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- 今は、高齢世代のアメリカ人に対してよく提案されてきた投資戦略を用いるのにうってつけのときだ。
- 国債など、昔ながらの「安全な」投資の金利が高くなっている。
- そうした金利は急上昇してきたが、横ばい、もしくは下降に転じる兆しもある。
75兆ドル(約1京1242兆円)の貯蓄を抱えるベビーブーマー(1946年から1964年頃に生まれた世代)は、不振のアメリカ経済において「最後に笑う者」になりつつある。そして、それよりも若い世代の、余剰資金がある人にとって、今はまさにベビーブーマーの伝統的な投資戦略を利用すべきときだ。
現在の高金利は、家や車を買いたい若者や、クレジットカードを使う若者にとっては最悪だが、上の世代にとっては好機になっている。これは、そうした上の世代の多くがおこなう投資の種類が、若い世代とは異なるからだ。
一般に、人は年をとるにつれて、リスクは大きいが利益を得られる可能性も大きい株式市場などへの投資を減らし、かわりに、CD(譲渡性預金)や財務省長期証券といった、より安全な資産を購入するようにアドバイスされる。
「より安全な」投資では、リターンが小さくなるケースが多いが、米国債の利回りは最近、2007年以来の高水準に達した。つまり、過去であれば安全な投資をするために高リターンを捨てていたはずの高齢のアメリカ人は現在、その両方を手に入れられるということだ。
バンクレート(Bankrate)による2022年の調査では、投資手段として債券に関心をもつ傾向は、あいかわらず高齢世代のほうが強いが、その差は小さくなりつつあることがわかっている。
アメリカ経済研究所のエコノミスト、トーマス・ホーガン(Thomas Hogan)は先ごろ、金利におけるこの利点を指摘し、それがどのように役立っているかを説明した。
「何十年ものあいだ、退職者などが、債券のような安全な長期投資に金を使いたくても、低金利がそれを難しくしていた」とホーガンは言う。
「米国債の金利は現在、ここ10年あまりで最高水準になっており、貯蓄のための安全で安定した投資先を、倹約家たちに提供している」
記者会見で話すジェローム・パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長。
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連邦準備制度理事会(FRB)は9月に金利を据え置いたが、その後、2023年中にふたたび利上げに踏み切るかどうかは議論の的になっている。しかし現状は、「より高く、より長く(higher-for-longer)」の路線を進んでいる可能性が高く、2024年に入ってもしばらくは高い金利が維持されるであろうことは、ほとんどの専門家が同意するところだ。
LPLフィナンシャルは、債券利回りも「より高く、より長く」を維持すると予想しているものの、同社の予測では、金利はすでに横ばいになっていることが示唆されている。現在の10年国債利回りは4.7%だが、2023年末の利回りは4.25~4.75%になる、と同社は予測している。
債券利回りはまもなく下降する兆し
国債利回りが横ばいになっているのなら、まさに今が買いどきだ。というのも、遠からず下降に転じる可能性があるからだ。
ネッド・デイビス・リサーチ(Ned Davis Research:NDR)のチーフ・グローバル投資ストラテジスト、ティム・ヘイズ(Tim Hayes)が率いるストラテジストたちは、最近の短信の中で、イスラエルでの戦争勃発以降、今や株式市場よりも債券で悲観主義が濃くなっていると述べている。
「中東での紛争に反応した、債券価格の反発は、市場心理の反転が進行している兆しかもしれない。利回りが低い方へ、株価が高い方へと向かっている」と同社ストラテジストらは述べている。
その傾向が続けば、株式市場の回復につながる可能性がある。つまり投資家たちが、債券利回りはもう上昇しない、と考えていることを示す可能性がある。
当然のことだが、貯蓄できるだけの余裕を、現在の誰もが持っているわけではない。
クレジットカードによる負債が記録的な水準に達し、学生ローンの返済も再開されたなかで、パンデミック時代の貯蓄は干上がりつつある。我々は、遅れてきた「高金利の影響」を目の当たりにしようとしている。
連邦最高裁判所前で学生の負債軽減を訴える活動家たち。
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だが、アメリカにとっては良い面もある。というのも、現在の高金利を利用するべく貯蓄を増やし始める人が増えたら、支出の減少と、潜在的な物価下降により、経済が減速しかねないからだ。米ダラス地区連銀のローリー・ローガン総裁は先ごろ、FRBが再度の利上げに踏み切るべきか否かを論じている際に、この点を強調した。
「ここ数カ月で、金融情勢は著しく引き締められてきた」とローガンは述べた。
「だが、重要なのは引き締めの理由だ。高いタームプレミアム(期間に伴う上乗せ金利)により、長期金利が高い状態にとどまれば、フェデラル・ファンド・レートを引き上げる必要性は小さくなるかもしれない。しかし、長期金利上昇の背景に経済の強さがあるかぎりにおいては、連邦公開市場委員会(FOMC)はもっと引き上げる必要があるかもしれない」