Z世代は完璧な従業員であることよりも、自分の健康や幸福を優先している。
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- Z世代はTikTokで、「最低限の月曜日」や「怠け者女子の仕事」など、新たな働き方のトレンドを生み出している。
- 企業が従業員をレイオフし、リモートワークを撤回するようになったことから、若い労働者は仕事に幻滅している。
- そのため、彼らは完璧な従業員であることよりも、自分の健康や幸福を優先している。
Z世代は、成功と幸福を追及する新たな方法を見い出して仕事の世界を揺るがしており、TikTokでその学びを共有している。
パンデミック時のリモートワークの出現や、景気減速に伴うレイオフの波など、若い世代は近年、職場で大きな変化を経験している。
2023年には人員削減が常態化し、メタ(Meta)、アルファベット(Alphabet)、セールスフォース(Salesforce)、JPモルガン(JP Morgan)、デロイト(Deloitte)といった大企業が何千もの従業員を削減した。内定を取り消された新卒者もおり、長年勤めた社員でさえも残酷なレイオフから逃れられなかった。
また、多くの企業がリモートワークの方針を撤回し、従業員にオフィスへの復帰を命じた。
Z世代(18歳から25歳)の労働者は、上の世代が経済的苦難に耐えながら勤勉に働き、会社に尽くしているにも関わらず報われない状況を目の当たりにしてきた。そのため、仕事から一歩引き、仕事よりも生活を優先し、自分自身を第一に考えることを選ぶZ世代もいる。
今年、TikTokで注目を集めた5つの職場トレンドを紹介しよう。
1.怠け者女子の仕事(Lazy girl jobs)
TikTokerのガブリエル・ジャッジ。
Gabrielle Judge/TikTok
今年、TikTokで数百万ビューを記録した「怠け者女子の仕事」ほど、トレンドを反映した例はない。これは、ストレスが少なくても給与が高い仕事を指すもので、5月にTikTokerのガブリエル・ジャッジ(Gabrielle Judge)が広めた。
ジャッジは、テック系企業での非技術職やアカウント・マネージャーなどの例を挙げ、「6万から8万ドル(約900~1200万円)といった十分な給料をもらいながら、仕事量がそれほど多くなく、リモートでできる仕事がたくさんある」と動画で語っている。
怠け者女子の仕事はワークライフバランスが良く、育児や他の仕事を持つ女性にもメリットがあると彼女は言う。
「私たちの時間はとても貴重であり、会社ではなく、個人の優先事項に関連したことに集中すべきだということを、本当に理解してほしい」とジャッジは以前Insiderに語っていた。
2.カタツムリ女子の時代(Snail-girl era)
イタリアのカフェ。
Pino Pacifico/Getty Images
「カタツムリ女子の時代」は、ハッスルカルチャーよりもワークライフバランスを選ぶZ世代にとって最先端の働き方だ。成功を際限なく追い求めるよりも、ゆっくりとした時間を過ごし、セルフケアと幸せを優先する女性のことを指す。
この言葉を作ったのはデザイナーのシエナ・ラドビー(Sienna Ludbey)で、ファッション・ジャーナルに「今週注目の話題!私の中の『ガールボス』は死に、『カタツムリ女子の時代』が始まった」という記事を掲載した。
この言葉に関する動画をファッション・ジャーナルがTikTokでシェアすると、3万3000回以上再生され、その後も多くの関連動画が投稿されている。Tiktokerたちは、朝のリラックスタイムや散歩、スキンケアなど、カタツムリ女子のライフスタイルまでシェアしている。
「カタツムリ女子のトレンドは、長時間労働や常にオンでいることが奨励され、ひどい上司にも耐えなくてはならないハッスルカルチャーや有害な職場カルチャーに反発するもうひとつの例になっている」と、Netflixの多様性とインクルージョン部門の元ディレクター、ミシェル・P・キング(Michelle P. King)が、以前Insiderに語っている。
3.最低限の月曜日(Bare Minimum Mondays)
マリサ・ジョー・メイズ。
Marisa Jo Mayes
デジタル・コンテンツ・クリエイターでスタートアップ創業者のマリサ・ジョー・メイズ(Marisa Jo Mayes)は、ストレスを最小限に抑えるために週の始めにはできるだけ仕事をしないという「最低限の月曜日」についてTikTokに投稿し、大きな話題となった。
17万回再生されたこの動画でメイズは、以前は月曜日に極度のストレスを感じ、こなせそうもないToDoリストを作り、1日の終わりには燃え尽きていたと述べている。
最低限の月曜日を生活に取り入れると、彼女は「すべてが変わったように感じた」という。
これは、Z世代が理想的な従業員であるべきという概念を否定し、代わりに健康と幸福に焦点を当てるというもうひとつの例だ。
メイズは以前、Insiderにこう語っている。
「従業員としての自分よりも、1人の人間としての自分を優先して1週間をスタートさせる。生産性のためではなく、自分自身を思いやることで、私の人生は根本的に変わった」
4.マネージング・アップ(managing up)
女性誌を題材にしたテレビドラマ『The Bold Type』のワンシーン。
NBC Universal
「マネージング・アップ」とは古くからある戦略だが、最近ではZ世代の間で話題となり、関連動画がTikTokで590万ビューを記録した。
この戦略は、「上司との関係を管理」し、自分のニーズに合った仕事をすることだと、ブランダイス国際ビジネススクールの組織行動学教授、アンディ・モリンスキー(Andy Molinsky)は、以前Insiderに語っている。
Z世代にとって、マネージング・アップはワークライフバランスを実現し、働きすぎを防ぎ、自分の仕事の範疇ではないことを要求されないようにするための鍵だ。
TikTokerの@cecexieは、上司をうまく扱うことが「初めての会社勤めの目に見えないルール」の1つだという動画を投稿し、再生回数は50万回を超えた。
彼女は動画の中でこう述べている。
「マネージング・アップすることで、生活は限りなく楽になるし、仕事のせいで何かをドタキャンすることもなくなる」
5. 退屈症候群(Boreout)
研究者によると、「退屈症候群」は燃え尽き症候群と同じくらい有害だという。
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自分の夢見ていた仕事が予想以上に平凡で繰り返しの仕事だということに気が付いたという動画が、「#boredatwork(仕事が退屈)」というハッシュタグをつけてTikTokに投稿されている。それらの動画は再生回数が合わせて4億7000万回を超えている。
「初めて会社勤めをして、予想以上のスピードで仕事を覚え、1日の半分は常に何もすることがない。退屈だ」と、あるTikTokerはオフィスの椅子の上でくるくる回りながらそう述べる動画を投稿している。
このようなZ世代の仕事離れは、「退屈症候群(ボア・アウト)」と呼ばれており、燃え尽き症候群と同じくらい有害な可能性があると、テキサス大学の経営学教授アンドリュー・ブロドスキーは以前Insiderに語っている。
ブロドスキーによると、退屈症候群は、労働者が自分の役割に刺激を感じられず、仕事に対して否定的な感情を抱くことで起こるという。
Z世代による退屈な職場についての投稿は、次世代の労働者のニーズに注意を払うべきだという、雇用主への警告になっている。