Insider編集部は、マイクロソフト(Microsoft)の給与報酬ガイドラインを独自に確認した。
Charles Guerin/ABACAPRESS.COM
Insider編集部が独自ルートで確認したマイクロソフト(Microsoft)の給与ガイドラインには、基本給、サイン(入社時)ボーナス、年次株式報酬のレンジ(上下幅)が記載されており、ジョブレベルに応じて決まる同社の報酬体系を理解する手がかりを与えてくれる。
内情に詳しい関係者によれば、このガイドラインは2023年上半期に社内で共有されたもので、人事担当者が採用時に提示する給与報酬額を決定する際の内部基準として使われているという。
同ガイドラインの適用対象となる範囲は不明で、特定の役職もしくは部門に限定適用される基準として使われている可能性もあるが、いずれにしてもマイクロソフトのジョブレベルに対する認識の一端をうかがい知ることができる。
同社の給与は担当分野や勤務地によって異なり、全社的に部門横断で適用されるジョブレベル別支給基準というものは存在しない。
サンフランシスコおよびニューヨーク勤務の従業員の給与が高いのは、生活費が高いエリアに居住して通勤する必要があるからだし、そうした勤務地によって生じる差異とは別に、例えばエンジニアリング部門の従業員のように、他部門と比較して高水準の給与が設定されている職務や部門もある。
Insider編集部が確認したガイドラインの中で最も高額な給与(提示)パッケージは、基本給36万1500ドル、サインボーナス120万ドル、年次株式報酬約100万ドル。その場合、入社初年度に得られる報酬総額は最大256.15万ドル(約3億8000万円)と想定される。
逆に、最も低額なパッケージは基本給4万2500ドル、サインボーナスなし、年次株式報酬の保証なし。初年度の報酬総額は最低の場合、4.25万ドル(約630万円)となる。
マイクロソフトは(担当職務の難易度や社内における地位などの)職位を示すジョブレベル制を採用しており、今回確認したガイドラインに従う限り、レベルが上位になるほど給与待遇も向上する仕組みになっている。
関係者の情報によれば、ジョブレベルも担当分野や勤務地によって異なるものの、一般的にレベル63以上は「シニア(Senior)」、レベル65以上は「プリンシパル(Principal)」、レベル68以上は「パートナー(Patner)」が肩書きに付く職位となる。
昇格しても(ガイドラインに記載された最高位である)レベル70に達しない職務も存在するが、例えばエンジニアリング部門の場合、レベル70の従業員は「卓越したエンジニア(distinguished engineer)」の肩書きが付く。
エンジニアリング部門はさらにその上にレベル80まである。肩書きは「テクニカルフェロー」となり、普通はマイクロソフトの最高幹部と位置付けられる。
マイクロソフトはテック業界にレイオフの波が押し寄せる直前の2022年、人材獲得競争の最中で競合他社に比べて報酬が低すぎるとの不満が高まったことを受け、優秀な従業員の流出を食い止める狙いから、予算を倍増させてレベル67以下(つまりパートナー以上を除く)の従業員の年次株式報酬レンジを最低25%引き上げた。
しかしそのちょうど1年後、Insiderが過去記事(5月26日付、日本語版)で報じたように、同社は2023年の(基本給)昇給を凍結し、賞与と株式報酬に充てる原資を圧縮して過去の平均水準に戻す方針を明らかにした。
そうした経営陣の判断による従業員の士気低下は顕著だ。
7月時点の社内調査の結果によれば、「マイクロソフトの職場文化に前向きな変化が見られる」と肯定的に回答した従業員の割合(毎日測定の月平均)は、1月の62%から7月には40%にまで低下。
「自分が所属する組織のリーダーシップの有効性を信頼している」と肯定的に回答したのは、1月の75%から7月には59%に低下している。
マイクロソフトにコメントを求めたが得られなかった。
以下では、Insider編集部が確認したジョブレベル別の給与報酬ガイドラインの内容を紹介しよう。
