不動産投資家のサム・プリム氏。
Sam Primm
アメリカの30年固定住宅ローン金利は7.51%に達した。これは過去20年以上で一度も見たことのないような高水準であり、住宅所有者にとっての新常態を生み出した。
住宅所有者が現在の家を低い金利で購入していた場合、引っ越しをすればその金利を手放すことになるため、彼らはその場所から身動きがとれなくなっている。その結果、物件の在庫不足が深刻化し、住宅購入者を苛立たせるとともに、金利を高止まりさせている。
26歳から積極的に住宅購入を続けている不動産投資家サム・プリム氏(35)にしてみれば、住宅の購入に完璧な環境など存在しない。
プリム氏は、たとえ金利が再び3%を下回ったとしても、住宅需要は増加し、価格も上昇するだろうと話す。金利の新たな現実は、過去30~40年間の平均的な水準に戻っているだけだ、と。
プリム氏と友人のルーカス・ウォールズ氏は、9年以上前にプライベートレンダーを利用して最初の家を購入した。それ以来、彼らはプライベートレンダーから従来の商業用・住宅用ローンに至るまで、さまざまなタイプの借入戦略を採用してきた。これらのローンを利用し、購入(Buy)、修繕(Rehab)、賃貸(Rent)、借り換え(Refinance)、繰り返し(Repeat)の頭文字をとった、いわゆる「BRRRRメソッド」だ。
BRRRRメソッドを使う場合、投資家は物件を改修し、銀行に持ち込んで従来の住宅ローンで借り換える必要がある。その後、入居者が住宅ローンを支払い、投資家はキャッシュフローを生む資産を手にして立ち去る。プリム氏は、頭金にプライベートレンダーを利用することでさらに一歩踏み込んだ戦略を使った。その後、通常の住宅ローンが最初の貸し手への返済に充てられる。
Insiderは、プリム氏とパートナーであるルーカス氏が現在198件の不動産を所有していることを確認した。プリム氏によれば、その後さらに不動産を購入して、現在は200件を超えているという。プリム氏は、ミズーリ州セントルイスの不動産投資企業である「ファスター・ハウス(Faster House)」と不動産投資コミュニティの「ファスター・フリーダム(Faster Freedom)」の共同創設者だ。
このBRRRRメソッドは、気の弱い人には向かないだろう。特に起業時には頼れる資金がないため、数字を把握し、狭い利幅で運用しなくてはならない。
住宅環境の変化に伴い、プリム氏もキャッシュフローをプラスに保つためには利幅を調整し続けなくてはならない。そのためのヒントをプリム氏に教えてもらった。
プリム氏が教えてくれた5つのヒント
より狭い利幅を受け入れる
プリム氏は過去に投資家に対し、毎月300~500ドル(約4万5000〜7万5000円、1ドル=150円換算)のプラスのキャッシュフローを目指すことを推奨している。
「特に私が採用しているBRRRRメソッドでは、自己資金ゼロで月500ドルのキャッシュフローが期待できる賃貸物件を買うことはできないでしょう。実際には、利幅は本当に狭くなります」
現在の新常態では、月々のキャッシュフローが100~200ドル(約1万5000〜3万円)になる可能性もある。投資家はそれを補うために、長期的な視点に切り替えなくてはならない。つまり、不動産が値上がりして十分なリターンが得られるまで、その不動産を保有するという計画が必要になってくるのだ。
そしてその間も、家賃によって物件の経費、住宅ローン、税金、保険をカバーしなければならない。
相場の家賃を請求する
これは当たり前に聞こえるかもしれないが、経験豊富な家主でも、特に長期のテナントの場合はこの間違いを犯す可能性がある。賃貸料の相場が上昇しているにもかかわらず、多くの不動産所有者がその変化についていけていないとプリム氏は指摘する。
「ほとんどの人は、単に数字を並べているだけなのです。そうではなく、実際の長期市場の家賃がいくらなのかを調査した上で請求しなければいけません」とプリム氏。
「多くの人は、賃貸料がどれだけ値上がりしたかを知りません。賃貸物件を285件所有している私たちでも、このような間違いを犯してしまいました。もっと調査して掘り下げていれば、1月でさらに100ドルを得ることができたはず。これは大きな金額です」
長期の住宅ローンを選択する
一般的に、住宅ローンの返済期間が長ければ長いほど、期間中に支払う利息も多くなる。一方、住宅ローン期間を短くすると利息は減るが、月々の返済額は増える。そして住宅ローンを延長して月々の支払額を減らすと、キャッシュフローをプラスに保つことができる可能性がある。月々の支払額を多くすれば、その分をプライマリーローンの返済に回すこともできる。
プリム氏によれば、金利が下がった場合には借り換えも可能だという。ただし、融資額の2〜6%になる可能性のあるクロージングコストに対して、どれだけ節約できるかを考慮する必要がある。
地元の小規模銀行を忘れない
地元の中小銀行の住宅ローンは、大手に比べて金利が最大で1%低くなることがある。プリム氏は、地方銀行はリスク許容度、成長戦略、経営基盤に応じて、競争力のある金利を提供してくれると話す。
テナントを入れ替える
それでも経費要件を満たせない場合は、長期テナントが適切なアプローチではない可能性がある。
不動産所有者や賃貸業者は、収益を上げるためにエアビーアンドビー(Airbnb)を介した短期賃貸に目を向けていた時期がある。これは人気の戦略だったが、好不況のサイクルを経て、現在では需要が減少している。短期賃貸は手間がかかり、ロケーションも人気の観光地でなければならないため、すべての人にとって有利な戦略とはならないとプリム氏は指摘する。
新たなスイートスポット
プリム氏は、中期賃貸こそが現在の新たなスイートスポットだと語る。30日から6カ月間の賃貸物件は短期賃貸ほどではないかもしれないが、年契約よりも利益が生まれるとプリム氏は話す。
これは、人気の観光地ではない場所の不動産を所有している場合にも最適なオプションになる。派遣看護師、法人、保険請求に伴う引っ越しなどはみな中期賃貸物件を探しており、郊外から都市部までどの場所でも利益を上げることができるとプリム氏は言う。
あなたが新しい物件を探しているとしよう。その場合、大きな病院の近くの物件は、大規模なビジネスである派遣看護師に対応することで稼働率を高めることができるため、最適な選択肢になるという。すでに不動産を持っている場合にも、優れた選択肢になりうる。
プリム氏は一例として、ミズーリ州セントルイスに所有する集合住宅を挙げる。彼は現在、月額1000ドル(約15万円)でこの物件を貸し出しているという。中期契約用の家具付きの数戸は月額2250ドル(約33万7500円)で貸し出されており、これによりキャッシュフローが125%増加したとプリム氏は話す。なお、現在のこの物件の入居率は約90%だという。
「竜巻がどこで起こるかを予測することはできません。しかし条件が揃えば、火災も竜巻も、その他のどんなこともいつでも起こりうるのです」