宇宙空間を漂う小惑星のイメージ。
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- 小惑星には、これまで知られていなかった元素が含まれているかもしれない。
- 小惑星「33ポリヒムニア」は、これまで見つかった中で最も密度の高い元素よりも、はるかに高密度の元素を含んでいるようだ。
- 自然界に存在する最も密度の高い元素であるオスミウムは、原子核に76個の陽子がある。33ポリヒムニアに存在する元素の原子核には、その2倍以上の陽子があると考えられている。
太陽系の小惑星帯に分布する小惑星には、地球で発見されたことのない非常に密度の高い元素を含んでいる可能性があると、2023年9月15日付でEuropean Physical Journal Plusに掲載された論文によって示唆されている。
地球上の既知の元素は、すべて周期表に記されている。現在発見されている元素は118種類あり、原子番号(原子核に含まれる陽子の数)で整理されている。一般的に、原子番号が大きくなるほど元素の密度も高くなる。
科学者たちは長年にわたって、原子核に多くの陽子を詰め込んで新しい元素を作り出してきた。しかし最終的に、1つの原子核にどれだけの陽子を詰め込むことができるのか、まだ分かっていない。
しかし、地球外にはこれまで人間が観測したことのないほど高密度の元素が存在すると考えられている。例えば、ある研究によると小惑星33ポリヒムニア(Polyhymnia)に含まれる元素の密度は1立方センチ当たり75.28gだと推計された。だがあまりにも密度が高過ぎて、現実的ではないとの指摘もあった。
そこで、アリゾナ大学の研究者たちは「トマス‐フェルミモデル」に基づき、小惑星33ポリヒムニアに含まれる元素の密度を推計した。その結果、1立方センチ当たり36.0gから68.4gという結果が得られた。
「想定されていた数値に近い結果となった」とプレスリリースに記されている。
地球上で最も高密度の元素でも比較にならない
小惑星33ポリヒムニアは、コンパクト超高密度物体(compact ultradense object、CUDO)である可能性が高い。このような物体の密度は、地球上のあらゆるものの密度をはるかに超えていることから、未だかつて発見されたことのない元素を含んでいると考えられている。
地球に存在する最も高密度の天然元素であるオスミウムは、原子核に76個の陽子が詰まっている。今回発表された研究での推計が正しければ、ポリヒムニアなどのCUDOを構成する物質の元素は、164個もの陽子が詰まった原子核を持っていることになる。
この研究論文の共同執筆者であるヤン・ラフェルスキー(Jan Rafelski)はプレスリリースでこう述べている。
「これらの元素のいくつかは太陽系内で得られるほど安定しているかもしれないと考えると、とてもエキサイティングだ」