[レベル70]
基本給:(下限)23万1700ドル(上限)36万1500ドル
サインボーナス:(基本)31万ドル(要承認上限)120万ドル
年次株式報酬:(下限)0ドル(上限)94万5000ドル
[レベル69]
基本給:(下限)20万2400ドル(上限)31万6000ドル
サインボーナス:(基本)23万5000ドル(要承認上限)110万ドル
年次株式報酬:(下限)0ドル(上限)75万ドル
[レベル68]
基本給:(下限)18万6200ドル(上限)29万1000ドル
サインボーナス:(基本)17万7000ドル(要承認上限)100万ドル
年次株式報酬:(下限)0ドル(上限)49万600ドル
[レベル67]
基本給:(下限)17万1600ドル(上限)25万8200ドル
サインボーナス:(基本)16万8000ドル(要承認上限)70万ドル
年次株式報酬:(下限)0ドル(上限)33万6000ドル
[レベル66]
基本給:(下限)15万7300ドル(上限)23万6300ドル
サインボーナス:(基本)7万5000ドル(要承認上限)60万ドル
年次株式報酬:(下限)0ドル(上限)16万ドル
[レベル65]
基本給:(下限)14万4600ドル(上限)21万6600ドル
サインボーナス:(基本)3万6000ドル(要承認上限)30万ドル
年次株式報酬:(下限)0ドル(上限)9万ドル
[レベル64]
基本給:(下限)12万5000ドル(上限)18万7700ドル
サインボーナス:(基本)2万4000ドル(要承認上限)25万ドル
年次株式報酬:(下限)0ドル(上限)6万ドル
[レベル63]
基本給:(下限)11万3900ドル(上限)17万1500ドル
サインボーナス:(基本)1万7000ドル(要承認上限)20万ドル
年次株式報酬:(下限)0ドル(上限)4万4000ドル
[レベル62]
基本給:(下限)10万3700ドル(上限)15万6400ドル
サインボーナス:(基本)1万1000ドル(要承認上限)12万5000ドル
年次株式報酬:(下限)0ドル(上限)3万2000ドル
[レベル61]
基本給:(下限)9万2600ドル(上限)13万8100ドル
サインボーナス:(基本)6500ドル(要承認上限)7万5000ドル
年次株式報酬:(下限)0ドル(上限)2万4000ドル
[レベル60]
基本給:(下限)8万3500ドル(上限)12万5000ドル
サインボーナス:(基本)4500ドル(要承認上限)5万ドル
年次株式報酬:(下限)0ドル(上限)1万6000ドル
[レベル59]
基本給:(下限)7万4400ドル(上限)11万800ドル
サインボーナス:(基本)3000ドル(要承認上限)3万ドル
年次株式報酬:(下限)0ドル(上限)1万2000ドル
[レベル58]
基本給:(下限)7万300ドル(上限)9万2600ドル
サインボーナス:(基本)2500ドル(要承認上限)2万ドル
年次株式報酬:スキルや経験を考慮して決定
[レベル57]
基本給:(下限)6万3800ドル(上限)8万3000ドル
サインボーナス:(基本)1500ドル(要承認上限)1万ドル
年次株式報酬:スキルや経験を考慮して決定
[レベル56]
基本給:(下限)6万700ドル(上限)7万7900ドル
サインボーナス:(基本)1500ドル(要承認上限)1万ドル
年次株式報酬:スキルや経験を考慮して決定
[レベル55]
基本給:(下限)5万5200ドル(上限)7万1300ドル
サインボーナス:なし
年次株式報酬:スキルや経験を考慮して決定
[レベル54]
基本給:(下限)5万1600ドル(上限)6万7000ドル
サインボーナス:なし
年次株式報酬:スキルや経験を考慮して決定
[レベル53]
基本給:(下限)4万6600ドル(上限)5万9700ドル
サインボーナス:なし
年次株式報酬:スキルや経験を考慮して決定
[レベル52]
基本給:(下限)4万2500ドル(上限)5万4600ドル
サインボーナス:なし
年次株式報酬:スキルや経験を考慮して決定