35歳で退職して、90歳まで「投資収入」だけで生活するにはいくら必要か?

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FIREを実現するにはかなりの蓄えが必要になる。

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  • 35歳で退職して90歳までに、年間10万ドル(約1480万円)の投資収入で生活するには、少なくとも522万ドル(7億7760万円)の投資が必要。
  • 年間支出を6万5000ドル(約960万円)と想定した場合でも、325万ドル(約4億8350万円)の投資額が欠かせません。
  • そこで認定ファイナンシャルプランナーのブライアン・フライ氏は、「株式80%、債券20%」という「攻撃的な」配分を提案する。

多くの人は、30代半ばにさしかかった時点で、すでに10年以上の社会人生活を送ってきたことになる。そして、それ以上働きたくないと思う人も少なくないはずだ。

FIRE(経済的自立・早期退職)がここ数年話題となっている。誰しも、いますぐ仕事を辞めて、働かずに生きて行くには、どれぐらいの額が必要なのだろうと考えたことがあるに違いない。その必要額を明らかにするために、Insiderでは認定ファイナンシャルプランナーとしてセーフ・ランディング・ファイナンシャル社(Safe Landing Financial)を立ち上げたブライアン・フライ氏に取材した。

フライ氏は、モンテカルロ法を用いて、配当金(株主に分配される現金配当)とキャピタルゲイン(債券や株式などの売買差益)および税支払後の元金をもとに、年間10万ドル(約1480万円)もしくは6万5000ドル(約960万円)の暮らしを90歳まで続けるには、退職時の課税証券口座にどれだけの額がなければならないかを計算した。

仮想の退職者にとって必要な蓄えを計算するにあたって、フライ氏は投資と税処理に関していくつかの仮説を立てた。本記事の末尾にその仮説のすべてをリストアップしておくが、簡単に言えば、フライ氏は「ライト・キャピタル(Right Capital)」というJPモルガンが投資に対する長期収益を予測するために用いているファイナンシャルプランニング・ソフトウェアを用いて試算を実施。その際、インフレ率を保守的に3%と見積もり、州税と地方税はないものと想定し、社会保障は度外視した。

加えて、当事者の投資はIRAや401(k)のような退職金口座(日本の企業DCやiDeCoのようなもの)ではなく、課税される投資口座に保管されると想定。退職金口座の場合、59歳と6カ月になる前に引き出すと罰金が科せられるからだ。

35歳で退職するのに必要な投資額

フライ氏の計算によると、35歳で退職する人は、退職後における税引き後の年収を10万ドル確保したければ、退職するその日の課税投資口座に少なくとも522万ドル(7億7760万円)を蓄えていなければならない。

退職後の年間収入目標を6万5000ドルに下げた場合でも、退職日までに325万ドル(約4億8350万円)が必要だ。

フライ氏は株式80%、債券20%の投資を推奨する。これは35歳までという年齢を考えた場合、「攻撃的な」資産配分だと言える。フライ氏は、退職者は資産計画を毎年、あるいは生活に大きな変化が起こるたびに見直すことが重要だと指摘する。

「損失を経験したとき、自分が自分の最大の敵になることがある」とフライ氏は言う。「時間や関心がない、計画を守るのが苦手、専門知識が少ないなどといった場合は、(出来高制ではなく)顧問料だけを徴収する認定ファイナンシャルプランナーに相談して、計画に沿った投資方法を教わればいいだろう」

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Alyssa Powell/Business Insider

早期退職者、特に20代や30代で会社勤めをやめた人の多くが、9時から5時までの労働生活に見切りを付けたあとも収入を得ている事実は注目に値する。

実際ところ、彼らの多くは不動産投資、ブログ活動、あるいはほかの趣味などで受動的に収入を得ているので、自分のことを退職したのではなく、むしろ経済的に自立したとみなしている。言い換えれば、毎月決まった給料がなくても生活していける人々だ。

フライ氏の計算には生活保障を通じて得た収入は考慮されていない。1960年以降に生まれたアメリカ人(2023年時点で63歳以下の人々)は、最低10年間働いたのなら、67歳になった時点で社会保障給付金を全額受け取って退職できる。

アメリカにおける個人の社会保障給付金の額は、最も高収入だった35年間の平均月収にインフレ率を加味したものだ。現在の定年退職年齢である66歳で引退した人の場合、月の最大の給付額は3627ドル(約54万円)と決められている。しかし、社会保障額は今後どう変わるか定かではないため、ファイナンシャルプランナーの多くはクライアントに対して、社会保障給付金がなくてもやっていける貯蓄および投資計画を立てるように勧めている。

今回の計算する際に用いた仮定

フライ氏は、モンテカルロ法にはふたつの限界があると言う。計算の前提が間違っていれば結果も間違いである点と、金融界の動向、市場の動きに対する投資家の反応などは計算に含まれない点だ。

以下、今回の計算で用いた仮定を列挙する。

投資

  • すべての投資を課税口座に集中させる
  • 目標収入は、月間8333ドル(約124万円)で年間10万ドル(約1480万円)、もしくは月間5417ドル(約80万円)で年間6万5000ドル(約960万円)
  • JPモルガン社の投資長期収益計算法を利用し、インフレ率は3%と控えめに設定
  • 若い投資家は年配の投資家よりもリスクに対する抵抗が少ないと想定
  • ポートフォリオの年間回転率を5%と想定
  • 資本損失の繰り越しは0ドル
  • 資産運用手数料は除外
  • 計算の開始時に全額を、含み益なしの現金として一括投資

税金

  • 州税、地方税、市税は除外
  • 単一申告者に適用される標準控除
  • 高齢投資家への社会保障給付金は無視
  • 配当金=85%が適格配当、15%が非適格配当
  • キャピタルゲイン=90%が長期のキャピタルゲイン、10%が短期のキャピタルゲイン
  • 税法=2025年のTCJA(減税・雇用法)の失効、つまり大部分の個人所得税の引き下げが2025年に終了することも含め、TCJAに関係する更新規定のすべてを反映・本記事は2019年8月に初めて公開された。

※本記事は取材対象者の知識と経験に基づいて投資の選定ポイントをまとめたものですが、事例として取り上げたいかなる金融商品の売買をも勧めるものではありません。本記事に記載した情報や意見によって読者に発生した損害や損失については、筆者、発行媒体は一切責任を負いません。投資における最終決定はご自身の判断で行ってください。

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