アメリカ人は予定通りにリタイヤできないのではないかと心配している。
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- 2つの新たな調査によると、アメリカ人の多くは老後資金の貯蓄が遅れていると感じている。
- 調査対象者の半数以上が、退職を延期しなければならないのではないかと心配している。
- 資金を飲み込む「家計の渦」と資金計画の欠如が退職を妨げるかもしれない。
さまざまな側面からの圧力により、多くのアメリカ人は老後資金の貯蓄が間に合っておらず、退職を先延ばししなくてはならないと考えている。
ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)はこれを「家計の渦(financial vortex)」と呼んでいるが、このような状況にあってもきちんとした計画があれば、うまく切り抜けられるだろうと述べている。
ゴールドマン・サックスとバンクレート(Bankrate)は、退職後の生活についてアメリカ人がどのような見通しを持っているかについて調査を行った。その結果、暗い将来を予想する人が多かったが、年齢や資金計画の有無によって状況は異なることが分かった。
バンクレートがフルタイム、パートタイム、一時的に失業中の成人2527人を対象に行った調査(2023年8月に実施)では、老後資金の貯蓄について「遅れている」と感じているのが56%、「かなり遅れている」と感じているのが37%だった。
これを世代別にみると、「遅れている」と回答したのは、X世代(43歳から58歳)が69%で、全世代の中で最も不安を感じていた。次いでベビーブーマー世代(59歳から77歳)が60%、ミレニアル世代(27歳から42歳)が49%、Z世代(18歳から26歳)が42%と、上の世代の方が不安を感じる人が多かった。
Z世代とミレニアル世代の多くは、退職後の生活について、経済的な不安をそれほど感じていないようだ。
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「家計の渦」のプレッシャー
老後資金の貯蓄目標を達成する自信が持てない主な要因は、資金計画を立てる時間が取れないことと、資金を投入する優先事項が競合することだという。ゴールドマン・サックスはこれを「家計の渦」と呼んでいる。
人は限られた財源でいくつもの経済的目標のバランスを取るのに苦労しているとゴールドマン・サックスは指摘する。老後に向けた貯蓄に回されるはずの資金も、クレジットカードの借金、学生ローン、大学進学費用、子どもや高齢者のケア、経済的苦境といった家計の渦の中に飲み込まれていく。
ゴールドマン・サックスが6月と7月に行った5261人のアメリカ人を対象とした調査によると、老後資金を期限内に貯蓄できる自信が持てるかどうかは、資金計画を立てているかどうかによって大きく左右される。
退職までにどれだけ貯蓄する必要があり、そこにどのようにして到達するのかについて、少なくとも基本的な資金計画を立てているのは、調査対象者の60%だった。
また、「老後資金の貯蓄が順調に進んでいる」と回答したのは、資金計画を立てている人では79%だったが、立てていない人ではわずか34%だった。
資金計画を立てておけば、老後も安心して過ごせるだろう。
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ゴールドマン・サックスは、回答者の金融リテラシーのレベルにも懸念を示している。47%が退職後の貯蓄を自ら管理しているが、5問の金融リテラシー・クイズに全問正解したのはわずか13%だった。
全回答者のうち、退職時期を「少なくとも4年延期する」と回答したのは20%で、「少なくとも1年延期する」と回答したのは60%だった。
目標とする貯蓄額に到達するために重要なのは、金融リテラシーを高めることと、個人に合った資金計画を立てることだと、ゴールドマン・サックスは結論づけている。
これらについて考慮せずに、退職後の複雑で不確実な状況に対応するのは、極めて困難だろう。