ジェレミー・シュナイダー氏は36歳で引退し、インデックス・ファンドに投資した。
Jeremy Schneider
多くの人は、さまざまな資産へのエクスポージャーを得ながら投資を簡素化するために、インデックスファンドやETFに目を向けることが多い。
これは「set-it-and-forget-it(一度買ったら、あとは何もしなくてよい)」と呼ばれる投資のアプローチだ。
ただし、このアプローチにおいても、選択すべきオプションは数多く存在する。インベストメント・カンパニー・インスティテュート(Investment Company Institute)によると、2022年12月時点でアメリカでは2800本以上のインデックスファンドや上場信託投信(ETF)を選ぶことができる。万が一、理想的とは言えない選択をしてしまうと、数十年間で数十万ドルの損失を被る可能性があるのだ。
また、パフォーマンス以外で見落とされがちな大きな問題が、ファンドに上乗せされている「経費率」だ。経費率は0.04%から1%を超えるものまである。これらの数字は小さく見えるかもしれないが、長期的には大きな違いになる。
たとえば、経費率1%のファンドで年間1万ドル(約150万円、1ドル=150円換算)を30年間運用した場合、通算の経費は18万8224ドル(2823万3600円)になる。経費率計算ツールによれば、同じ設定でも経費率が0.04%なら、経費は8278ドル(124万1700円)に抑えることができる。
これは、経費率が0.69%から0.76%の多数のファンドを保有していたマイケル・クアン(Michael Quan)氏を含め、多くの投資家にとっての学ぶのが遅すぎた教訓だ。クアン氏にとって不運だったのは、彼の会社の退職金制度では、401(k)(確定拠出年金)の選択肢が限定されていたことだ。
Insiderが確認した記録によれば、クアン氏は2013年にIT企業を売却してリタイアし、純資産128万ドル(約1億9200万円)と現金11万ドル(約1650万円)を手にした。これにより、クアン氏は退職金制度をロールオーバーしながら、より幅広いファンドにアクセスできるようになった。
クアン氏は、先進国市場と新興国市場にエクスポージャーを分散するために、もっと手数料の安いインデックスファンドを購入し始めた。
その中には、カナダ、ヨーロッパ、日本などの国の証券を組み合わせたバンガードFTSE先進国市場ETF(Vanguard FTSE Developed Markets ETF:VEA)や、発展途上国へのエクスポージャーがある iシェアーズ コア MSCI新興国市場ETF(iShares Core MSCI Emerging Markets ETF:IEMG)などが含まれていた。また米国株へのエクスポージャーとしては、S&P500に連動するiシェアーズコア S&P 500 ETF(iShares Core S&P 500 ETF、IVV)を購入した。これらのファンドの経費率はそれぞれ0.05%、0.09%、0.03%だった。
しかし、もしも同じプロセスを繰り返すことができるのなら、クアン氏はさらにシンプルなアプローチとして、バンガード・トータル・ストック・マーケット・インデックス・ファンドETF(Vanguard Total Stock Market Index Fund ETF:VTI)というファンド1本にしていたという。このファンドは米国株式市場に連動しており、経費率は0.03%となっている。
「若い頃は、新興市場やテック企業の成長など、長期的なトレンドに投資する傾向が強かったです。どれか1つの戦略が、他の戦略よりも本質的に優れているとは思いませんが、投資アプローチというのは優先順位や焦点の変化に影響されながら、時間とともに進化していくものだと思っています」(クアン氏)
36歳という若さで仕事を辞めて引退したジェレミー・シュナイダー(Jeremy Schneider)氏も、よりシンプルなアプローチのほうが望ましいという認識を持っているようだ。Insiderが確認した記録によれば、シュナイダー氏はRentlinx(レントリンクス)という不動産物件掲載プラットフォームを売却して200万ドル(約3億円)相当の現金を手にし、それを投資に充てたという。
彼はその200万ドルを、ポートフォリオを多様化するために9つのインデックスファンドに分散することにした。そのファンドには、アメリカの大手上場企業、小型株、アメリカおよび世界の不動産、国際市場および新興市場、コモディティ、米国債など、国際的にほぼすべての資産クラスを追跡するファンドが含まれていた。
しかし退職後すぐに退屈になり、新しい目的を探すようになったシュナイダー氏は2019年、インデックスファンド投資に関する無料と有料のコンテンツを提供するパーソナル・ファイナンス・クラブ(Personal Finance Club)を立ち上げた。シュナイダー氏は若くして引退したので、自身の経済的目標の達成について、他の人に何か教えることができるのではないかと考えたのだった。
シュナイダー氏はパーソナル・ファイナンスの概念を学び、ファンドのオンラインシミュレーターであるポートフォリオビジュアライザー(Portfolio Visualizer)などのツールを使ってさまざまな投資手段を試し始めた。そして2015年に購入したインデックスファンドをさまざまな商品と比較し、自分の選択が正しかったかどうかを確認したとき、「後悔先に立たず」ということを痛感したのである。
シュナイダーは、手を広げることなく1つのファンドにこだわっていれば、同様のエクスポージャーを維持しながらも、より大きな利益を得ることができていたことに気づいたのだった。シュナイダーが具体的に言及しているのは、フィデリティ・フリーダム・インデックス2050インベスター( Fidelity Freedom Index 2050 Investor:FIPFX)のことだ。 このファンドはターゲットデートインデックスファンドで、投資家が退職に近づくにつれてより保守的になる銘柄を組み合わせて提供する。経費率は0.12%だ。
シュナイダー氏は、もし時計の針を戻すことができるなら、このファンドだけに投資するだろうと話す。
ビビアン・トゥ(Vivian Tu)氏は、かつてJPモルガン(JPMorgan)の株式トレーダーとして働いていた。現在は、ユアリッチBFF(Your Rich BFF)というブランドを立ち上げ、投資を教える立場で活躍している。この金融教育プラットフォームにはニュースレターやソーシャルメディアアカウントがあり、トゥはクレジットカードの負債や節約に関する、簡単な金融概念について投稿している。
Insiderが確認した書類によると、トゥ氏は27歳の若さで億万長者となり、純資産の大部分は、2021年9月時点で273万ドル(約4億円)の価値を持つニューヨークのアパートに関連している。
トゥ氏は投資をする際、特別なトレーディングスキルを使ったわけではない。市場で勝つのは簡単ではないということを知っていたのだ。トゥ氏はバンガード 500 インデックスファンド ETF(Vanguard 500 Index Fund ETF:VOO)という1つのファンドに絞って運用を行った。このファンドはS&P 500に連動し、国内上位500社を含むように四半期ごとにリバランスされるようになっており、経費率は0.03%となっている。