アマゾンのシアトル本社。
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アマゾンでは、週に3日オフィスに出社するという会社の義務を果たさない従業員を、管理職の裁量で事実上解雇することができるようになった。
これは、Insiderが入手したアマゾンのオフィス復帰ポリシーに関する最新のグローバルマネージャーガイダンスに基づいている。アマゾンは先ごろ、社内ポータルを通じてガイドラインと管理職向けトーキングポイントを共有した。
ガイドラインでは管理職に対し、週3日出社の要求に従わない部下とは、まず一対一で話をし、その後、フォローアップメールで話し合いの内容を文書化するように求めている。また、もし従業員が出社を拒否し続ける場合、管理職は再度面談を行い、必要に応じて解雇を含む懲戒処分を講じるよう求めている。
「最初の面談の後、従業員が直ちに、また継続的に出社する様子を見せない場合、マネージャーは合理的な期間内(従業員の状況に応じて、約1〜2週間)でフォローアップの話し合いを実施する必要がある。この話し合いでは、 1)週に3日以上オフィスに出社することが職務上の要件であることを再確認し、2)正当な理由のない継続的な違反は、解雇までを含む懲戒処分につながる可能性があることを説明すること」(ガイドラインより)
コンプライアンス違反を理由に従業員を解雇できる裁量を管理職に与えることは、アマゾンがオフィス復帰ポリシーに関して行使したこれまでで最も強力な措置だ。
2月に初めて発表されたアマゾンのオフィス復帰プロセスは異例の物議を醸しており、3万人以上の従業員が社内の請願書に署名し、今年初めには他の多くの従業員がこれに反対して退職した。
従業員はパンデミック中に完全リモートワーカーとして雇用されたとして不満を表明しており、オフィス復帰の義務は、個々のリーダーがチームの働き方を決定できるという以前の方針からの転換だとみなしている。
アマゾンは2月、従業員は5月から少なくとも週3日はオフィスに出社する必要があると発表した。同社は7月、リモートで働く従業員に彼らのチームメンバーのほとんどがいるオフィス付近に転居するように指示することで方針をさらに強化した。転居を拒否したり、自分のニーズに対応してくれる別のチームを探すことを拒否した従業員は、「自主退職」パッケージを受け入れることを求められた。
アマゾンは9月までに、匿名化されたデータのみを追跡するという以前の方針を変更し、個人の出勤記録を従業員と共有するようになった。
アマゾンのアンディ・ジャシー(Andy Jassy)CEOは8月、現在の出社義務に反対する試みは「うまくいかないだろう」と従業員に警告した。9月、アマゾンのクラウド部門の幹部が、オフィス復帰プロセスが完了するまでには最大3年かかると予想しているとチームに語ると、混乱はさらに大きくなった。
アマゾンの広報担当者のロブ・ムニョス(Rob Munoz)氏はInsiderに送ったメールの中で、大多数の従業員はより頻繁にオフィスに出社することで、「より多くのエネルギー、つながり、コラボレーション」が生まれているところを目にしていると述べている。 ハブの近くに転居させるという方針の影響が及ぶのは「当社チームの比較的少数」であり、オフィス復帰義務の例外は「ケースバイケースで」認められるだろうと同氏は付け加える。
「当社のどの方針にも言えることですが、チームがそれに従うことを期待しており、もしそうしないことを選択した者がいた場合には、適切な措置を講じます」(ムニョス氏)
管理職向けに想定問答を作成
アマゾンはガイドラインの中で、従業員が有給休暇中のため、または自宅療養中のために出社要求に応えていないのではないかを確認するなど、個々の状況に関して「前向きな意図を想定し」「高度な判断力をもって決断を下す」よう管理職に促している。各面談の前に、管理職は部下のバッジデータを確認し、言いたいことを事前に練習して「準備を整える」ように指示を受けている。
このガイドラインには管理職向けの基本的な台本も記載されており、内容としてはオフィス復帰に関する会社の公式声明の多くをなぞったものだ。
管理職は、同じ場所で一緒に働くことが「個人の成長と発展をサポートする」ことになり、そうすることで従業員が「当社の独自の文化を理解できる可能性が高まる」ことを強調する必要があるという。従業員が定期的にオフィスに来ない理由を尋ねる際には、管理職は「これは調整の余地があるかもしれない」とか「あなたの状況を理解したい」と前置きすべきだとしている。
ガイドラインでは、管理職はオフィス復帰要求に従わない従業員に対処する際、3段階のプロセスに従うことが求められている。最初のステップは従業員との一対一の会話で、管理職は「理解に努め、文書化する」。
コンプライアンス違反が続く場合、管理職は数週間以内にフォローアップの話し合いを行う必要があり、そこで週3日の出社ポリシーを改めて強く示し、「解雇」を含む懲戒処分の可能性について説明するというのが2番目のステップだ。
最後のステップでは、人事担当者と連携し、従業員に対し書面での警告をはじめとする措置を講じる。それによって「最終的には解雇に至る」可能性がある。
アマゾンはまた、定期的にオフィスに来ることを拒否する従業員とのフォローアップ面談を始める際に管理職が使用するメールのテンプレートも共有している。アメリカ以外の国の管理職は、「国によってテンプレートが異なるため」人事担当者に相談するよう指示されている。
以下でそのメールのテンプレートを紹介する。
【従業員名】殿
【日付を入力】に行ったオフィス復帰に関する面談のフォローアップをさせていただきます。期待していることと次のステップを明確にしておきます。話し合いの中で、私はあなたが週に少なくとも3日間オフィスに出社することができないような特別な問題を抱えているのかどうかを理解しようと努めました。私たちの話し合いの結果から、そのような問題はないと理解しています。しかしながら、【a または b のいずれかを選択してください:a)あなたは前回の面談以降、アマゾンのオフィス復帰の期待に応えていません。 b)あなたはアマゾンのオフィス復帰の期待に沿うつもりがないことを明らかにしました。】
お話ししたように、少なくとも週に3日オフィスに出社することが、お客様、当社、チームメンバーにとって最善の利益となります。もしあなたが2週間以内にこの期待に応えない場合、 【2週間先の金曜日の日付を入力】 までに正式な是正措置が取られます。その後、少なくとも週に3日はオフィスに出社するというコンプライアンスに継続的に違反した場合は、解雇を含むさらなる懲戒処分の対象となります。
ご質問がある場合、またはアマゾンのオフィス出社の期待に応えるためのソリューションに一緒に取り組むことを希望する場合は、できるだけ早くお知らせください。2週間後にまたお会いして、進捗状況について話し合いましょう。
【マネージャー名】