メタバースは「死んだ」「オワコン」との声も聞かれるが、開発者たちはその夢を諦めていない。
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メタ・プラットフォームズ(Meta Platforms)に買収され、同社製VR(仮想現実)ヘッドセット展開の基盤となったオキュラス(Oculus)のアルムナイが際立った動きを見せ始めた。
米証券取引委員会(SEC)の開示書類によれば、オキュラス共同創業者のネイト・ミッチェル氏と元エグゼクティブプロデューサーのマット・ハンセン氏が創業したゲーム開発スタートアップ、マウンテントップ・スタジオ(Mountaintop Studios)は近ごろ、少なくとも2050万ドル(約30億円)の追加資金調達に成功した。
シリーズA1ラウンドで設定された募集株式の目標総額は2500万ドルで、残り募集金額が450万ドル。開示書類では出資者は特定されていないものの、現時点で7者が名を連ねている。
ミッチェル氏にコメントを求めたが得られなかった。資金調達の詳細については、ラウンドのクローズまでに変更になる可能性もある。
ミッチェル氏がパルマー・ラッキー氏やブレンダン・アイリブ氏らとともにオキュラスVRを創業したのは2012年。翌々年にはメタ(当時フェイスブック)に30億ドルで売却した。
メタは現在、オキュラス製品をベースに「メタ・クエスト(Meta Quest)」シリーズを展開している。
ミッチェル氏はメタによる買収後もVRプロダクト責任者として在籍し続けたが、2019年には退社。翌20年に同じオキュラス出身のマット・ハンセン氏、メタ時代に同僚だったクリエイティブディレクターのマーク・テラノ氏らとマウンテントップ・スタジオを共同創業した。
サンフランシスコに本拠を置くマウンテントップは、公式ウェブサイトの説明によると、「プレイヤー同士が出会い、生涯続く友人関係を築けるようなゲーム」とそれに伴う「インクルーシブかつアクセシブルなコミュニティ」の創出を目指している。
また、同社はゲーム開発スタジオとして、「恒久的なフルリモート」によるコラボレーション色の強い少数精鋭の運営体制を維持していくと、シリーズAラウンドの資金調達時(以下で詳述)に宣言。35人以上の優秀なスタッフが世界中に散らばって開発を進めている。
創業以降の約3年間は、その大半を対戦型タクティカルシューター(プレイヤー間のチーム戦術を重視したリアルな戦闘ゲーム)の開発に充ててきたという。
2021年8月に発表したシリーズAラウンドでは、ベンチャーキャピタル大手アンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz)をリードインベスターに、スパーク・キャピタル(Spark Capital)やファウンダーズ・ファンド(Founders Fund)、デトロイト・ベンチャー・パートナーズ(Detroit Venture Partners)から総額3000万ドルを調達した。
同ラウンドを通じて、マウンテントップの評価額は8600万ドルとなった。リードインベスターを務めたアンドリーセン・ホロウィッツのパートナー、ジョナサン・ライはマウンテントップの取締役に就任している。
ゲーム業界はパンデミック下の行動制限を追い風に業績を大きく伸ばした。2021年は文字通り飛躍の年となり、VCは過去最高の172億ドルをゲーム関連スタートアップに投じた。
コンサル大手プライスウォーターハウスクーパース(PwC)は6月21日付のレポートで、ゲーム産業の市場規模が2026年までに3210億ドルへと拡大すると予測している。