30代でもFIREは実現できるが、要する努力は並大抵ではない
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- FIREとは「経済的自立・早期退職」を意味し、20代、30代、あるいは40代の人々に職業生活から引退する手引きをする運動として知られている。
- 非常に早い段階で引退するには、生活水準を望むものよりも下げ、極めてわずかな予算で生活することが強いられる。
- FIREに似た「スローFIRE」を採用することで、そこまで多くの犠牲を差し出すことなく、従来の退職年齢になる前に仕事から引退することが可能だ。
たとえ仕事が好きだとしても、ほとんどの人は早期退職という道を選べる状況を好ましく思うだろう。私の場合、まったく仕事をしないとなるととんでもなく退屈するだろうと思うが、もしその気になれば、65歳になるずっと前に仕事量を減らしたり、引退したりできる状況をつくっておきたいとも思う。これが、私がFIREムーブメントに興味をもった理由だ。
しかし、私の生活スタイルにとっては、そして私の貯蓄と投資目標にとっても、FIREはあまりに過激だ。もし早期退職に興味があるなら、ここで紹介されているFIREのコンセプトを参考にして、通常の退職年齢よりもずっと前に経済的自立を勝ち取ろう。
FIREとは
FIREは「経済的自立・早期退職(Financial Independence/Retire Early)」の略で、収入の大部分を貯金と投資に回すために、生活費を極力切り詰めることを提唱する運動のことだ。生活費を低く抑えることで、有名な個人資産ブロガーのなかには30代で、それどころか20代での退職に成功した人もいる。
たとえば、ミスター・マネー・マスタッシュの名で知られるブロガーのピーター・アデニー氏は30代で退職し、2019年の生活費は旅行やキッチン改修費も含めて2万1470ドル(約320万円)だったと公表した。私の場合、家族の健康保険と住宅ローンだけでアデニー氏の2019年の生活費を上回る。彼のような生活は、私には不可能なのは明らかだ。しかしそれは、私にはアデニーやほかのFIREブロガーを参考にしたところで、家族にとって有益な予算・投資計画を立てることができないという意味ではない。
FIREをスローFIREに改造する
確かに、収入の半分以上を貯蓄できる人々には感心するが、自分ひとりの収入で家族全員の健康保険とカリフォルニアの住宅ローンを支払わなければならない私には、それほど多くの額を貯蓄に回すのは現実的に不可能だ。私たちの場合、貯蓄と投資に回せるのは家計収入の20%から25%だろう。
家族の毎月の平均支出から、フルタイムの自営業を辞めても十分な収入を得られるだけの投資額を算出することが可能だ。自分にとっての「FIRE」を達成するために必要な、株式市場と不動産の投資配分も目安が付く。
たとえば、ある家計の年収が6万ドル(約890万円)で、そのうち生活に4万ドル(約590万円)が必要だと想定してみよう。この4万ドルを投資収入で得たいなら、毎月に換算して3333ドル(約49万円)を投資から儲ける必要がある。
毎年5%を引き出すなら資金を使い果たすことなく安全だという前提に立てば、今の収入を置き換えるには80万ドル(約1億1980円)を貯蓄する必要がある。この額があれば、仮に仕事を辞めても、投資だけで生きていけるかもしれない。
しかし、この額に達成してもすぐに仕事を辞めるのはあまり賢くない選択だろう。長期的に見れば、S&P 500は毎年平均して10%の利益を生むのではあるが、景気はいい年もあれば悪い年もある。それに、実際に退職の準備が整ったときには、収入の一部を、利益こそ年間10%には遠くおよばないが、代わりにリスクが少ない確定利付投資へと誘導することになるだろう。
生活スタイルのゴールも、金銭的なニーズも人によって違うのだから、誰もが同じ額の貯蓄を必要としているわけではない。しかしながら、今の貯蓄計画を「スローFIRE」アプローチにアップデートするつもりなら、FIRE運動の重要なコンセプトを参考にすればいい。
誰もが使えるFIREコンセプト
支出は少なく:ほとんどの人は極端な倹約生活には興味がないだろうが、無駄遣いをなくし、よく考えてお金を使うことで、より多くの額を貯蓄に回し、退職時期を早めることができる。
貯蓄を増やす:たとえば、今のところ収入の10%を貯蓄していて、来月からはそれを30%に増やすつもりだったのに、実際には22%しか貯金できなかったとしても、それは平均的な人々よりも、そして以前の自分よりも多く貯金していることになる。貯金と投資が増えれば増えるほど、経済的自立に近づくことができる。
自分の数字を知る:FIREを身につけた人々と家計は、気ままにお金を使いながら退職後の生活が計画どおりにうまくいくことを望むだけでは満足できない。予算を守り、財政状況を綿密に追跡するようになるのが普通だ。
長期的に投資する:人気急上昇中の株式やオプション取引戦略で一獲千金を狙うのは楽しいだろうが、お金のためには良くないかもしれない。アクティブファンドは株式市場ほど多くの利益を生まない。短期的に大きく儲けようとして悪戦苦闘するのではなく、長期的な投資目標をしっかりと見据えて不要なリスクは避けるように心がけよう。
思い切った退職はしない:リスクのない投資など存在しない。FIRE投資家は、自分の資金が長年にわたって存続する必要があることを意識する。早期退職を目指す人の多くは、市場の動きに追従する手数料の低いインデックスファンドに資金を投じる。これは自分で資金を運用するほとんどの投資家にとって賢い戦略だ。
自分で退職までのロードマップを描く
もっとゴルフや釣りがしたい? ボランティア活動に費やす時間を増やしたい? あるいは仕事のペースを落としてパートタイムの仕事に切り替え、趣味に費やす時間を少し増やしたいだけかもしれない。経済的に自立できれば、どれも可能だ。
私はもう35歳なので、FIRE実践者の数人はすでに私よりも若くして経済的自立を成し遂げたことになる。しかし、私は自分の仕事にも、生活にも、収入にも満足している。ただし、65歳まで働きたいとは思わないので、早期退職に近づくためにFIRE戦略の一部を活用しているところだ。その際、極端な倹約生活を送るつもりはない。