Revo Foodsが3Dプリンターで製造したビーガンサーモン(上)。太平洋で獲れた天然キングサーモンの切り身(下)。
Thomas Barwick/Getty
- Revo Foodsは、3Dプリンターで製造したビーガンサーモンの切り身を販売する最初の企業となった。現在ヨーロッパ各国で購入できる。
- 投資家たちは近年、代替シーフードのスタートアップに4億ドル以上を投入している。
- 起業家たちは、代替シーフードの製造・消費によって、水産資源の乱獲やマイクロプラスチック汚染を減らすことができると語った。
3Dプリント製品の市場には、住宅、家具、履物などが出回っている。ヨーロッパでは、このリストにサーモンが加わることになった。
フードテックのスタートアップ、Revo Foodsは3Dプリントされたビーガンサーモンの切り身を販売する最初の企業になった。2023年9月、オーストリアのウィーンにある食料品店で販売を開始し、10月にはヨーロッパ各国に製品を発送するオンライン・ショップをオープンした。
「天然のサーモン同様、きれいな層になっている。味も似ているが、他の代替肉と同様、100%同じではない」と、Revo Foodsのロビン・シムサ(Robin Simsa)CEOはInsiderに語っている。
黎明期の代替シーフード業界にとって、これは画期的な出来事だ。この業界では、海の生態系に害を与えない製品を作るために、さまざまな食材や技術を用いて開発が進められている。植物由来の素材を用いる企業もあれば、研究室で魚の細胞を培養する企業もある。Revo Foodsでは、キノコの根から作られた「マイコプロテイン」と植物性脂肪を3Dプリンターで重ね合わせ、本物のサーモンに似た食感を生み出している。
投資家たちは近年、代替シーフードのスタートアップに4億ドル(約600億円)以上を投入している。Revo Foodsへの700万ドル(約1億円)の投資もそれに含まれる。しかし、大量生産にこぎつけた企業はまだない。そして「果たして買う人がいるのだろうか」という最大の疑問も、まだほとんど検証されていない。
ビーガンサーモンの価格は130グラムで7ユーロ(約1100円)となっており、シムサCEOによると販売開始以来、店頭に並んでから数時間で売り切れているという。しかし、YouTubeで公開したプロモーション・ビデオに寄せられたコメントは、割高な価格と3Dプリント食品というアイデアに批判的なものが多かった。
例えば「なぜ本物のサーモンより高い偽物を食べなければならないのか」「ビーガンのフィレを食べるくらいなら、核の黙示録の中にいる方がまだましだ」といったコメントだ。しかし、インスタグラム(Instagram)での反応はもっと肯定的だった。
3Dプリント以外の工程を自動化し、大量生産できるようになれば、価格は下がるだろうとシムサは言う。この技術は、多くの人から懐疑的に見られていることを彼は認めつつも、産業機械に関してはチョコレートやスナックを製造しているものと変わらないという。イタリアの食品最大手バリラ(Barilla)はすでに3Dプリントパスタを販売している。
さらに、持続可能性という観点もある。
サーモンは最も健康的な食べ物のひとつと考えられている。魚は一般的に流通に至るまでの二酸化炭素排出量が、牛肉よりも少ない。牛は大量のメタンガスを放出し、飼育には広大な土地を必要とすることから、牛肉生産は気候危機の原因として知られている。
とはいえ、国連によると世界の魚類資源の約3分の1は乱獲されている。また、漁網を主な発生源とする海洋マイクロプラスチックは、人間の体内から発見されるケースが増えているという。
最先端の冷凍技術を用いて植物由来のサーモンの切り身を独自開発し、1200万ドル(約18億円)を調達したNew School Foodsのクリストファー・ブライソン(Christopher Bryson)CEOは、「結局のところ、人々はワクワクする商品を求めている。彼らの想像力をうまく捉えなくてはならない」とInsiderに語っている。
「彼らの判断基準が健康と環境にあるとすれば、今頃豆腐しか食べていないだろう」