「プシケ」の想像図。
NASA/JPL-Caltech/ASU
- NASAは、金属を豊富に含むとされる小惑星「プシケ(16 Psyche)」を調査するために、無人探査機「サイキ」を打ち上げた。
- プシケに含まれる金属は、地球上では1000京ドル(約14垓円)の価値があると考えられる。
- しかしNASAの目的は、小惑星の資源を採掘することではない。
アメリカ航空宇宙局(NASA)の探査機が太陽系の小惑星探査に出発した。その小惑星の経済価値は、世界経済全体よりも大きいが、それが探査の理由ではない。
2023年10月13日、「プシケ(16 Psyche)」と呼ばれるジャガイモのような形をした小惑星を探査するため、無人探査機「サイキ(Psyche。プシケの英語読み)」が打ち上げられた。
NASAによると、この金属を多く含む岩石の塊は、太陽から3億7800万kmから5億km離れた距離を公転している。これは地球が太陽を公転する距離の約3倍に相当する。
プシケは1852年にイタリアの天文学者アンニーバレ・デ・ガスパリス(Annibale de Gasparis)によって発見された16番目の小惑星であることから「16プシケ」とも呼ばれる。
ギリシャ神話の「心の女神」にちなんで名づけられたこの小惑星は、火星と木星の間に位置している。
まだ誰も行ったことのないところへ
NASAはこれまで、プシケのような小惑星を探査したことがない。プシケが他の小惑星と異なり、非常に独特なのは、その組成にある。ほとんどが岩石と金属でできており、金属が約30%から60%を占めると考えられている。
プシケの研究者がSpace.comに語ったところによると、この小惑星は鉄やニッケルのような金属を含んでいるという説もあるという。
プシケに含まれている金属が地球で発見されたとすれば、1000京ドル(約14垓円)以上の価値があるとされ、これは世界経済全体よりも大きいと、「サイキミッション」の主任科学者であるリンディ・エルキンス-タントン(Lindy Elkins-Tanton)はSpace.comに語っている。
しかし、NASAはその経済的価値のためにプシケに行くわけではない。そもそも小惑星を採掘する技術さえない。
NASAがプシケを探査する理由
プシケの起源はまだ分かっていない。岩石惑星になり損ねた微惑星のコアのかけらかもしれない。あるいは、鉄分を多く含む微惑星のコアなのかもしれない。
もしかしたら、太陽系のどこかからやってきた別種の天体が、太陽系の形成過程で他の小惑星などと激しく衝突したことで、外層が剥がれ落ちたものなのかもしれない。
NASAの科学者たちは、プシケについてもっと詳しく知りたがっている。なぜなら、プシケから得られる知見は、地球のコアがどのように形成され、成長したかといったことを解明する手がかりになるかもしれないからだ。
プシケがどのような姿をしているのか、ヒントを得るためにCGで3Dモデルが作成された。それによると2つのクレーターがあるようだが、探査機サイキがプシケに接近するまではっきりしたことは分からない。プシケへの接近は2029年7月だと予測されている。
その後、探査機は2年間かけてプシケの軌道を周りながら写真を撮影し、地表面をマッピングし、組成に関するデータを収集する。
この探査は「地球などの惑星の形成につながった物質の衝突と蓄積の激しい歴史を覗き見る、唯一無二の『窓』になる」可能性があると、NASAは考えている。