サバンナの野生生物が最も恐れるのは、ライオンではなく人間だった

ライオンのうなり声よりも人間の声の方が怖い?

ライオンのうなり声よりも人間の声の方が怖い?

[left] David De Lossy/Getty Images; [right] Marcos del Mazo/Contributor/Getty Images

  • 最新の研究で、サバンナの哺乳類はライオンのうなり声よりも人間の声の方を恐れることが明らかになった。
  • 科学者たちは、人間、ライオン、鳥の声を隠しスピーカーから流して動物たちを観察し、このことを発見した。
  • 「気が滅入る」ような発見だが、密猟から動物たちを守ることに役立つ可能性がある。

サバンナで最も恐ろしいのは、百獣の王と言われるライオンではない。人間だ。

2023年10月5日付でCurrent Biologyに掲載された研究論文によると、南アフリカに生息する哺乳類は、ライオンのうなり声を聞いたときよりも人間の声を聞いたときの方が、水場から離れる確率が2倍多かった。

この研究によって、人間がサバンナの「最強プレデター」であることが明らかになったと、ウェスタンオンタリオ大学で「恐れの生態学」を研究する生物学者で、この研究を主導したリアナ・ザネット(Liana Zanette)はInsiderに語っている。

研究チームは、生態系に点在するさまざまな水場に隠しカメラとスピーカーを設置した。そして、人間、ライオン、犬、銃声、鳥の鳴き声を流し、動物たちの反応を記録した。

4000回以上この実験を行った結果、人間の声に対する動物の反応が、他の危険を知らせる音よりも「かなり驚くべきものだった。私自身、未だにぞっとする」とザネットは言う。

以下の動画では、キリン、イボイノシシ、ヒョウなど、サファリで人気の動物たちが、録音された人間の声を聞くと水場から逃げ出す様子が捉えられている。

恐れの環境コスト

「恐れ」の感情は、動物が捕食者からいつ逃げればいいのかを判断するのに役立つが、同時にそれに伴うコストが発生するとザネットは説明する。

近くにいる捕食者を恐れる動物は、食べる量が減り、逃げる回数が増え、繁殖が困難になる。そのため、恐れによって個体数が全体的に減少する可能性があるという。

この分野の古典的な研究では、ライオンなどの捕食者を頂点として、この現象を考察していた。しかし、世界的に見ると捕食動物よりも人間の方が獲物を殺す割合がはるかに高いため、人間を考慮に入れる必要があることに科学者たちは気が付いた。

そうなると、獲物となる動物は他のどの動物よりも人間を恐れるという仮説が立てられる。これまでにカリフォルニアのクーガーやイギリスのアナグマの研究によって、この仮説が支持されてきた。

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