最近の市場下落にもかかわらず、“マグニフィセント・セブン”に強気になる十分な理由がある。
Carlo Allegri/Reuters
少数の大型株グループが、年初からの市場上昇の大部分を占めている。少なくともゴールドマン・サックスは、今はそう思えないかもしれないが、この7社が近いうちに勢いを失うことはないと考えている。
2023年第1四半期以降、“マグニフィセント・セブン”と称される7社——エヌビディア、アップル、アマゾン、アルファベット(グーグル)、マイクロソフト、メタ、テスラ)はS&P500の驚くべき上昇を支えてきた。
だが最近、7社は低迷している。先ごろの顧客向けメモで、ゴールドマン・サックスの米国株チーフ・ストラテジスト、デビッド・コスティン(David Kostin)氏は8月に入ってからマグニフィセント・セブンの株価は、S&500の3%下落に比べて、7%下落していると指摘している。
だがこの低迷は長く続かないとコスティン氏は考えている。実際、投資家にとっては、市場で最大・最高のポジションにある7社の株を割安で購入する絶好のチャンスかもしれない。
債券利回りはすぐに落ち着く
テック大手は2022年に大きな打撃を受けたが、AI(人工知能)をめぐる盛り上がりを受けてマグニフィセント・セブンは2023年になって復活した。エヌビディアが発表した第1四半期の売上高はウォール街の予想をはるかに上回り、AIに少しでも関連する銘柄には資金をつぎ込む価値があることを知らしめた。
数字を見れば明らかだ。エヌビディアの株価は1月1日から8月1日までに218%上昇し、マグニフィセント・セブンの株価上昇を牽引した。一方、マイクロソフトの株価は8月1日までに40%上昇にとどまった。
だが夏が終わると債券利回りが上昇。FRB(米連邦準備制度理事会)が高金利を長期化させると示唆したため、景気後退懸念が再浮上し、債券利回りは短期間で急上昇した。
8月、米国10年国債利回りは4%から4.7%に上昇し、2007年以来の高水準となった。利回り上昇は、マグニフィセント・セブンの株価を直撃した株式市場の下落と同タイミングだったが、コスティン氏は予想されていたことと述べた。
「国債利回りの上昇に直面して、長期間上昇を続けてきた大型でIT株のパフォーマンスが低下したことは、過去5年間の取引パターンと一致している。つまり、大型株は、10年国債の名目利回りが2カ月で50bp以上上昇すると苦戦する傾向がある」
コスティン氏はまた、債券利回りが高止まりを長く続けることはないと考えている。コスティン氏いわく、おおかたの市場ウォッチャーとは異なり、ゴールドマン・サックスのエコノミストらは、FRBが2023年中に再び金利を引き上げることはないと考えており、10年国債の利回りは年末までに4.3%程度に落ち着くと見ている。
マグニフィセントなチャンス
債券利回りの上昇はマグニフィセント・セブンの株価を下げ、同時にバリュエーションも下げるとコスティン氏は言う。。
「大手IT7銘柄のNTM(Next Twelve Months:今後12カ月)PER(株価収益率)は、この2カ月で20%下落した(34倍から27倍)。7銘柄は現在、2014年以降のPERの中央値(24倍)をわずか14%上回るだけの水準で取引されている」
マグニフィセント・セブンは市場を上回っている。
Goldman Sachs
債券利回りの上昇は、マグニフィセント・セブンのバリュエーション低下の重要な要因だったが、仮にコスティン氏が予想するように債券利回りが本当に落ち着けば、マグニフィセント・セブンのバリュエーションに対する圧力は弱まり、株価には上昇余地が生まれる。
さらに、バリュエーションがすべてではない。PERの「P(株価)」は重要だが、収益も同様に重要だ。その点において、マグニフィセント・セブンは際立っている。コスティン氏は次のように述べる。
「S&P500の2021年と2022年の売上高成長率はほぼ同じだが、市場予想ではS&P493(マグニフィセント・セブン以外)の2025年までの売上高成長率は、マグニフィセント・セブンよりも9%ポイント低い(3%対12%、下図)」
「利益ベースでは、マグニフィセント・セブンの2025年までの利益成長率は15%、493社は5%となっている」
Goldman Sachs
特にウォール街はマグニフィセント・セブンの収益は今後数年でさらに上昇すると見ていることを考え合わせると、今日の低いバリュエーションと明日の高い収益予想は魅力的な組み合わせだ。
「市場はマグニフィセント・セブンの収益成長率を今後12カ月は22%、今後24カ月は43%と予想している」
「最近、市場予想が上方修正されたことは、マグニフィセント・セブン、特にエヌビディアとアマゾンのPERが上昇していることを反映している」
Goldman Sachs
マグニフィセント・セブンを安値で買う
1年後、2年後の予想は好調で良いことだが、コスティン氏は第3四半期決算を控えている今がチャンスと考えている。
「歴史が示しているように、次の決算シーズン(第3四半期)は大型IT株にとって上昇のきっかけとなる可能性がある」
2016年以降、大型IT株は3分の2の確率でS&P500を上回っているとコスティン氏は述べた。アナリスト予想も、第3四半期は大手IT株が勝ち組になると指摘しており、予想売上高成長率はS&P500の他の銘柄を大きく上回っている。
価格を気にしている投資家にコスティン氏は良いニュースを提供している。マグニフィセント・セブンの株価は過去6年で最も安価になっているのだ。
「マグニフィセント・セブンは、PEGレシオ(Price Earnings Growth Ratio)1.3倍で取引されており、S&P500の中央値の1.9倍と比べると2017年1月以降最大のディスカウントで、過去10年でわずか5回しかないレベルになっている(S&Pの0.7倍、下図)」
Goldman Sachs
売上高と収益への期待が株価を押し上げ、マグニフィセント・セブンは驚くほど高く評価される可能性があるとコスティン氏は考えている。
「成長率予想が変わらない場合、マグニフィセント・セブンが過去10年の平均PEG(S&P500の0.84倍)を回復すると、株価は20%上昇するだろう」
年初から平均92%上昇しているマグニフィセント・セブンが、特にS&P500が低迷しているなかで、現状からさらに20%上昇すると考えることは奇妙に思えるかもしれない。
しかし、高い債券利回りと低迷する市場の下には、マグニフィセント・セブンについて無視することのできないチャンスが隠れている。それはすなわち、低いバリュエーション、長期の利益成長、そしてAIレースをリードすることによる空前の利益にほかならない。