものの、コロナ前後で見ると消費者の行動は大きく変わってきた。今回発表したnomiigoは、コロナ前後での消費者や飲食店における環境変化を踏まえながら、約2年かけて開発されたという。

サントリーの調査によると、お酒を飲む場所がいわゆる「居酒屋」からファーストフード店やカフェ、ファミリーレストランなど、従来はお酒を飲む場所としてあまり認識されていなかった場所へ広がっている傾向が見て取れたという。

資料

画像:サントリー会見資料より引用

加えて、サントリーの調査で見えてきたのが「どうせならおいしいものを」という需要だ。

「全世代で、3割の方が『どうせお店に行くならおいしいもの』と、質を求めるようになった。特に20〜39歳の若い方だと、42%がその傾向にありました」(多田氏)

もともと国内のビール市場は縮小傾向にあると指摘されており、サントリーとしてもこれまでにない客層・場所でのビール需要の掘り起こしは課題だった。そこで開発されたのが、今回サントリーがテスト提供を開始する「nomiigo」だった。

缶ビールを「生ビール化」する缶専用のビールサーバー

nomiigoで注がれたビール。

nomiigoで注がれたビール。

撮影:三ツ村崇志

マーケティング担当のイノベーション部・伊藤優樹氏は

「ビールサーバーを置いていないお店でも、お客様がおいしいビールを飲みたいというニーズが高まっている。そのお客様のニーズをしっかりと捉えて、新しいビールサーバーの開発を検討してまいりました」(伊藤氏)

とnomiigoの開発に至った経緯を語る。

開発時に考えたのは「飲食店が使いやすい機材であること」そして、「(小規模の飲食店の)販売量に対応できる容量であること」。その結果導き出したのが、缶専用のビアサーバーだった。

一般的に居酒屋などでビールサーバーを使ってビールを注ぐ際には、10リットル、15リットル、20リットルという生ビールが入った「樽(たる)」が必要だ。ただ、樽に入れたビールは一度開栓すると2〜3日で品質が劣化してしまうため、基本的に一定量以上を販売するお店にしかビールサーバーの提供は難しかった。

今回、350ミリリットル缶を装置に入れるだけで樽詰のビールサーバーから注がれたような冷たさや泡立ちのビールを提供できるビールサーバーを開発。これまでなかなか樽詰のビールサーバーを導入できなかった「小規模な店舗」を対象に、潜在的な需要の掘り起こしを進めていきたい考えだ

nomiigoでビールを注げるようにするには、未開栓の缶ビールをラベルが正面を向くようにセットしてボタンを押すだけ。ボタンを押すと装置の中で缶が上昇し、自動で開栓されてタップ(注ぎ口)から注げる状態になる。常温のビールをセットしても、配管を通じて注ぎ口に届くまでに約4度まで冷却されるという。

常温の缶でもサーバーを通して注ぐと4度程度になる。

常温の缶でもサーバーを通して注ぐと4度程度になる。

撮影:三ツ村崇志

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