アマゾン(Amazon)が不倶戴天(ふぐたいてん)のライバルであるマイクロソフト(Microsoft)からクラウド型サブスクサービスを巨額購入することで合意。関係者の間に衝撃が走っている。
Nikolas Kokovlis via Reuters Connect
マイクロソフト(Microsoft)のクラウド型生産性ツール「Microsoft 365」の法人顧客リストに、想定外の巨大テクノロジー企業の名前が新たに追加された。
Insiderが独自ルートで確認した内部文書によれば、アマゾン(Amazon)はMicrosoft 365を100万シート(ライセンス数を示す単位)以上購入し、5年総額10億ドル(1490億円)超を支払うことでマイクロソフトと合意した模様だ。
契約したライセンスは、アマゾンのバックオフィス機能を担うコーポレート部門とフロントライン(実務担当)の従業員の両方が使用するという。
内情に詳しい関係者はこの巨額契約について、「激しい競争を繰り広げてきた両社の競合関係をビジネスパートナーとしての協力関係へと一変させることになる」と評価する。
アマゾンは現在、マイクロソフトのOffice製品をオンプレミス版で購入、ローカル環境で使用しているが、今回の契約締結により、クラウド型のMicrosoft 365に全面移行する模様だ。
アマゾンは11月上旬にも新たなシステムへの移行に着手する予定。これはマイクロソフトがAI(人工知能)搭載の仕事効率化機能「Microsoft 365 Copilot」を法人顧客向けに提供開始(11月1日予定)する時期と重なる。
匿名の関係者によれば、アマゾンのMicrosoft 365クラウド環境への移行は2024年初頭に完了する計画という。
こうした巨大なディールを成立させるためには、マイクロソフト側の事前の大規模かつ綿密な計画とクラウドリソースの割り当てが必須だが、同じ関係者によると、Microsoft 365部門およびMicrosoft Security部門内の担当チームがすでにこの新たな需要に対応したスケールアップを進めているという。
上記のような動きはアマゾンにとっては急進的と言えるくらいの展開で、もちろんマイクロソフトにとっては大きな成功を意味する。
両社はクラウドサービスや生成AIの開発・活用など、多くの事業分野で不倶戴天(ふぐたいてん)とも言える競合関係にあり、今回ほどの規模感で協力することも、互いに何らかのサービスを提供し合うことも滅多にない。
アマゾン経営陣に近い人物の証言によれば、同社がこれまでオンプレミスのOffice製品を使い続け、Microsoft 365に手を出さなかったのは、競合他社のクラウド上に何であれ自社データを保管するのを回避したかったからだという。
アマゾン側にも、ただ競合企業からサブスク製品を購入するだけにとどまらないメリットがある。それは自社開発した「ワークドックス(WorkDocs)」や「チャイム(Chime)」のような生産性ツールの代用品を得られることだ。
同社はこれまでそうしたツールを法人顧客向けに提供しようと取り組んできたものの、総じて目立った成果を得られていない。
マイクロソフトとアマゾンにコメントを求めたが、本記事公開までに対応はなかった。