「サフラー王のピラミッド」で隠された部屋を発見…LiDARで3Dマップを作成

サフラーのピラミッドの通路(右)と、その奥から発見された部屋(左)のひとつ。

サフラーのピラミッドの通路(右)と、その奥から発見された部屋(左)のひとつ。

Mohamed Khaled

  • 約200年前にエジプト学者がピラミッドを発掘中に通路を発見した。
  • だが、そのピラミッドの損傷がひどく、通路の奥に進むことができなかった。
  • そして今、LiDARを用いたピラミッド内部のマッピングにより、これまで隠れていた部屋が発見された。

1836年、エジプト学者のジョン・シェイ・ペリング(John Shae Perring)は、古代エジプト第5王朝のファラオ、サフラー(サフレとも呼ばれる)のピラミッドを発掘していたとき、瓦礫に埋もれた通路があることに気がついた。

このような建造物の設計図作成を専門としていた彼は、この先にも部屋があるのではないかと推測した。

だが通路の奥は損傷が激しく、中に入ることは不可能だったため、ペリングは自分の考えが正しいかどうかを知る術がなかった。彼の推測を最終的に裏付けるには、さらに200年近くかかることになる。

隠れていた部屋

ぺリングの発掘から数十年が経過した1900年代初頭、ドイツのエジプト学者ルートヴィヒ・ボルヒャルト(Ludwig Borchardt)がこの遺跡の発掘を行ったが、ペリングの主張を無視した。もし彼がもっと詳しく調べていたら、歴史は変わっていたかもしれない。

それからさらに約100年が経過し、ついにペリングの主張が正しかったことが、ピラミッドの修復に取り組んでいるエジプトとドイツの共同チームによって裏付けられた

チームは対象物に照射したレーザーの反射光を捉えることで距離を測定するLiDAR(ライダー:光検出と測距)を用い、外部と内部の通路や部屋をマッピングした。

何世紀にもわたって気温の変化、湿度の高さ、風の強さなどにさらされたピラミッドは、損傷が激しい部分もあった。

瓦礫の一部を取り除いて作成した3Dマップから、ピラミッドの構造がより詳しく把握できるようになり、ペリングが発見した通路の奥に、これまで隠れていた8つの部屋が発見された。

修復チームを率いたユリウス・マクシミリアン大学ヴュルツブルクのエジプト学者、モハメド・イスマイル・ハレド(Mohamed Ismail Khaled)によると、これらの新たに発見された部屋は、王族の埋葬品を収める保管室だった可能性が高いという。

サフレのピラミッド

このピラミッドは、ギザのすぐ南にあるアブシールのネクロポリスに建っている。

アブシールのネクロポリス(埋葬地)にある埋葬殿とサフラーのピラミッド。

アブシールのネクロポリス(埋葬地)にある埋葬殿とサフラーのピラミッド。

DeAgostini/Getty Images

サフラーは、紀元前2400年頃の第5王朝を統治したファラオだ。ある文献によると、彼は王家の血筋ではなく、太陽神ラーの息子であったという。他のファラオと同様、彼のピラミッドは支配の記念碑として建てられた。

サフラーのピラミッドは、ここ数世紀の間に何度も発掘されている。

ボルヒャルトはこのピラミッドのわずかな部分しか調査しなかった。1994年、新たな発掘が始まり、色とりどりの絵に覆われた巨大な石灰岩のブロックが発見された。サフラーが船に乗る様子も描かれており、その後ろに続く船団の船には、ライオンやワシの頭が飾られた船首も見られた。

崩壊しつつあるピラミッド

ピラミッドがこれほど荒廃している理由のひとつは、もともとの建設技術にある。

中心部には石灰岩のかけら、陶器の破片、砂、その他の瓦礫が含まれている。2022年の調査によると、この技術によって建設時間とコストが削減された一方で、ピラミッドが崩壊しやすくなった可能性があるという。

最新の保存プロジェクトは2019年に始まった。チームは、崩れかけた支柱を擁壁に置き換えて、構造を安定させる作業を行っている。

将来的には、ピラミッドの各部屋をきれいにして安全性も確保した上で、一般公開される可能性もある。

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