13年ぶり20億円で「おむすび」刷新。ファミマPBブランド「ファミマル」次の一手

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2023年10月、ファミリーマートのプライベートブランド「ファミマル」は2周年を迎える。

写真提供:ファミリーマート

「あなたと、コンビに、ファミリーマート」のコーポレートメッセージでおなじみ、コンビニエンスストア業界2位の売上高(2022年度)のファミリーマート。

2021年10月に誕生した同社のプライベートブランド(以下、PB)「ファミマル」は、発売以来22カ月連続(23年8月現在)で売上前年比を上回るなど、好調だ。

そしてこの度、ファミマル2周年を機に、同社の執行役員 商品本部長 島田奈奈氏が新たな戦略を発表。主力商品の「手巻おむすび」リニューアル、プレミアムライン拡大、独自のサステナビリティという3つの柱を打ち出した。

発表会の内容と担当者のコメントから、好調の理由や戦略に迫る。

「ファミマル」躍進の理由

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執行役員 商品本部長の島田奈奈氏。

写真提供:ファミリーマート

ファミリーマートは2021年10月に、それまで展開していた複数のPBブランドを一新し「ファミマル」に統一。

当初は2024年度に全商品内のPB売上比率を35%にすることを目標としていたが、2023年8月末の時点で36%に達し、展開は順調だ。

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資料提供:ファミリーマート

その原動力は大きく2つ。

ひとつは、「ファミマル」の商品開発力だ。

「やみくもにアイテム数を増やすのではなく、おむすびや飲料、加工食品などの定番アイテムに注力し、品質を重視したものづくりを推進してきました。

その結果、顧客のリピート率も上がり、着実にブランド認知が広がってきたと感じます」(ファミマルブランド推進担当の柘植幹子氏)

もうひとつが、社会情勢の変化だ。コロナ禍で中食需要が増え、おむすびや弁当、チルド惣菜などの売り上げが伸びた。

加えて、原材料の高騰によるナショナルブランド(NB)商品をはじめとしたさまざまな商品の価格高騰も要因となっている。

「『ファミマル』は、自信を持って周囲に薦められるレベルの品質のものを、求めやすい価格で提供することを目指してきました。

価格以上の価値を提供する『ファミマル』にはお得感があり、お客様のニーズの受皿になった点も、売上好調の原動力になっていると思います」(柘植氏)

2周年を迎えたファミマル。3つの進化とは?

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資料提供:ファミリーマート

順調に売り上げを伸ばし、展開を拡大してきたファミマル。さらにブランド力を高めるために、2周年を機に3つの施策を打ち出した。その進化は以下の通りだ。

1. 定番商品の刷新

まずはコンビニの看板商品であるおむすび(ファミリーマートではおにぎりのことを、“人とひとを結んで日本を元気にしたい”という思いから、おむすびと呼称)のリニューアルだ。

今回は、パリパリの海苔の食感が楽しめる「手巻おむすび」を大幅に刷新。製造方法を一新し、新たなおむすびを開発した。

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撮影:Business Insider Japan

2.ファミマルブランドラインの刷新・拡大

これまでパウチ惣菜、冷凍食品など約10アイテムを展開してきた「ファミマルPREMIUM」を拡大。こだわり抜いた素材と製法のビーフシチューや煮込みハンバーグなどに加え、焼き菓子やドレッシングも新商品としてラインアップ。2023年度中には20アイテム以上に拡大する予定だ。

また、パンのカテゴリ「ファミマルBakery」とスイーツ、焼き菓子、和菓子の「ファミマルSweets」をラインアップに追加。これまで以上に幅広い商品を提供する。

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撮影:Business Insider Japan

3.サステナブルへの取り組み

ファミマルは、サステナブルへの取り組みにも注力。環境対応容器の比率向上やサステナブルな商品開発、食品ロスへの対応、持続可能な原材料の活用など、あらゆるステークホルダーと持続可能な社会を実現するべく、取り組みを推進していく。

