2023年6月9日、アリゾナ州フェニックス郊外クイーンクリークの住宅地。
Mario Tama/Getty Images
- 2019年から2022年にかけて、アメリカでは郊外の貧困率が都市の貧困率の3倍のペースで上昇した。
- 南部、西部、中西部の主要都市近郊では、貧困が急激に増えた。
- 主要都市の住宅費の高騰が低所得の人々を都市部から押し出す一因となっている。
アメリカの郊外では過去20年間、貧困が増加している。そして、アメリカ国勢調査局の最新データによると、パンデミックは都市部の貧困を上回るペースで、郊外の貧困を加速させている。
最新の「アメリカ地域社会調査(ACS)」によると、アメリカでは貧困状態にある人の数が2019年から2022年にかけて約150万人増えておよそ4100万人に達し、貧困率は2019年の12.3%から12.6%に上昇した。2019年から2022年にかけて、主要大都市の近郊では貧困状態にある人々の数が大都市の3倍のペースで増加したこともブルッキングス研究所の最新レポートで分かっている。アメリカの貧困増加の60%以上は郊外で起きている。
多くのアメリカ人はますます多様化の進む郊外で暮らしている。アメリカの人口の47%が郊外で生活し、21%が人口50万人以上の大都市で、18%が中小都市圏で、14%が農村部で生活している。
ブルッキングス研究所によると、ワシントンD.C.、テキサス州ヒューストン、カリフォルニア州サンフランシスコ、ユタ州オグデン、ミズーリ州セントルイス、ミネソタ州ミネアポリス・セントポール都市圏といったアメリカ南部、西部、中西部の主要都市圏の郊外では、ここ数年で大きく貧困率が上がった。こうした主要都市圏の郊外では2019年から2022年にかけて、貧困層が減った地域はなかったものの、貧困線を上回る生活を送る新たな住民が流入したことで、結果的に貧困率が下がった地域もあった。
ただ、郊外は依然としてアメリカで最も裕福な地域の1つだ。貧困率は都市部よりも郊外で急速に上昇しているが、1人当たりの平均貧困率は引き続き都市部の方が高い。2022年には郊外の住民の9.6%が貧困状態にあったが、大都市では16.2%だったとブルッキングス研究所は指摘している。
アメリカにおける貧困の地理的分布の変化は、都市部における住宅費の上昇など、さまざまな要因が絡んでいる。ここ20年でより将来有望な富裕層が都市部に移り住み、家賃や住宅価格の高騰に拍車をかけた —— これがアメリカの住宅危機を加速させた。
ここ数年、アメリカでは住宅費がさらに高騰し、多くの低所得者層を郊外へ押し出している。また、郊外のコミュニティーは近年、成長してより多様な人々を引きつけ、雇用 —— 低賃金雇用を含む —— はますます都市中心部の外へと移っている。
郊外における貧困の増加は、特に強力な大量輸送システムがなかったり、低所得者を支援する非営利団体の強力なネットワークがなかったり、十分な資金がある社会サービスのない多くの郊外地域に課題を突きつけている。