YouTubeメディア企業を立ち上げたオリバー・ギルピン氏。
Thales Menezes
オリバー・ギルピン(Oliver Gilpin)氏は、一度も自分で動画撮影をすることなく、YouTube(ユーチューブ)メディア企業を作り上げたと誇らしげに話す。
基本的に自分が顔を出してメディアを作っている他の多くのユーチューバーたちとは異なり、ギルピン氏はアニメーションコンテンツを使用して教育メディアブランド「テロス(Telos)」を作った。
「リチャード・ブランソン(Richard Branson)のやり方を参考にしました」とギルピン氏はInsiderに話す。
「彼は自分で経営することなく会社を立ち上げています。彼には、その会社を経営してくれる最高経営責任者やマネージング・ディレクターがいるのです。今私がYouTubeチャンネルを使ってやっていることもそれと同じです」
彼の会社は4つのコンテンツブランドを持ち、さまざまな種類のトピックを扱っている。短い会話形式の動画では、アニメのキャラクターたちを使って、以下のような複雑なテーマについて説明している。
- MrSpherical:歴史と地政学、登録者数154万人
- SolarBalls:天文学と宇宙、登録者数92万人
- HumanBuddy:人間生物学、登録者数10万2000人
- WorkerBoi:仕事の文化や労働、登録者数8万人
それぞれのチャンネルには異なる言語ごとのバージョンが最大で12言語まで存在しており、スペイン語、ヒンディー語、フランス語、ロシア語、ウクライナ語、イタリア語、日本語などがある。全部合わせると35のチャンネルがあり、登録者の合計数は800万人以上になる。
彼の会社はどのように運営されているか
ギルピン氏は2021年に初めて動画チャンネルを作り始めた。彼が急速にその規模を拡大することができたのは、単独で外国語を使ってチャンネルを管理できる現地ディレクターを雇ったからだ。
ギルピン氏は英語の動画チャンネルを運営しており、英語の動画を作成するために制作チームと作業している。その後、世界でチャンネルを運営するために、たいていの場合は1言語に1人ずつ人を雇って、翻訳、動画の音声、字幕、そして日々のチャンネルの監視を彼らの言語で任せている。
ギルピン氏の目標は、30の異なるメディアブランドを持つまでに規模を拡大すること。そして、そのメディアブランドでさまざまなトピックを扱って、それぞれのブランドの多言語バージョンを作ることだ。まずは毎月1つずつ新しいブランドを開始していく予定だ。
社名のテロスは、「終わり、実現、目標」を意味する古代ギリシャ語の言葉に由来する。彼は自分の使命が視聴者を教育することであることから、この社名を選んだ。
「目標は人々に新しいトピックに対して関心を持ってもらうことです。また、視聴者が動画を見終わった後に、批判的に考える力を身につけたり、力学や宇宙や地政学についての理解を深めてもらうことです。
アニメーションは比喩的な方法で説明ができるので、優れたフォーマットだと思います」
またギルピン氏は、政治的アジェンダをいっさい含めずにそれぞれのトピックにアプローチし、一般的なトピックを最も凝縮した形で取り扱うように心がけていると話す。テロスのウェブサイトでも説明しているように、彼はこのようなやり方を「ハイライター」と呼んでいる。彼はこれを、「動画のペース配分に考慮しながら、シンプルかつ効果的に要点を簡潔に示すことができる(あるいは視覚的に素早く表現することができる)方法」だと考えている。
YouTubeチャンネルに注力するようになる以前、ギルピン氏はNowCreativesという制作会社を経営していた。この夏、彼はNowCreativesから退いてテロスに専念することを決意した。彼はまだNowCreativesのオーナーだが、管理はマネージング・ディレクターに任せている。
MrSpherical
収支の内訳
ギルピン氏は、2021年8月に立ち上げたチャンネル「MrSpherical」から、直近2023年3月に立ち上げた「HumanBuddy」に至るまで、合わせて35のチャンネルがどれだけの収益を上げてきたかを明かしてくれた。
- 収入:81万2650ドル(約1億2200万円、1ドル=150円換算)
- 支出:42万4000ドル(約6360万円)
- 利益:38万9000ドル(約5830万円)
MrSphericalは約17万1500ドル(約2570万円)、SolarBallsは約26万1000ドル(約3900万円)の利益をあげた。しかし2つの新しいチャンネルは赤字であり、それぞれ2万7000ドル(約400万円)と1万6000ドル(約240万円)の損失を出している。ギルピン氏は各チャンネルで1カ月に2万ドル(約300万円)の利益をあげることを目標としている。
彼は、この2つの新しいチャンネルもすぐに収益を出す自信があると話す。しかし、成功しているチャンネルの裏にはそれぞれ少なくとも1つのチャンネルの失敗があると付け加えた。
すべてのチャンネルの収益は、YouTubeの広告収入分配プログラムであるAdSenseから得られる額と、ブランドのパートナシップから得られる額で、内訳はほぼ半々だ。
「どのスポンサーと提携するか、本当は熟慮したうえで決めたいんです。デジタルアートやNFTなどへの投資を勧める組織と組むこともできましたが、気乗りしませんでした。しかしYouTubeチャンネルはお金がかかるので、私が望むほどには選り好みできないのです」
支出は主に、吹き替え、アニメーター、コンテンツ戦略、動画編集者などの人件費だ。
ギルピン氏は会社の収益の大部分を新しいチャンネルに再投資することを重要視している。
アニメーションには時間と資金の投資が必要だ。しかしギルピン氏はリモートワークしやすいアプローチを採用し、賃金や生活費の安い地域で人材を雇用することで、コストを軽減しつつ利益を上げている。
「我々は意欲のある人たちを選んで雇っています。そういう人は仕事に対して情熱を持っており、一人で仕事をすることができます」
彼はまた全員を請負業者として雇い、AdSenseやパートナシップからの利益を分配するなどしてボーナスを支給している。これはチャンネルの成功に向けて、彼らの仕事への意欲を高めるためだ。
「チャンネルで利益が出れば、彼らにも収入が入ります。チャンネルで利益が出なければ、彼らも収入を失います。重要なのは常に収益を分配すること。そうすれば彼らはチャンネルを大切にしてくれます」