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資料提供:ファミリーマート

13年ぶりに新型成型機を導入、手巻おむすび刷新のねらい

今回の「ファミマル」リニューアルの大きなトピックが、「手巻おむすび」の刷新だ。

「手巻おむすび」は、年間約3億個(2022年度)の出荷数を誇る人気商品。この度、同社では専用の成型機を約20億円の費用をかけて刷新した。

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手巻成型機のリニューアルは13年振りとなる。また、使用するお米のブレンドも変更したことで、今まで以上にふっくらふんわりとしたおむすびを実現している。

撮影:Business Insider Japan

リニューアルした「手巻おむすび」のポイントは、「空気の配合」だ。

これまでは製造時、シート状にしたご飯をたたんで成型していたため、どうしても圧力がかかっていた。

新型の成型機では、三角の形に抜いたご飯を合わせる「サンドイッチ方式」に変更。圧力をかけずに成型することでふんわり感を、具穴を広げることで具材量を増やすことを実現した。

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資料提供:ファミリーマート

「おむすびは、『ファミマル』の中でも不動の定番商品です。コストをかけてでも、磨き上げていくことが強さになると思っています。

また、今回新商品として『手巻 明太マヨクリームチーズ』や『手巻 とろうま卵黄風そぼろ』といった専門店のような種類を追加。より幅広い年代、層の方に食べていただけるラインアップになりました」(柘植氏)

「ファミリーマートらしいサステナビリティ」とは?

今回の発表会では、サステナブルな取り組みについての説明もあった。

同社ではサステナブルな商品開発を通じて、地域課題解決に貢献し、日本各地の生産地を支援している。例えば、国産フルーツを使ったアイスバー「ぎゅっとシリーズ」などがそれにあたる。

同シリーズの第一弾「とろける食感ぎゅっと白桃」では、福島産の桃を使用し、地域課題解決に貢献した。

「福島県と共同で行った記者会見では、農家の皆様にもご出席頂き、桃の魅力や生産に関する苦労話等を頂戴し、全国に向けて福島県の桃の魅力をお伝えする一助になりました。

また、当社の福島県にある加盟店に賛同いただき、商品発売後も桃の収穫体験を実施するなど、地元の方々と一緒にものづくりから販売まで行うような取り組みができています。

このような地域活性化に繋がる取り組みを継続していきたいと思います」(柘植氏)

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写真提供:ファミリーマート

また、2023年10月10日に発売される「ごちむすび」シリーズの一部商品では、アラスカ産シーフードを使用。

「我々は、原材料の調達を含めて持続可能な生産体制を作ることを目指しています。

今回のアラスカ産シーフードも、漁獲量などを制限して生態系を守る取り組みをされているアラスカの漁業団体と提携しています。

今後も、サステナビリティの観点で原材料などを精査し、活用していきたいと考えています」(柘植氏)

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写真提供:ファミリーマート

「ファミマル」にしかできない商品を作っていく

「ファミマル」が発足して2年。社内ではどんな変化があったのか。

「これまでカテゴリごとにPBブランドがあったものをファミマルに一本化したことで、社内全体で商品の作り込みからPR、販売までを一気通貫で行う体制が整い、全社的にファミマルを育てようという機運が高まっています」(柘植氏)

今後も、やみくもにアイテム数を増やそうとはしていない。ただ「安い」「おいしい」だけではない、ファミリーマートらしさを追求し、「ファミマル」というブランドを強くすることが最優先だ。

それぞれの商品を作り込み、一品一品の売り上げを伸ばすことで、ファミマルの売上構成比を大きくする形を目指す。

「『ファミマル』にしかできない、こだわったものづくりをしていきたいと思っています。

お客様のニーズに応える商品を開発し、認めていただき、『ファミマル』の商品購入のために店舗に足を運んでいただくのが理想です」(柘植氏)

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写真提供:ファミリーマート

手軽に買い物やさまざまなサービスが受けられるコンビニエンスストアは、我々一般消費者にとって身近な存在だ。一方、身近になりすぎてしまい、コンビニエンスストアの「個性」については、それほど気にしていないことも多い。

ファミリーマートは「ファミマル」というPBブランドで、わざわざその商品を買いに訪れるといった、便利の先にある“なくてはならないお店”を目指している。リニューアルした「手巻おむすび」が、まずその第一弾。食べてみると、その本気度が分かるはずだ。


ファミリーマートの「手巻おむすび」について、詳しくはこちら。

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