アマゾン本社近くの広場に、アマゾンが各国で活用するマイクロモビリティーが集結した。
撮影:小林優多郎
アマゾンは10月17〜18日(現地時間)、同社の物流に関する報道関係者向けイベント「Delivering the Future」を開催している。
1日目はアマゾン本社に隣接した同社の植物園「The Spheres」周辺で、日本を含む各国で運用する小型の乗り物……いわゆるマイクロモビリティーが公表された。
各国のマイクロモビリティーの特徴やアマゾンが自社や他社との協業によって独自の運輸手段の開発に取り組む理由を解説しよう。
日本のラストワンマイルを担うリヤカー付き電動自転車
日本で使われる「リヤカー付き電動アシスト自転車」。
撮影:小林優多郎
まず、日本向けだが既報の通り「リヤカー付き電動アシスト自転車」の運用を正式発表した。
アマゾンの電動アシスト自転車は、すでに国内24都道府県で数百台規模で運用を開始しており、今後対応エリアを拡大して、年間数千万個の商品を配達する規模に拡大予定だ。
リヤカーと電動自転車を組み合わせた配送は既にヤマト運輸や佐川急便なども始めている。いずれも街中などの配達拠点から送り先まで、短距離で荷物を届けるためのソリューションだ。
今回、アマゾンが発表したリヤカー付き電動アシスト自転車も、注文者に届く直前の拠点である「デリバリーステーション(DS)」から、同社が契約した地域の配送業者(デリバリーサービスプロバイダー)が届けるための乗り物になっている。
リヤカー付き電動アシスト自転車の詳細はあまり公開されていないが、展示されていた実機は東京都で業務用自転車などを販売するシゲオー製のものだった。
展示されていたのは、シゲオー製の業務用電動自転車だった。
撮影:小林優多郎
リヤカー部分は4つの大きなかごに区分けされており、ドライバーはDSで荷物が入ったカゴをリヤカーに載せて配送する。アマゾンによると1度に運べる荷物の量は約50個とのことだが、荷物の大きさなどで前後する。
配達するドライバーはDSで仕分けされたカゴを4つ、自転車に積み込む。
出典:アマゾン
リヤカーと聞くと、ややアナログ感のある古い手段のようにも聞こえる。ただ、前述のように大手配送事業者でも採用している既に実績のある手段となっている。
何より自転車は自動車とは異なり、自動車運転免許が必要ない。より多くの人がこうした配送業務に従事できるようになり、物流業界の人手不足を少しでも解消する一手となりうる。
イギリスも電動自転車、スペインでは電動手押し車
二輪ではないが、イギリスで使われている電動自転車。今後ドイツでも展開予定。
撮影:小林優多郎
他の国のマイクロモビリティーも往々にして「より多くの荷物を届けるには」「ドライバーの業務を効率的にするには」という点を主眼に開発されていた。
会場にはアメリカと日本以外のものだと、イギリスおよび今後ドイツで展開予定の中型リヤカー付きの電動自転車や、スペインで使われている電動手押し車が展示されていた。
個人的に気になった点は、それぞれの機体で「アマゾン」の配送サービスであることの主張方法が異なる点だ。
イギリスの電動自転車のリヤカー部分にはAmazonやPrimeのロゴがある。
撮影:小林優多郎
例えば、日本と同じく都市部などでの電動自転車での配送をしているイギリスの機体は、アマゾンの運送業務を示す青いスマイルマークを基調としたデザインになっている。
日本の機体の場合は一見すると、アマゾンロゴが全くなく、どの事業者の自転車であるかを判断するのは困難だ。
もちろんこれはリヤカー部分の大きさなども影響している。また、日本の場合は基本は業務委託である複数のデリバリーサービスプロバイダーが配送を担当するため、あえてアマゾンロゴを掲示していないのではと推察できる。
スペインの電動手押し車は、拠点ではなくトラックから届け先までを運ぶためのもの。Mooevo社製でフル充電時の航続距離は約40マイル(約64km)。
撮影:小林優多郎
一方で、スペインで活躍する電動手押し車にはECとしてのアマゾンによく使われる黄色いスマイルマークだけが施されており、やはり各国の認知度や商環境などの事情を踏まえてロゴやデザインを考えているのだろう。
ただ、日頃アマゾンを利用する一利用者としても、玄関先に誰だか分からない配送業者のスタッフや大きな自転車が止まっているのは少し驚いてしまうため、日本でも何らかの提示は必要なのではと考えてしまった。
アメリカではリビアンのEDVが1万台以上稼働
Delivering the Futureの1日目の基調講演には、モデレーターとしてAxiosのシニアビジネスレポーターであるHope King氏(写真左)とアマゾンのワールドワイドサステナビリティ担当バイスプレジデントであるKara Hurst氏(中央)、輸送事業担当バイスプレジデントのUdit Madan氏(右)が登壇した。
撮影:小林優多郎
アマゾンがこうしたラストワンマイルの配送を効率化する背景には、もちろん働き手の確保や配送業務の改善など、同社の事業全体に影響する部分が大きい。
アマゾンは加えて、サステナビリティーの観点で取り組んでいる点も強調している。
アマゾンは2040年までに全事業のネット・ゼロ・カーボン(温室効果ガスの排出量実質ゼロ)を目指す「The Climate Pledge(気候変動対策に関する誓約)」を宣言している。
短距離の配送をトラックや軽自動車ではなく電動自転車などにすることは、こうした脱炭素の取り組みの一環にもなる。
リビアン製コネクテッド・ビークルは、導入から1年強で対象の地域で1万台以上稼働している。
撮影:小林優多郎
また、アマゾンはアメリカでは中〜長距離にも脱炭素の動きを見せている。
アマゾンは、Rivian(リビアン)製のコネクテッド・ビークルこと、カスタム電気配送車(Electric Delivery Van=EDV)を2022年7月から展開している。
アマゾンはカスタム電気配送車を2030年までに10万台導入すると発表しており、今回のイベントではその進捗が公表された。
リビアンのカスタム電気配送車は現在1万台以上が稼働中で、アメリカの36の地域で2億6000万個以上の荷物を配達したという。今後はアナハイム、グリーンベイ、レキシントン、シルバースプリングといった都市にも導入予定となっている。
(取材協力・アマゾン)