2013年の映画『her/世界でひとつの彼女』では、ホアキン・フェニックスが人工知能と恋に落ちた。
Warner Bros. Pictures
- 「AI(人工知能)彼女」は男性の孤独を悪化させると、大学教授のリバティ・ヴィッタート(Liberty Vittert)氏は話している。
- パンデミック以来、AIを搭載したバーチャルコンパニオンが増加している。
- データサイエンスに詳しいヴィッタート氏は、男性の中には実在する恋人よりも「完璧な」AIの恋人を選ぶ人もいるだろうと話している。
データサイエンスに詳しいワシントン大学オーリン・ビジネススクールの教授リバティ・ヴィッタート氏は年度初めに必ず、18歳の新入生が主に受講している自身の授業で、どんなソーシャルメディアのアプリを使っているか学生たちに尋ねている。
この質問は、何が若者に人気があるのか判断するのに役立つという。そして、ある男子学生から自分には「AI彼女」がいると聞いたヴィッタート氏は衝撃を受けた。
「(AI彼女がいると)彼はものすごくオープンに話してくれたので、わたしは驚きました」と同氏はInsiderに語った。
「AI彼女は少し前から存在していたと思いますが、だんだんとそれが主流になってきて、AI彼女について人は喜んで話すようになりました」
AIを搭載したバーチャルコンパニオンはパンデミック以来、増加傾向にあったものの、最近の生成AIの発展によって脚光を浴びている。
AIを搭載したデジタル・パートナーを提供する人気アプリ「レプリカ(Replika)」の人気が近年、急上昇している。このアプリのユーザー数はコロナ禍で35%増え、2022年には1000万人を超えた。この1年で複数のユーザーがデジタル・パートナーと恋に落ちた、真剣交際している、あるいは結婚したと報告している。
5月にはインフルエンサーのキャリン・マージョリー(Caryn Marjorie)さんがバーチャル・ガールフレンドを想定し、AIバージョンの自分を作ったところ、このボットと付き合うためにお金を払うという登録者が殺到した。1週間も経たないうちに有料会員数は1000人に達し、1万5000人以上がキャンセル待ちリストに名を連ねた。
ヴィッタート氏はこの現象について『AI girlfriends are ruining an entire generation of men』と題したコラムをThe Hillに寄せている。そして、次はユーザーの「全てのニーズを満たす」AI彼女が登場するだろうと述べた。
「バーチャルな彼女ではありません。ユーザーが好きなもの、ユーザーが嫌いなものをユーザーから学ぶ彼女です」とヴィッタート氏は言う。
「AI彼女に調子の悪い日や何をやってもうまくいかない日はありませんから、男性は完璧な恋愛が手に入ります。実際の恋愛に付き物の浮き沈みに対処する必要もありません」
AI彼女の本質そのものが男性が実際の恋愛よりもボットを選ぶリスクをはらんでいて、最終的に独身男性を増やし、アメリカの出生率に影響を与える可能性があるとヴィッタート氏は指摘している。
デジタル・パートナーは交友関係の一形態になり得る一方で、人々を孤立させることもあると同氏は話している。
「こうしたAI彼女が若い男性の間に見られる孤独の静かな蔓延を可能にしています」とヴィッタート氏は言い、アメリカでは独身女性よりも独身男性の割合が高いと指摘した。
「女性の方が親しい友人が多かったり、友人グループが幅広かったりします。女性はこうしたAIのライフスタイルに男性ほど心理的に取りつかれることはなさそうです」
ピュー・リサーチ・センターのデータによると、2022年の時点でアメリカでは女性の34%が独身で、男性は63%が独身だった。また、男性は女性に比べて親しい友人の数が少なく、この状況はコロナ禍でさらに悪化した。
「こうしたAI彼女の普及率はここ2、3年で急激に高まっています。進歩も早いです」とヴィッタート氏は語った。
「メールのやりとりができるAI彼女から、写真を送り合うことのできるAI彼女になっています。物理的なものと感情的なものが非常に急速に融合しているのです」